『滝桜9』 | 一斗のブログ

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2011年6月15日に小説を出版しました。
出版をするにあたっての様々なエピソードや心の葛藤、病気の事等書きました。今はショートショート(超短編小説)やエッセイ等を載せています。宜しくお願いします。

咲子 「・・・・・・・」

仁美 「広志さんが今、大学の研究室で助手として働いてる事は正さんも知ってますよね?」

正男 「ああ、そりゃ知ってる。確か農学部だったっけなぁ?」

仁美 「はい。農学部の研究室で植物の研究をしてます。そこで色々な植物の生態について研究をしているのですが、まだまだ助手の立場なので広志さんが本格的に取り組みたい研究を選べないんでだそうです。ただ、教授にお願いして実験や論文を書く時間以外だったら特別に滝桜の研究をする承諾は得ているらしいです」

正男・咲子「(声を揃えて)た、滝桜!?」

仁美 「はい、広志さんは滝桜の研究をしてます。でも研究する為に必要な器材や薬品なんかは大学の研究費は使えないんで、全部自費でなんとかやってました。でも大学の中だけでは限界があって大学からの移動代だけでも馬鹿にならなくって・・・」

正男 「おらぁ、難しい事はわかんねぇけんど、移動代だの限界だのってのはどういうこったぁ?」

咲子 「あんたが聞いても、どうせわかりっこないでしょ」

仁美 「いえ、別に難しい話ではありません。広志さんが休日に足げに福島の三春町へ来て、実際に滝桜の生産農家や代々滝桜を種から栽培している御一家に現場を見学させていただいたりするだけでも、大学の中ではわからない事を色々と学べると言ってました」

正男 「う~~~~ん・・・」

咲子 「ほ~ら!あんたには、もうついてけないでしょ」

ポチ 「ワンッ」 

   ポチ、煙草をフカしながら頷く。

正男 「な、なんだぁ。おめぇまでバカにしてんのかぁ?おらぁ勉強は出来ねぇがよぉ、真剣に話してる奴の話は感覚でわかんだぁ」

   ポチ、煙草を灰皿にポンポンとしながら正男の肩をポンと叩いて、

ポチ 「ワ~~ン」

正男 「この犬かオッサンかどっちでもいいけんど、腹立つなぁ~・・・。話の邪魔すんじゃねぇ!えっと・・・広志。・・・何だったっけ?あっそうだ!そんで、広志の言う研究ってぇのはいってぇ何をしてんだぁ?」

仁美 「・・・滝桜の品種改良です!!」