2022年4月1日より、不妊治療の保険適用が大幅に拡大され、それに伴い、人工授精、体外受精、顕微授精等の治療が、保険適用となりました。
その内容をみて、私たちは体外受精の治療の一番中心であり、クリニックの心臓部ともいえる培養室について、全く考慮がされていないことに対して大きな落胆と怒りを覚えました。
不妊治療について、誰が何をしているかということが全く考慮されず、培養室業務については全く触れられずスルーされた内容でしたので、私は大きな不満を感じました。
そのうえ、採卵で採れた卵の数、媒精操作をする卵の数、培養の卵の数、凍結の卵の数、これらすべて10個以上は同じ保険点数となっていることにも大きな驚きと落胆を覚えました。
その後、3月31日に厚労省より不妊治療の保険適用について、どのように解釈するという疑義解釈が発出され、その後、少しずつ様々な質問に対する回答が公開されました。

4月の患者さんの診療報酬は、5月10日までに、健保組合や協会けんぽ、市区町村などの健康保険の保険者に提出することになっていましたので提出しましたが、6月に入ってもまだ、審査の詳細については分かっていません。
各地方の審査員の方に、質問をしてみると「どのように審査をするか、方針が決まっていない」という回答で
戸惑ってしまいますし、驚いています。
はじめのうちは、審査員もどのように判断してよいか分からないため、査定をしないのではないか、という噂もありますが、もし、これが本当だとしたら“これでよいのか!?”と驚きしかありません。
保険適用から2ヶ月が経過し、当院では、保険適用の容量、用法を守り、検査の回数も審査員が疑義解釈等で回答した通りのことを行ってきましたが、色々な先生と話をしてみると「従来のプロトコール通りで行い、それについて指摘を受けたらその時に考えればよい」と、安易に考えている先生もいますし、当院と同じように真剣に慎重に資料を読み解いて一生懸命、議論をする先生もいます。
当院の基本方針のひとつにfreeze-all(全胚凍結)があります。
以前、凍結融解胚移植と新鮮胚移植の成績を比較したところ、凍結融解胚移植の方が良い成績だったため、2012年よりfreeze-allを行ってきました。
しかし、保険適用の考え方は新鮮胚移植がメインであり、凍結するのは余剰胚凍結という考え方で構成されていましたので、10年ぶりに当院の新鮮胚移植を復活させました。
卵巣刺激においては、新鮮胚移植を行う時はトリガーの日(hCGやGnRHアゴニストを使用する最後の仕上げの日)の黄体ホルモンが、当院の基準である1.5mlU/mLを超えるようであれば、新鮮胚移植の成績が落ちるため、黄体ホルモンが上昇しないように、あるいは主席卵胞だけに焦点を合わせた刺激を行うことが、新鮮胚移植での成績を上げるポイントになります。
その結果、順調に結果が出る人もいますが、そうではない人は、今までよりもできる受精卵の数も少なくなり、難しいままです。
また、当院の培養器はすべてがタイムラプスインキュベータであり、タイムラプスは先進医療Aと認められているため、自費診療であっても、保険診療と併用しても混合診療にはならないので、今後は、現在より、採卵できる卵の数を多くして、10個以上の卵であっても、黄体ホルモンが上昇しても、全胚凍結をして
タイムラプスインキュベータを使用して培養していく、本来の当院の方針に近い方法にしていく方が、より良い成績になると考えました。
黄体ホルモンの値が良ければ、もちろん新鮮胚移植を行いますが、卵巣刺激を新鮮胚移植に合わせるのではなく、本来の当院の方針に沿った方法に戻していきたいと考えています。
ただ、採れる卵の数が多くなっても、10個以上の診療報酬は変わらないのですが、全胚凍結をすることで、より成績を向上していきたいと思います。

今回の保険適応では、政治家が設定したタイムスケジュールで進めていくためには、培養室業務の認可が間に合わないため、培養室業務に関しては全く触れられておらず、本来の保険適用から考えると、ありえない形になっています。
今後、培養室業務を保険適用で認可するためには、胚培養士を国家資格として認可し、さらに培養室で使用する機器や薬剤、資材も認可しなければなりません。その上で医師や看護師等の人数や配置により、保険でもレベルを評価するように、ラボのレベル、不妊クリニックのレベルを評価し、保険点数をかえていくことが必要だと思っています。
これには、長い時間がかかると思いますが、保険診療でもきちんと結果を出すことができるような診療が
できればと願っています。

保険適用に合わせたプロトコールを試行錯誤していますが、2ヶ月が経過した現在、保険診療においても全国平均以上の成績を出すため、当院の良いところを活かせる保険適用の治療を引き続き考えていきたいと思います。
当院では、難しい患者さんには、従来通りの自費診療を継続していただいています。
しかし今後、保険診療の患者さんが増える中で保険診療としての当院の方針を打ち出すということが  必要であり、その方針を皆さんにお伝えする必要があると思い、久しぶりにブログを更新しました。
よろしく、ご理解いただきたいと思います。
 


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