最近、初診の患者様で、高血圧の薬を内服中、という方を見かけます。
また血圧が高いことが続いて、内科受診を案内することもあります。
高血圧の薬は、妊婦禁忌のものが多く、主治医に妊娠希望を伝えておくことが大切です。
よく処方される降圧剤
妊娠中、血圧の薬は飲み続けていいの?
妊娠中に使用できる降圧剤の種類が少なく、かつ効きが緩やかなことが多いため、妊婦禁忌の薬を使用しておいて、妊娠判明後に薬剤変更する例が多いです。
主治医に妊娠希望について相談している場合、Ca拮抗薬のアムロジピンで血圧コントロールしている方が多い印象です。
また、アンギオテンシンⅡ受容体拮抗剤(ARB)や、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤について、2014年にPMDA(医薬品医療機器総合機構)から医療機関に対して、「妊娠の判明以降も服用を継続している症例、胎児への影響が疑われる症例が報告されている」として、「医薬品適正使用のお願い」という形で、次のように注意喚起されています。
・妊婦または妊娠している可能性のある婦人には投与しないこと。
・妊娠が判明した場合は直ちに投与を中止すること。
・妊娠する可能性のある婦人に投与する場合には、胎児に与える影響を説明し、
妊娠が判明した場合は速やかに医師に相談するように繰り返し患者へ説明すること。
※アンギオテンシンⅡ受容体拮抗剤(ARB):成分名「~サルタン」
※アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤:成分名「~プリル」
私、オルメサルタン(ARB)飲んでるけど大丈夫!?
前述のように、PMDAからの注意喚起はあるものの、腎保護作用があるので、あえてARBを処方される場合もあるようです。
産婦人科診療ガイドライン―産科編2020によると、ARB、ACE阻害剤については、
「妊娠中期以降の胎児毒性はよく知られているが,妊娠初期の使用における先天異常のリスクは他の降圧薬を使用している高血圧合併妊婦と同等であることが近年明らかになってきた.つまり,ACE阻害剤 あるいはARB を内服中に妊娠した女性には,胎児への影響を強調するのではなく,妊娠初期のうちに他剤に変更することを助言するべきである.」
と記載があります。
例えば、アムロジピン+オルメサルタンを服用中の方も主治医の妊娠許可があれば妊娠可能で、妊娠初期に他剤への変更を予定します。
主治医によっては、「移植前に、薬剤変更して血圧コントロールしておきたい」という場合や、「妊娠してからの薬剤変更でよい」という場合があるため、あらかじめ主治医の意向を確認しておいていただくと良いと思います。
まずは妊娠許可を
妊娠中に高血圧が悪化すると、残念ながら母体保護を優先して、妊娠の中断を選択せざるを得ない場合があります。
血圧がコントロールできていない状態では妊娠許可が出ないこともありますので、これから不妊治療をお考えの方は、主治医に妊娠希望についてまずご相談いただき、妊娠許可を得るようお願いします。
これから受診予定の方は、できれば産科と連携できるような総合病院がおすすめです。
普段の生活で気を付けること
もともと高血圧ではない方でも、妊娠高血圧症候群(妊娠20週以降に発症する高血圧)のリスクはありますが、運動や食事に気を付けることで、高血圧合併妊娠を防げる可能性があります。
普段からご自身の血圧に注意し、適度な減塩、減量など、できることをしていただければと思います。
何かお気づきの点がございましたら、CSアンケートにてご意見を頂けると幸いです。
よろしくお願い致します。