新型コロナウイルスの流行で、『ワクチン』という言葉を耳にする機会が増えたかと思います。


薬剤師の豆知識17では
「ワクチンとは何か」「ワクチンの種類」「風しんワクチン、MR(麻しん風しん混合)ワクチンの必要性について」をお話ししました。
詳しくは薬剤師の豆知識17 「ワクチンとは を参照ください。

 

 

今回は「ワクチンの製造方法」についてお話したいと思います。

 


ワクチンの製造には病原性のない病原体を大量に増やす必要があります。
現在、①ふ化鶏卵培養法、②動物接触法、③細胞培養法、④遺伝子組み換え法
の4つの製造方法があります。

 


①ふ化鶏卵培養法
有精卵(ふ化鶏卵)の中に微量のインフルエンザウイルスを接種してウイルスを培養、精製してワクチンにします。

 

日本の新型インフルエンザウイルスワクチンはこの方法を用いています。

 


Q.卵アレルギーでもインフルエンザ予防接種はできますか?
A.インフルエンザワクチンに含まれている卵の成分はごく微量のため、
ほとんどの場合は予防接種をしても問題ありません。
対応は医療機関により異なるため、医師に卵アレルギーであることを申告し相談した上で予防接種を受けましょう。

 

 

②動物接種法
動物の体内にウイルスを接種してウイルスを増やす方法です。
大量のウイルスを得ることが可能で、過去の日本脳炎ワクチンはこの方法で製造されていました。

 


③細胞培養法
栄養液だけで生育させた動物の細胞にウイルスを接種して培養し、培養液中にでてきたウイルスを不活化・精製してワクチンとする方法です。

 

この方法では混入するのが細胞成分だけなので精製が上記で示した①、②の方法より簡単であること、有精卵(ふ化鶏卵)やマウスなどの原材料の供給量に制限されることなく短期間に、しかも大量にワクチンを製造することが可能なことが長所として挙げられます。

 

わが国では平成21年度からこの方法で製造された新しい日本脳炎ワクチンが予防接種に用いられるようになりました。他にMR(麻しん風しん混合)ワクチン、水痘ワクチンなどがすでに実用化されています。海外のインフルエンザワクチンには細胞培養で作られたものもあります。

 


④遺伝子組み換え法
あらかじめ増殖させた特殊な細胞にウイルスの遺伝子を挿入し、ウイルスの抗原性に係わっているタンパクだけを細胞に作らせた後、これらを取り出して精製する方法です。

 

長所としては、製造期間が大幅に短縮できること、製造に感染性のあるウイルスを用いないことから、ワクチンを安全に生産することが可能となることが挙げられます。

 

この方法は、酵母細胞を使ったB型肝炎ウイルスの製造に用いられ、すでに実用化されています。

 

 

 

上記の方法で作られたワクチンは、製造メーカーでの試験(品質、有効性、安全性)だけでなく、実際に製造されたすべてのロットに対して、国立感染研究所が行う、国家検定(品質、有効性、安全性)を受けています。

 

わたしたちが接種しているワクチンは国家検定に合格したものだけが使われています。