〈最終章〉―滝桜は倒れない―
正男・咲子、滝桜の下でビニールシートの上に座っている。
シートの上には花見の用意がされている。
正男 「おせぇなぁ~。約束の時間、過ぎてねぇか?咲子?」
咲子 「そうねぇ。どうしたのかしら?」
ひと呼吸置いて、広志と仁美がゆっくりと歩いて来る。
広志 「すみません。遅くなって」
正男 「おお、やっと来やがったか。ったく、おめぇ達はいっつも・・・」
咲子 「(正男の言葉を遮って)ひょっとして・・・今度こそ・・・」
正男 「ん?ん?」
広志 「・・・はい。こいつに・・・」
正男 「何なんだぁ?」
仁美 「赤ちゃんが・・・」
咲子 「ビンゴー!!おめでたなのね!!」
広志 「あ、はい!!」
正男 「(ポカーンとした表情で)そうか。えっ!?おめでた!!?」
咲子 「わわわわわっ!!おめでた!!おめでた!!(正男の肩を叩いて)いつまでポカーンとしてんのよぉ!!良かったわねぇ。だから用心して遅くなったのね!」
正男 「あっああ!!そうかそうか!!そういう事か!!」
広志 「(照れくさそうに)はい」
そこへいきなり大声が響く。
男A 「ちょっと待ったー!!」
ぞろぞろと男女数名(スタッフ)がイカつい顔で登場する。
男A 「おい!!こら!!広志!! ・・・て、てめぇら・・・(泣き出しそうな口調で)俺達を騙しといて何がおめでただあ!!」
言い終わると唇を噛み締めて下を向く。
全員、まばらに泣き出しそうな声で、
全員 「そうだ・・・そうだ!!・・・」
広志・仁美、吃驚して深々と頭を下げる。
広志 「すみません。本当にすみません!!」
仁美 「本当に、すみませんでした!!」
正男・咲子、物知り顔で黙って下を向いている。
男A 「(涙をぬぐって)な~んてな!!」
広志と仁美以外、全員が涙をぬぐって泣き笑い出す。
咲子 「胎教に悪いわよね~」
広志が不思議そうに、
広志 「えっ?」
男A、再度涙をぬぐって、
男A 「ドッキリだぁ!!ドッキリなんだよ!!」
広志 「ドッキリ?・・・ど、どういう事ですか?」
男A 「おめぇ達がよぉ・・・ 、俺達を騙してまでやろうとしてた事をよぉ・・・、正さんから聞いたんだぁ」
広志 「えっ?正さんから?」
男A 「(低いトーンで)ただし、騙した事には変わりねぇからよぉ・・・、ちょ、ちょっと・・・だけ・・・お、脅かしてやろうって思ってよぉ・・・。(トーンを上げて)今のでチャラだ!!なあ、みんな。正さん、これでいいって事だな!!」
正男 「(涙をぬぐいさり満面の笑顔で)そういうこったぁ!!」
広志 「ど、どういう事ですか?」
正男 「つまりよぉ・・・何だぁ・・・その・・・何てんだぁ、その・・・咲子?」
咲子 「もう突っ込まないわよ(笑)」
正男 「えっとだなぁ・・・。ここに居る俺達はよぉ、みんな明るい未来を信じて、目指して、頑張ってんだぁ。でもよぉ、一人一人じゃよぉ不安になったり、くじけそうになったりする時もあんだぁ。なあ咲子」
咲子 「そうそう、その調子」
正男 「そんでだなぁ、俺なりに考えてみたんだぁ・・・。広志、おめぇがよぉ、大学の研究を成功させたら滝桜は今よりずっと強くなるんだよな?だったらよぉ、ここで一つ宣言をしてくれりゃあよぉ、俺達はこの先どんな辛い事があっても明るい未来を絶対に諦めない、絶対に倒れない強い心を持てるじゃねえかって。なあ咲子。なあ、みんな!!」
男A 「そうそう、そういうこったあ!!」
広志 「宣言?宣言っていうのは?」
正男 「ゴホンッ。(改まって)滝桜は倒れない!!明るい未来が現実になっても、またその先まで、ずっとずっと未来永劫、滝桜も俺達も倒れない!!ってな!」
咲子、パチパチパチと拍手して、
咲子 「広志くん!広志くんの番よ!!」
広志、感極まって思わず流した涙を拭いながら、
広志 「はい!!滝桜は、俺達の想い。滝桜は、倒れません!!倒れさせません!!」
正男 「よっしゃあ!!みんな!!広志が宣言したんだ!!これで俺達はこれから何があっても、がんばっていけっぺ!!」
正男、拳を掲げて、
正男 「みんなぁ!、力を合わせて、がんばっぺ!!!」
全員が拳を掲げて、
全員 「がんばっぺ!!!」
全員が一斉に拍手を始める。
広志と仁美が涙をぬぐっている周りを全員が拍手しながら取り囲んで、広志と仁美の肩を優しく叩いて回る。
× × ×(照明落とす)
PA(全員の拍手の音がフェードアウト)