・高音質なレコード再生の為には必要なコンポーネント

 

アナログレコードの再生には、まずレコードに刻まれた音溝をダイヤモンド針がとりついたフォノカートリッジ(発電方法によって、MM(ムービングマグネット)とMC(ムービングコイル)、そしてごく少数ですが光電型(DS AUDIOが復活させました)と完全に失われた技術であるコンデンサー型(かつてスタックスが製造していました)と分かれます)で発電した電気信号を、フォノイコライザーで2つの大きな処理を行いアンプを経てスピーカーやヘッドホンに伝わり、最終的に空気振動という元の音になっていきます。

 

まず1つ目は、イコライザーカーブという高音と低音のバランスを意図的に(音溝をダイヤモンド針が読み取りしやすいように)変換したものをフラットな状態に戻すこと。

今はRIAAという規格に基づいていますが、かつてはレコード会社ごとにイコライザーカーブが違い一筋縄ではいかない世界でした。

 

2つ目は非常に弱い電気から増幅してアンプ内で音質良く増幅しやすいように受け渡すことです。

詳しい説明はできませんが、CR型やNF型という電気回路が使われており(CR-NF型もある)いかに音質を損ねずにフォノカートリッジがピックアップした電気信号を増幅するのか、非常に大きなテーマとして取り組まれていました。

 

・今回のテーマは、ずばり1万円以下!学生のお小遣いでも買える金額

 

今ではSNS上でもアナログレコード再生を楽しみ、投稿する人が増えました。

それにしても高級品は相変わらず高額で、とても庶民が買える値段ではありません。

ところがamazonなどネット通販で、1万円以下の手ごろな価格で中国製のフォノイコライザーが売られ始めました。

これが値段の割には音質がいい!と評判になって広まり、今では一大勢力を成しています。

そこで今回のターゲットは下記のような人たち向けの、分かりやすい記事です。

 

・まずはレコード再生ってどんなものか体験したいけど、とにかくひたすらお金が無い!

⇒いいものを買うにしても、聞かなきゃ良いか悪いかわかりませんからね。

・すぐに飽きちゃうかもしれないから、無駄遣いしても痛くない金額に抑えたい!

⇒SNS映えしてバズったら続けるかもしれませんが、そもそもレコード盤を何枚も買わないですよね。

・とにかくひたすら高いお金を出したくない!1万円もオーディオ機器なんかに使いたくない!

⇒わかりますその気持ち、安いに越したことはありませんからね。

 

*そもそもフォノイコライザーなんか買わないって人はそもそも読まないことが前提です。

 

・フォノカートリッジの次に音質が劇的に変化する重要な部分

 

巨大なアンプには死ぬほど投資するのに、意外とどうでもいいと思われている部分ですね。

音は入口と出口を固めろ、と大昔(1970年代頃まで)は言われていましたが今どきそんなことを言うと老害扱いですかね(怖い怖い)。

ただそうやって数十年前に先人たちが散々試した結果、たどり着いた一つの方法論なので間違いないと思います。

そこで、フォノイコライザーも劇的に音質が変化する部分である「入口」に含まれていると思います。

理由としては、フォノカートリッジが発電した電気信号は非常に微小かつ外部・内部ノイズの影響を受けやすいため、

いかに無駄なく正確に、フラットな状態かつ音質をドロップアウトさせることなく次のステップであるみんな大好き

巨大アンプに受け渡しをするか、求められる性能が高いからです。

アナログレコード全盛期は、このフォノイコライザーの性能を過激に競争する時代であり各メーカーは威信をかけて様々な回路を生み出し、高音質な専用部品を開発してきました。

そうして積み上げてきた技術やノウハウを、CDがメディアの主流になると同時に綺麗さっぱり捨ててしまいごく一部で細々と作り続けられる、暗黒時代を経て今に至ります。

 

・回路構成、使用部品は各メーカーほぼ同じでオペアンプがメインである

 

1万円以下ですから、正直どこのメーカーだろうが型式だろうが似たり寄ったりです。

理由は、商売として利益を上げようとすると使えるコストは限られていて販売価格が最初から1万円以下と縛りを

受けていれば、オペアンプという汎用部品1個で済む単純な回路を使うことになり、これがまた一定の性能を担保できるため

メーカーもユーザーも喜ぶからです。

同じ値段のカップラーメンに何求めてるの?具が欲しけりゃ高いの買えよって、表向き言えないだけで。

逆を言えば、大きく性能が逸脱して音質の悪いものは無いと思われます。

また一度CDというデジタルメディアに支配されてアナログレコード再生などという、変人の趣向じみたジャンルの技術が失われてしまい、今更トランジスタや抵抗、コンデンサを使って1から回路を作る能力が無くなっていると思います。

 

・味付けのフィルターとして真空管が使われているものもあり、好みの音質に変化させることができる

 

正直ただフォノイコライザーとしての役割だけを求めるなら、真空管が使用されていないものでも十分です。

フォノイコライザーとしての役割は、先に申し上げた通りオペアンプ1個で賄うことができておりあくまでも真空管が

搭載されているというのは、見た目でユーザーにプレミアム感を訴求できることや音に色付けするフィルターとして

最適であること(部品が大きく、交換がソケット式なのと交換時の電気的調整が不要になっているため)、ここに尽きます。

必ずしも同じ型式である必要は無く、いわゆる「互換品」が数多く存在します。

国やメーカーによってプレートと呼ばれる真空管内部の電極の形状が異なり、音質も様々です。

また部品そのもののバラつきがあるため、本来は電気的に調整して使うものですが厳密さは求められていないので大丈夫です。

 

・腕に自信があれば部品を自分好みに交換しカスタマイズするのも手段(非推奨)

 

部品が実装されている基板を見て、回路図を自分で書き起こすことができたりハンダ付けの知識と経験があり、部品交換を行うスキルを持っていれば、コストの制約で使われなかった高音質部品に自身の手で交換しカスタマイズするのも、万が一壊してもゴミ箱にポイっと捨てて一晩寝れば忘れるくらいの、手ごろな価格でいつでも買えるこういった装置のメリットだと思います。

 

・イトケンセレクト 1万円以下フォノイコライザー5選

*商品タイトルは出品されている文言から変更しています。

*すべての機種を購入、試聴しておりません。

*判断基準は、ずばり値段と見た目と基板を見た感じ。以上。

 

1.Fosi Audio BOX X2 真空管フォノプリアンプ

 

 

電源スイッチとゲイン調整ボリューム(3ステップ)つきの6A2真空管付きのフォノイコライザー(兼プリアンプ)です。

DC12VのACアダプターで動作するので、真空管の交換もそうですがトランス式のACアダプターに交換してあげるとぐっと音質が良くなるかもしれませんね。

最近ごく一部で流行っている、窒化ガリウムを使った急速充電器にトリガーケーブルという組み合わせもいいかもしれません。

見た目もおしゃれですし、クールに決めたい方はどうぞ。

 

2.Douk Audio T3 PLUS 真空管フォノプリアンプ

 

 

 

姉妹機でVUメーター(音量に反応するアナログ式針メーター)付きは1万円を超えますが最初からちょっとマシな真空管が装着されていますが、世の中にはこういう遊び心というか非合理的な要素にケチをつける人たちがいるので、オーディオ趣味を合理的かつ実質的に無駄なく楽しみたい人にはいいかもしれません。(真空管は中国製)

このフォノイコライザーがすごいのは、フォノイコライザーごとに設定されているインピーダンスがMM/MC用に変化させることができることです。特定のマニア向け製品で一生を終える方には関係ありませんが、フォノカートリッジはメーカーや機種ごとに入力インピーダンスや静電容量(pf)がバラバラでマッチングが取れないばかりに、音質が悪くなり不遇の扱いを受けているものが多数あります(エンパイアとか)ので、こういう機能がついているのはいずれマニアになるかもしれないなという方かすでにいろいろフォノカートリッジを収集している人、どちらかでしょう。

厳密にマッチングさせるのは難しいかもしれませんが、何も設定できない製品と比べると価格の割にマニアックです。

 

3.Douk Audio T4 PRO Mini 真空管フォノプリアンプ

 

 

 

赤いボリュームノブと真空管周辺のアクセサリーリングが目を引きますね。

内部写真が載っていますが、それなりにお金がかかっているように見えます。

ヘッドホンアンプとしての使い勝手の強化と、付属真空管がちょっとマシなのがついている(GEの真空管ですね、よくこの手のフォノイコライザーやなんちゃって真空管アンプのオプション品として売られているやつです)ので、お金を出すなら最低このクラスは最初から買っておきたいところですね。

 

4.AIYIMA TUBE-T3 真空管フォノプリアンプ

 

 

 

Fosi Audioと間違い探しレベルの見た目ですが、中身はほぼ同じではないでしょうか。

内部写真を公開しているので、音質に自信がありそうですがフォノイコライザー部分のオペアンプ(2個使っているので左右独立回路なのかも)が、基板に直付けだったり交換できるようソケット式だったり、商品写真によってバラバラです。

試作品と量産品(生産時期)によって中身が違う、というガチャ要素も感じるのでなんだかワクワクしますね。

 

5.Little Bear T7 真空管フォノプリアンプ

 

 

 

アナログレコードが楽しめる環境を知人の為に構築するべく、購入しました。

ところがこれまだひどい代物で、音量を上げるとハムノイズが目立つ(詳しい人によると設計上こんなもん)のと、搭載されている中国製の真空管の質が悪くてオペアンプでほぼ賄っているはずなのに、妙に音が歪みっぽく聞くに堪えません。

通電してエージングしているうちに良くなるんじゃないか?と電源入れっぱなしにして数カ月放置してようやく、音質は雑だけどまだマシかなと諦めがつくレベルに落ち着きました。

フォノイコライザーとAUX(外部入力)と切替するときと、増幅ゲインを切替するときは必ずアンプの音量は小さくしましょう、盛大なポップノイズが出てびっくりします。

内部写真を見ると基板表面に実装されたチップ部品だらけで(試作品と思しき写真は中身はしっかりしていました)、コスト的に有利なものを使っている感じです(もちろんオーディオ用部品ではないと思います)

*イトケン的結論

おもちゃと割り切ってノスタルジーを味わうために買うのはあり、高いものに手を出さないと決めて比較試聴しないならあり。