質素な暮らしぶりから、「世界で一番貧しい大統領」として注目を集めている南米ウルグアイのホセ・ムヒカ前大統領が、来日しています。
ムヒカ前大統領の思想について、いくつかご紹介します。
☆私が思う『貧しい人』とは、限りない欲を持ち、いくらあっても満足しない人のことだ。でも私は少しのモノで満足して生きている。質素なだけで、貧しくはない
☆物を買うとき、人は金で買っているように思うだろう。でも違うんだ。その金を稼ぐために働いた、人生という時間で買っているんだよ。生きていくには働かないといけない。でも働くだけの人生でもいけない。ちゃんと生きることが大切なんだ。たくさん買い物をした引き換えに、人生の残り時間がなくなってしまっては元も子もないだろう。簡素に生きていれば人は自由なんだよ
☆幸せだと感じるのは、自分の人生の時間を使って、自分が好きなこと、やりたいことをしているときさ。それに幸せとは、隣の人のことをよく知り、地元の人々とよく話し合うこと。会話に時間をかけることだとも思う。
☆人間が犯した間違いの一つが、巨大都市をつくりあげてしまったことだ。人間的な暮らしには、まったく向いていない。人が生きるうえでは、都市は小さいほうがいいんだよ。そもそも通勤に毎日3時間も4時間も無駄に使うなんて、馬鹿げている。
☆このまま大量消費と資源の浪費を続け、自然を攻撃していては地球がもたない、生き方から変えていこう、と言いたかったんだ。簡素な生き方は、日本人にも響くんだと思う。子どものころ、近所に日本からの農業移民がたくさんいてね。みんな勤勉で、わずかな持ち物でも満ち足りて暮らしていた。いまの日本人も同じかどうかは知らないが。
軍事政権下、ムヒカ前大統領は、平等な社会を夢見て、ゲリラになり、長く投獄されていたことがあるそうです。
14年近く収監され、うち10年ほどは軍の独房で、長く本も読ませてもらえず、厳しく、つらい歳月を過ごています。
「独房で眠る夜、マット1枚があるだけで私は満ち足りた。質素に生きていけるようになったのは、あの経験からだ。孤独で、何も無いなかで抵抗し、生き延びた。『人はより良い世界をつくることができる』という希望がなかったら、いまの私はないね」
「人は苦しみや敗北からこそ多くを学ぶ。以前は見えなかったことが見えるようになるから。人生のあらゆる場面で言えることだが、大事なのは失敗に学び再び歩み始めることだ」
独房で何が見えました?という質問に対し、
「生きることの奇跡だ。人は独りでは生きていけない。恋人や家族、友人と過ごす時間こそが、生きるということなんだ。人生で最大の懲罰が、孤独なんだよ」
「もう一つ、ファナチシズム(熱狂)は危ないということだ。左であれ右であれ宗教であれ、狂信は必ず、異質なものへの憎しみを生む。憎しみのうえに、善きものは決して築けない。異なるものにも寛容であって初めて、人は幸せに生きることができるんだ」
と答えています。
ムヒカ前大統領は、5日から8日間、日本に滞在し、東京都内の大学で講演などを行うほか、京都、広島などを訪問する予定。