入院9日目
午前中、主治医の診断があり、ようやく手足の拘束解除となる。
ようやく自由の身だ!
自由とは不自由との裏返し。
不自由があるから自由があるともいえる。
外からこの自分で自分の糞も流せない牢屋へきたなら、相当な不自由を感じるだろう。
しかし、僕は自由の絶頂だった。
手と足を自由に動かせ、自分の足で立ち上がることができるんだから。
糞を流して欲しいとか、喉が渇いたとか、なにか用があるときも大声で120回ほど呼ぶと、看護師が来てくれる。
彼らも忙しいのだ。
用件も命に関わるわけでもなく、すぐに対応できなくても、何の問題も無く時は流れていく。
一つの修羅であった場所が平和になった。
どんな待遇であっても、当人が自由であればそれでよい。
しかし、現状で満足するほど、人間と言う生き物は簡単にはできていなかった。(だから進歩したのだが)
4畳半程度の板の間に、便器一つ、窓一つ。内側に向けては鉄格子が入っており握りこぶしがようやく通る程度。
2重ドアの内側には僕の荷物が置いてある。
しかし、そこには手が届かない。
差し入れの雑誌、ノート、腕時計、見えているが手は届かない。
書籍も何にも無しで3日間過ごしてみて欲しい。
このままここにいたら、キチガイになると真剣に思った。
しかし、出してはくれない。
自衛策を考える。
何かをせねば、何かを考えねば。
エアー縄跳びを1000回飛んだ。
掛け算九九を20回、唱えた。
時間はたっぷりある。
しかし、何もやることは無い。
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