インターホンの音が鳴る。
正男 「ん?誰だ?こんな時間に」
咲子が玄関に向かおうとするが正男が咲子を制し、自分が玄関まで行って、
正男 「(怪訝そうな表情で)はい。どちらさんですか?」
広志 「あっ、あのぉ~、広志です。すみません、こんな時間に」
正男、咲子の方をチラッと見て安心した表情になる。
正男、玄関を開ける。
(ここで全照明点灯)
広志と仁美が訪れているのを見て、正男も咲子も笑顔になる。
正男 「おお、おお。こんな時間に誰かと思えば、ちょうどおめぇ達の話をしてたとこだったんだ。なあ、咲子」
咲子 「そうよ。二人共どうしてんだろうって心配してたのよ」
仁美 「ごめんなさい。明日にしようって言っても、広志さんが一日でも早くお詫びをして知らせたいって・・・」
正男 「ん?何だ何だ?」
咲子 「ひょっとして・・・おめでた?」
広志 「いえ、それはまだ・・・俺、正さんに・・・・いや、ただ・・・あのぉ・・・」
正男 「咲子、おめぇ期待させるような事言うんじゃねぇっぺ。んで、知らせたい事ってのは何なんだぁ?」
広志は突然玄関先に座り込み手を付いて真剣な面持ちで言う。
広志 「・・・・正さん、すまなかった。」
咲子 「広志君どうしたのよ、顔色悪いわよ、いいからさあ入って」
広志 「いいんです、本当この通りだ、すまなかった。」
咲子 「なにやってんの、さあさあ、中さ入って」
咲子は慌てて広志の肩を持ち上げ、引っ張り込むように背中を押しながら、
咲子 「さあ、仁美さんも、入って、入って!」
玄関を入ってすぐの所で広志は再度手をついて言う。正男も咲子も黙って聞く。
広志 「こんな俺が、・・・ちきしょう、悔しくって悔しくって、情けなくって、目の前も見えねぇ、大切なものが何だかもわがんねぇようになっちまって、みんなんことずっと騙してた!!」
咲子 「広志く・・・」
広志 「みんなのこと騙して金さ手にすっと、ふと我に返ってよ・・・それで、血ぃさ吐きながら必死にやってることが何なんだか見えねくなって・・・
でも、それでも俺はやらなきゃなんねって気持ちだけが空回りしちまって、結局三ヶ月も入院するさまに・・・肝心な研究はほとんど進展しなっくってよぉ・・・」
仁美 「ち、違うんです!この人ひとりで無理し過ぎ」
仁美の声を遮るように広志が言う。
広志 「そうじゃねぇ~そこには無力な情けねぇ俺が居たんだ! 正さん、咲子さん、俺はみんなを騙してた、 この通りだ、許してくれ!、申し訳ねぇ!」
正男は腕を組んでしかめっ面で聞いていたが、組んだ手を解き、手で両膝を叩いて言う。
正男 「終わりだ!、騙すなんて、ったくおめぇみたいなクソ真面目でつまんねぇ~人間のやりそうなこった!」
咲子 「ちょ、ちょっとあんた・・・」
正男 「終わりだ!こんなつまらねぇ話はおわりだ!
・・・・・・・そんなとこさいねぇ~で、こっちさ来い、誰も最初から怒ってなんかいねってんだよ馬鹿野郎!、それよりおめぇ~その顔大丈夫なのか?」
咲子 「ほらほら、あんた!いつまでも・・さあさあ」
PAを背景に炬燵へと正男と仁美は歩く。
場が落ち着いたところで、
咲子 「で今日は何なの?それに一日も早く知らせたい事って?例の研究がうまくいったとか?」
4人でコタツを囲んでいる。
広志 「いや、それはまだまだ先になると思うのですが・・・」
正男 「ん~、いってぇ何なんだべ?じらすんじゃねぇよ」
広志 「そ、そのぉ~、うちの教授が、滝桜の研究を来年度から正式な研究として認めてくれたんです!!」
正男 「ん?それが何なんだぁ?」
咲子 「バッカだねぇ、あんたは!正式に認めてくれたって事は、大学が研究費を出してくれるって事よ!ねぇそうなんでしょ?広志くん!」
広志 「はい!!その通りです!!」
正男 「ん?って事は・・・なんだっぺ?」
咲子 「全くあんたって人は大工仕事以外にはホントに頭の回らない人だねぇ。広志くんがお金の心配をせずに研究に打ち込めるって事よ!」
広志 「そ、そうなんです!!今まで試したくても出来なかった色んな事が出来るようになります」
正男 「おお!!おお!!おお!!そうか!!そういう事か!!そいつぁめでてぇ話だ!まあまあ、ん?めでてぇ話でいいんだばい?」
咲子・仁美、コタツの周りで、クスクスと笑う。
正男 「てことぁ、絶対に倒れない滝桜っていう茂さん夢に一歩近付いたってことになるな、広志!でかしたぞ!」
突然、
PA(地震音が響く)