クリニック選びをするにあたり皆さまは一番気になるポイントとして各クリニックごとの治療成績を比較したいかと思います。

少し過去の情報になりますが、2021年にNPO法人Fineが実施した最新アンケート「教えて!開示してほしい病院情報のアンケート 2021」の結果によれば、不妊治療患者が最も知りたいのは「年齢別の情報」。94%が納得のいく治療のために、病院の不妊治療成績の情報開示を望まれていることが分かります。
(詳細はこちら)

しかし、厚生労働省は年間の治療件数、費用、医師や看護師、胚培養士ら専門スタッフの配置人数などを開示義務としましたが、残念ながら皆さんが一番知りたい妊娠数や出産率などな任意に留まっているのが現状です

そうなると各施設の成績を知るためには各施設のホームページに掲載されている治療成績を見てその施設の治療レベルを予想しますよね。
 
また最近では不妊治療を実際に行っていた患者さんが、自身の治療結果を投稿するサイトなんかもあり、様々な方法で各施設の治療レベルを知ることができる時代になりました。


でもちょっと待ってください!

その情報正しく理解できていますか??
この記事ではホームページや投稿サイトで見られる治療成績の落とし穴について解説します。

1.妊娠率の落とし穴
皆さん1番気になるのは妊娠率ではないでしょうか。

やはり妊娠率が高い施設で治療を受けたいですよね。

しかし、各施設のホームページや投稿サイトで妊娠率を比較する時に気を付けないといけない落とし穴3つを紹介します!

1-1.患者年齢
妊娠率は患者年齢によって大きく変動します。
この患者年齢が1歳でも異なると妊娠率は大きく変わるでしょう。

その為、単純に全体の妊娠率が掲載されていても、その施設の平均年齢が高ければ妊娠率は低くなりますし、逆に平均年齢が低ければ妊娠率は高くなります。

1-2.胚移植の方法
次に胚移植に用いる受精卵の成長段階です。
胚移植には大きく分けて2つの方法があります。一つは胚盤胞を移植する方法と、もう一つは胚盤胞になる前の初期胚を移植する方法です。
当然、成長が進んでいる受精卵である胚盤胞を移植する方が妊娠率は高くなります。
しかし、全ての患者さんが体外で受精卵が胚盤胞に成長するわけではありません。
そのような方々にも対応できるのが、初期胚を用いた胚移植法です。
その為、胚盤胞移植しか行っていない施設ですと妊娠率は見かけ上は高く見えますが、その陰では胚盤胞にすら育たず涙を飲んでいる患者さんが大勢いる事を理解しなくてはいけません。

1-3.妊娠判定の定義
最後の落とし穴は妊娠判定の定義です。これが一番の落とし穴と言ってもいいかもしれません。
すなわちその施設が何をもって妊娠と定義しているかということです。
例えば、「尿中・血中にhCGが検出される」「胎嚢が確認できる」「胎児心拍確認できる」など様々です。

これらは後ろに行けば行くほど、妊娠率の数値的には小さくなります。
その為、全く治療レベルの同じ施設でも、「尿中のhCG」を妊娠と定義している施設だと妊娠率は高く見えますし、逆に「胎嚢」を妊娠と定義している施設だと低く見える可能性があります。

このように、単純に「妊娠率」といっても何を移植しているのか、何をもって妊娠としているのか、平均年齢は?など、多くの事を考えなくてはいけません。


2.受精率の落とし穴
次に受精率についての落とし穴を解説します。

受精率も治療レベルを確認するにあたって大切な情報ですよね。

単に「受精率」といっても、施設によって定義が異なる場合があります。

例えば、「受精率=正常受精率」とする施設もある一方で、「受精率=正常受精率+異常受精率」と定義する施設もあるでしょう。

すなわち、受精率が高いからと言って正常受精率が高い(治療で実際に使える受精卵が多い)という訳ではない可能性があるという事です。


このように妊娠率と同様に受精率においても、どのように定義するかによって一見高い数値にすることができるという事を覚えておかなくてはいけません。


3.当院の治療成績の見方
3-1.妊娠率
妊娠率については当院ホームページ内に掲載しています。
 
 
上記に解説した内容に当てはめて解説します。

・患者年齢
妊娠率は年齢によって大きく変動するため30歳以下・31~35歳・36~39歳・40~42歳・43以上の5区に別けて表示しています。
また併せて流産率や実施件数も掲載しています。

・胚移植の方法
当院の胚移植法は胚盤胞移植と初期胚移植の両方を症例に応じて実施しています。
ホームページ内の掲載しているデータは胚盤胞移植と初期胚移植の合算になります。
当院では胚盤胞移植と初期胚移植の割合はほぼ半々ですので、胚盤胞移植を中心に実施している施設より見かけ上は妊娠率が低く見えるかもしれませんね。

・妊娠判定の定義
当院での妊娠の定義は「胎嚢が確認できる」です。


3-2.受精率
受精率については当院ホームページ内には掲載していません。
しかしこれまでにブログ内で当院の受精率についていくつかの記事で紹介しています。これらの中で紹介している受精率を始め、当院が発表している受精率の全ては正常受精率(治療で使用できる胚の率)になります。


4.さいごに…
このように、妊娠率や受精率は定義によって見え方が変わるということをご理解いただけたでしょうか?

そのため、施設がホームページ内で公表している治療成績を単純に比較することは非常に難しいのです。

またそれは、治療結果を投稿するサイトも同じです。投稿者に悪意がなかったとしても、他者が投稿している内容とは定義が異なる可能性があります。

だからこそ、公開されている治療情報を慎重に読み解かなくてはいけません。


でもそれって難しいですよね。

そのために政府の主導で今後、透明性のある治療成績の開示が義務化されることが望まれます。

 


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