43歳 AMH0.0
PRP卵巣注入後に双子妊娠
こんにちはKinoshitaです。
こういった厳しい状況下での妊娠を、毎年自分の目の前で経験して思うことは
妊娠について、治療についてどうするかは
夫婦が納得して決めるべきたと思います
医師にもう無理ですと言われた
AMHが0だから無理だと言われた
閉経が近いから無理だと言われた
42歳超えたから無理だと言われた
・・・・
妊娠希望について
治療開始について
治療継続について
治療終了について
皆さんの人生の中でとても大きな決断だと思います。
この決断は、周りに言われたから決めるのではなく、
事前に情報を整理して
→治療スケジュールについて、身体的な負担について
→年齢・受精卵による妊娠の可能性について、流産率について
→採卵個数による金額についてなどは事前にある程度わかります
そのための時間、労力、お金、をかけることが
夫婦にとってメリットがあるかどうかを話合うことが何よりも大切だと思います。
私が43歳ですね、AMHも0ですね、月経も不順ですね、採血では更年期ですね
→私が妊娠・治療は無理ですね。ともし言っていたら、今回のこの子たちは生まれてこなかったかもと思うと・・・
→私はやはり不妊治療の選択は絶対的に夫婦の選択が優先されるべきだと思います
→だからこそ、私たち医療者は夫婦に正しく情報の提供と説明をしていくことが必要なことだと思っています。
前置きが長くなりました泣
こういったこと熱くなってしまうタイプです
では内容に入りますね
43歳 初診
初診での話し合い
・42歳を超え最後のチャンスだと思い受診しました
・月経はすでに14日で来ることもあり、かなり不順です
・AMHも0台でかなり厳しいのは理解しています
・できるチャンスは全てつかみたい
・受診に1時間以上かかりますが大丈夫です。これます。
→検査とともに説明動画、ホームページや複数回の話し合いで
・年齢と妊娠率について
・妊娠までに必要な卵子のおおよその数について
・年齢と流産率について
・初期胚、胚盤胞での妊娠率について
・そのほかの選択肢について 再生医療(PRP卵巣注入)など
の理解は進んでおられるようでした。
治療の選択肢と実施スケジュールを整理して、治療開始
月経時のFSH48.6 LH26.9 AMH<0.01
→やはり心配されている通り、更年期の状況であることは間違いなさそうでした。
採卵1
→まずはFSHとLHの改善から始める
→内服でFSH10.8、LH5.2まで下げた状態まで作った
→そこから刺激を適宜開始(内服・注射)
→卵胞の状況を見ながらFSH20-30で調整
→更年期状況での卵胞発育を試みているので、あえてFSHは高めでコントロールしています
→月経59日目で1cmの卵胞1つ確認
→月経62日目で卵胞が2cmまで発育 採卵決定
→採卵:卵子取れず。卵子の周りの細胞(顆粒膜細胞)も全く確認できず。
採卵2+卵巣PRP注入(両側)
採卵後の内服にて月経時のFSHをコントロール
月経時FSH12.5 LH11.9
→高すぎず、低すぎずの数値で月経時のホルモンをコントロールしていきます
→前回、卵子回収できなかったため、この周期で卵巣PRPの希望あり
→PRP卵巣注入 両側実施
→小卵胞確認できていたため、手術翌日より、そのまま卵巣刺激再開(内服)
→月経15日目 卵胞2つ確認
→月経21日目 2cmまで卵胞が2つ発育
→採卵:卵子回収できず
採卵3 PRP注入から1ヶ月後
今回はPRP実施後の月経のため、採卵2後あえてホルモン調整せずに経過をみた
月経時FSH19.9 LH8.5
月経時より右に小卵胞確認
卵巣刺激開始(内服)
→月経10日目で右に約2cmの卵胞1つ確認
採卵:卵子1つ 成熟卵(MⅡ)
→顕微授精 受精確認
→2PN前核期で1個凍結
採卵4 PRP注入から2ヶ月後
今回はPRP実施3ヶ月以内の月経のため、採卵3後あえてホルモン調整せずに経過をみた
月経時FSH20.3 LH8.5
月経時より左に小卵胞確認
卵巣刺激開始(内服)
→月経10日目で左に約2cmの卵胞1つ確認
採卵:卵子1つ 成熟卵(MⅡ)
→顕微授精 受精確認
→2PN前核期で1個凍結
これで合わせて、前核期2個凍結確保完了!
→移植希望となる
ホルモン補充周期ー凍結融解胚移植
黄体補充:膣剤+内服
D2初期胚 2個移植
→年齢、43歳での初期胚の妊娠率、判定が陰性の場合すぐに採卵周期を始めることも考えて2個希望
判定:陽性
その後超音波確認:胎嚢2個 2卵性の双胎妊娠
妊娠10週以降 両児ともに発育問題なく卒業!!!!
Kinoshitaより)
※当院の前核期凍結について
当院では胚盤胞培養ももちろん実施していきすが、
43歳以上、保険不妊治療終了後など自費の不妊治療では前核期での凍結保存も実施していきます。
※前核期とは
前核期:精子と卵子が受精すると、受精卵のなかに2個の前核(pronuclear)が現れます。
この2つの前核を確認することで受精を確認しています。
→つまり、受精した直後、受精卵が分裂を開始する前に凍結保存していきます。
→前核期は分裂前ですので細胞は1つです。凍結・融解に対して安定した結果をもたらしてくれます。
→現在行われている凍結方法(ガラス化法)ができる前、凍結融解がまだまだ不安定な時代から、融解後の成績が良いため用いられてきた方法です。
→また、前核期凍結の場合
移植の選択肢が増えることも私が採用しているポイントです。
・D2初期胚移植
・D3初期胚移植
・D2+D5の2段階胚移植
・D3+D5の2段階胚移植
・開始にはまだより多くの検討が必要ですが、今後非侵襲のPGTA(niPGTA)ができるようになれば、そのとき前核期凍結であれば培養液が回収できます
などなど
→また前核期の場合、
融解してから移植するまでの分裂時間をしっかり取り、融解後の受精卵の分裂情報を多く得て胚を選べることは、
初期胚凍結、胚盤胞凍結とちがう点です。
例:胚盤胞凍結、初期胚凍結の場合→融解した当日に移植
例:前核期凍結の場合→D2初期胚の時は1日間分裂を確認して移植、D3初期胚移植の場合は2日間分裂を確認して移植