前回、「セカンドフィンテック」の話をしました。

「フィンテック」の「ファースト」段階は「仮想」領域の話ですが、「セカンド」段階は「現実」世界の話です。

ある意味、「ファースト」段階は「実害の出るセカンド」の実用化の前(確認)段階だと認識しています。

近年、「ファースト領域」が整備されてきたことで、「セカンド領域」も少し動いてきたように思います。

この「セカンド領域」について、前回は「オンチェーンデータ事業」に関し少し触れました。


日本はそもそも事業の形というのが「集中的に行うことで効率化する」概念だと理解しています。


「総合商社」「総合家電」等々「総合=集中的な概念」が色々とありますが、「金融」も銀行や証券という枠は違うものの、基本的には「集中」概念が多く残っています。

過去形になるのですが、例えば「手数料系の統一」であり、「中央(政府)の指示に従う金融」という概念がありました。


「護送船団方式」とか言っていた方法です。


その他では、証券取引所なども日本は注文集中型です。


この「集中」や、それに対する「分散」は良い面と悪い面が背反しているのですが、それではデータに関してはどうでしょうか。


欧米はGAFAMのようにデータはそれなりに集中させていて、「ビッグデータ」という概念を持っています。

しかし、日本は「総合」事業など、政府組織や企業は1つの団体が大きくなり、縦割り社会となっていることから、データがそこから出ていきません。


つまり、日本では「データ」だけが逆に「分散」していて、「ビッグデータ」にはならないのです。

ただしくは、「ビッグデータ」は「集中データ」のことですが、データを管理している技術は暗号分散にシフトしてきているのです。

簡単に言いますと、日本は暗号分散技術が弱くて、データ事業も遅れ始めているということになります。


結果的に、今後に期待されている「ビッグデータ事業(AIによる解析などによる産業の発展)」が遅れる結果になっているように思います。


「データ事業」について、オープンの概念として考えると、処理は分散へ、データは分散管理していてもサービス的には「集中」させているということを理解すべきなのです。


特に、このオープンの段階では、企業情報よりも個人情報の処理に重点が置かれてきます。

個人情報というのは、情報の中でも規制が最大レベルのものですから、簡単に管理することができません。

その中で、WEB3では個人認証という概念が進み始めています。


WEB3を言うのであれば、SSI/DID/VC、このあたり(個人認証)の概念を最初に理解しないと駄目です。

逆に言うと、このあたりまでは今の段階では対処できるということです。


しかし、これは個人情報をオフチェーンで管理し、その結果をオンチェーンで使うということであり、全てをオンチェーン化する構想の中では非効率であることは確かです。

個人情報をブロックチェーン等で管理できないことは、以前にも話題にしましたが、「情報を管理しているブロック」のチェーンが切れないため、個人情報の削除要求に対処出来ないためです。


ブロックチェーンは「台帳」であって「データベース」ではないのです。

しかし、この「台帳」を少し「データベース」のような処理にできれば、それは個人情報が扱えるようになるのです。

この技術がとても難しくて、世界でも実用化レベルにはなっていないと思います。


こうなると、ブロックチェーンの技術を使った、新しい暗号分散技術になるということであり、このあたりが「セカンドフィンテック」になると考えます。


もう少し簡単にいうと、個人情報をオンチェーンで管理できれば、企業や個人が持つ情報がオープンの世界に出てくるわけです。

この、「情報を売る」ことによるマネーの獲得ロジックが裏にあるため、モチベーションがサービスに出てくるためです。

サービスというのは、何等かのモチベーションが無いと駄目なのです。


こうなると、企業などが隠していたデータが表面に出てきて、オープン的なビッグデータが出来るわけです。


このあたりが、日本ではやらないといけない話だと思うのです。


ただ、内容が個人情報なだけに、オープン化する時に、個人特定情報を該当データから外して活用する概念はまだ良いとしても、それでは解析情報自体が弱くなる(この理由は別の時に説明します)ため、その問題を解決するには、個人そのものの情報を提供することも必要になります。

ここが技術的に難しくなるのです。

つまり、企業が管理する個人情報ではなくて、それを個人に戻して個人が自分の情報を管理し、個人の意思でオープン化する、こういうところです。

そういう重要情報を個人が簡単に管理できないと、このあたりの対応は難しいのです。


それでは、そのような個人情報が売れるというニーズがあるのかというと、実はとても「ある」のです。

詳細は別の時に話しますが、ビッグデータ事業の本質が理解できると納得するはずです。


本来、個人の重要情報が、利用制限をかけて広がらない形とした情報で、それが10万円で売れるなら売るヒトが出てくると思うのです。

そして、そんな情報が10万円の価値があるかについては、確かに需給関係で10円程度の弱い情報価値しかないものが多いと思うのですが、まれに重要な情報があります。


このあたり、10万円は簡単に超える価値があったりしますので、そういう情報の検索を含め、取引を行うという概念が出てくるわけです。


昔から、西本はトークン類についてはリアルアセットを考えてきて、まず「ステーブル型のゴールドコイン」を認可していただきました。

FT型RWAです。


これを作るのはとても大変でした。

流出リスクへの対処は当然として、コイン型ですから発行権を奪われるリスクの排除を徹底したわけです。


この時から、量子計算機による暗号解読攻撃リスクを回避するなどの方法を考えてきたのですが、こういう「データ保全」の実用化を真剣に取り組んでいるわけです。


この技術が「個人情報を守る」という事業領域のサービスに繋がっているのですが、上記のFTサービスに対して、このリアル価値を持つ情報などのNFT型RWAの実現が見えてきて、それがこの先数年以内に出てくると考えています。

このNFT型RWAが、今のNFTマーケットとは違う形で、もう一つの非常に重要なNFTマーケットに成長していくと思います。

次世代のNFTは、実はビッグデータ事業そのものであり、それがセカンドフィンテックなのだと考えます。


それでは、次の話題は、この先に金融機関はどうすれば良いのかのヒントに触れたいと思います。

銀行や証券、信託あたりのリテール系は、オープン技術の先進事業体が稼働してくると非常に厳しい環境になると思うのです。

証券では手数料ゼロという動きですが、実はそんなレベルの話ではなくて、もっと厳しくなりますし、そのように世界が動いているので、日本でも一部の金融機関が準備をしているのです。

そういうところを、多くの金融機関が理解していないことも事実かと。