『イットク2024!』出演アーティスト11 宮尾節子 with KIK-A-Poo | 『イットクフェス』ブログ

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毎年秋に開催されている国会を囲んでのロックフェス『言っとくけど俺の自由はヤツラにゃやらねえロック・フェスティバル』略して『イットク フェス』のブログです。
実行委員からのお知らせや、出演者紹介、スタッフによるリレーブログです。

出演回数6回目です。

逃亡人生50年のキリシマを初読みします。

何卒よろしくお願いします。

 

霧島

     宮尾節子

 

好きなサンタナを聴きながら命果てたと。

土木会社の住み込みで真面目に働き

ギターを弾いてときどき歌も歌い

行きつけのスナックでは愛されキャラで

うっちーと呼ばれながら普通に暮らしていたと。

いちど女性にアプローチをされたけれど交際を断ったと

「自分は幸せにできるタイプじゃないから」と。

「今日は暑いねー」と番台にも気さくに声をかけて

ほぼ毎日3時から5時の間に通っていた地元の

銭湯には霧島の手配写真も貼ってあったがだれも気づかなかったと。

池袋駅のコンコースには黒縁メガネに笑顔の写真がまだ貼られたままだと。

最後は本名で死にたかったのではなかったのかと。

その事件はわたしはやってないと言っていたらしいが真相は霧島の

霧の彼方へと。

 

遺体は警察署に移され、警視庁は男のDNA型鑑定を進めていると。

【速報】

霧島光容疑者を名乗る男のDNA型の鑑定の結果、

霧島容疑者の親族と「親族関係に矛盾がない」という

結果が出たことがわかりましたと。

 

逃亡人生50年。

おお、ぶらっく まじっく ぶらっくまじっく

霧島のサンタナを聴きながら 迎える二月の凍つく朝のうーまん。

 

『腹腹時計』の〈第一章〉には

「武装闘争=都市ゲリラ戦の開始に向けて」の「個人的準備=ゲリラ兵士としての配慮」に次のような記述がある。

 

1 詩人であると思い込んでいる自分、又は他人によりそう思われている自分を、

生活形態などを変えていくことに依って消していくこと。

(1)居住地に於いて

◎居住地に於いて、極端な秘密主義、閉鎖主義は、かえって墓穴を掘る結果となる。

◎表面上は、極く普通の生活人であることに徹すること。(そう思わせることだ)

◎近所付き合いは、浅く狭くが原則である。最低限、隣人との挨拶は不可欠である。

◎生活時間を、表面上市民社会の時間内に復すること。(特に、時間の転倒には気をつけなくてはならない)

◎居住処としてのアパートや下宿等に、多数の人間の出入りがやたらに目立ち、深夜、明け方に及ぶヒソヒソ話は止めなくてはならない。

◎居住は常に整頓し、清潔に保つこと。名簿、住所録、手紙、手帳などは常日ごろ整理し抜き、必要に応じて暗喩化すること。不必要なもの、在ることのまずいものは他に移すか、

廃棄、焼却すること。(以下、略)

                     

 *『腹腹時計』(編集・東アジア反日武装戦線〝狼〟 兵士読本編纂委員会)より引用。

   以下部分のみ変更 左翼活動家→詩人 暗号化→暗喩化。

 

わたしたちは好むと好まざるに拘らず被植民地人民の犠牲の上に生きている日帝本国人です。レバノンを侵略し、パレスチナ人を虐殺するシオニスト・イスラエルを一貫して支持してきた日帝を撃つことに何のためらいが必要でしょうか?と。

 

親族は遺体の引き取りを拒否したと。

市は7日、1974、75年に起きた連続企業爆破事件で指名手配された

霧島光容疑者を名乗った男の遺体(享年70)を

市内の火葬場で火葬したと。

市によると、身寄りのない遺骨は市が委託した葬儀社が5年程度保管し

引き取り手がない場合は無縁仏として合葬すると。

7日時点では、引き取りの申し出はないと。

 

逃亡人生50年。

おお、ぶらっく まじっく ぶらっくまじっく 

50年前聞く耳見る目を持たなかった 50年後のわれわれが

霧島のサンタナを聴きながら 迎える2024年2月の春一番に水平三色旗が

はたはた中空に色めき旗めき騒めく 新宿駅南口で集合して。

 

われわれは爆破しない スタンディングする Free Free  

#Free Palestine(フリーパレスチナ)ただちに 殺戮をやめろ。

われわれは爆破しない ポエトリー・リーディングする 

「こんなもんじゃなかったぜ」こんなもんじゃないと噴き出す記憶よ Free Free 

#Free Israel (フリーイスラエル)もう復讐を やめよ。

 

恋も国家も分かち合えないと 思い知ったら 共に生きるしかない。

ひとつになれないなら ふたつを。国家は恋だ 叶わぬ恋なら

おお、ぶらっくまじっく ぶらっく まじっく

魔法がいる。 

ふたつを生きる 愛がいる

ふたつを書き記す詩がいる 恋を葬る凍つく朝のうーまん。

 

事件を長年にわたり捜査してきた公安警察のベテラン幹部たちは

「名乗ったのは彼の勝利宣言のようなものだろう」と

本名告白の真意を読み解いていると。

 

自分は幸せにできるタイプじゃないと断って

わたしは殺ってないと名乗って

霧の彼方へと

 

#Free Palestine(フリーパレスチナ)

#Free Israel(フリーイスラエル)

#Free Free (フリーフリー)

霧島!

 

 

       *『現代詩手帖』4月号〈特集:朗読/リーディングの地層〉掲載詩。


◎参加アーティストプロフィール
 
宮尾節子 (詩人)
高知県出身。飯能市在住。2014年、SNSで公開した詩「明日戦争がはじまる」の爆発的な拡散で各種メディアで話題になる。既刊詩集『かぐや姫の開封』『妖精戦争』『ドストエフスキーの青空』『恋文病』『宮尾節子アンソロジー 明日戦争がはじまる』など。各所で朗読・講演・ワークショップを行う。また野外ロックフェス、ライブハウス等で音楽家とのコラボによるポエトリーライブなどジャンルを超えたポエトリー道を躍進中。近刊詩集『女に聞け』・近刊散文集『明日戦争がはじまる 対話篇』も好評。第10回現代詩ラ・メール賞を受賞。
 
<KIK-A-Poo(キカプー)>
 
小林洋(ベース)
六弦ベース奏者。札幌市生まれ。92年渡米時にヒップホップの洗礼を受け「SECRET COLORS」結成。他、青木マリ、高井つよし、南正人バンド等に参加。ノンジャンルのジャムセッション"Groovers Jam"主催。六弦ベースソロ「六弦独演」で活動中。
 
清水達生 (ドラムス・パーカッション)
香川県出身。ドラムを故・古澤良治郎氏に師事、韓国伝統打楽器をミン・ヨンチ氏に師事。ジャズでのセッション活動の他、これまでに朴保バンド、国分寺エクスペリエンス、キムヨンジュgroup、生田卍&SOSO等のバンドにも参加。 またオリジナルデザインのハングルTシャツも発売中。
 
ミコ・トコマレ(ギター)
コンポーザー、アレンジャー、ギタリスト、ピアニスト、ドラマー、トランペッター、ボーカルとして複数のプロジェクトに参加。 また、ソロミュージシャンとしても、多重録音を用いたオーバーダブによるワン・マン・オーケストラを演奏している。



宮尾節子 with KIK-A-Poo

(*バンド名の読みはキカプー)