・トーンアームの形には大きく2つある

 

1つはS字型ユニバーサルタイプのもので、フォノカートリッジがヘッドシェルと共に交換できるものの大半がこちらです。

テクニクスSL-1200シリーズやそのクローン、コピー品はじめたくさんありますが最近は見かけなくなりました。

もう1つが今回紹介するストレートタイプのもので、ヘッドシェルが交換できるものとトーンアームパイプごと交換するものと昔はありましたが、いまではヘッドシェル固定式と思しきものが主流のようです。

 

・CD登場数年前から、ストレートアーム採用のレコードプレイヤーが増えた

 

時代はデジタル音源が出始めて、トーンアームのローマス(低質量)化がひとつの開発テーマでした。

そこで登場したのが、ストレートタイプのトーンアームです。

これはヘッドシェルそのものにトラッキング確度を持たせることで、トーンアームを短く軽くすることができる上にヘッドシェルも専用設計できて、よりフォノカートリッジが発電しやすい理想的な設計にすることができました。

これと回転ムラを追放できるクオーツロック制御式ダイレクトドライブモーターを組み合わせて、レコードプレイヤーのハイテク化は頂点を迎えます。

 

・最終的にリニアトラッキング方式へ発展するも、息絶える

 

セミオート方式(再生の操作は手動、再生終了の操作は自動)とフルオート方式(再生、再生終了の操作が自動)がさらに進化して、ほぼCDプレイヤーと同じ仕組みであるリニアトラッキング方式へ、ストレートアームタイプのトーンアームは進化していきますが、CD発売と同時にオーディオメーカーはハイテクの粋を集めたアナログレコードプレイヤーの生産から次々と撤退し、その極めた技術のほとんどを捨ててしまいました。

高級なアナログレコードプレイヤーは今でも販売していますが、捨ててしまった技術は二度と取り戻すことはないでしょう。

 

・廉価版レコードプレイヤーに細々と技術継承されている

 

ヘッドシェルがトーンアームと一体型になった、一部のエントリーグレードのレコードプレイヤーにはストレートアームタイプが多く存在しますね(中にはフォノカートリッジも固定式のものもあります)。

小さく短く作れる、ということは低コストで振動対策もばっちりなわけです。

結局細々と技術継承されて、見た目のカッコよさもあって残された(復元可能な技術レベル)ことが大きいですね。

 

・ストレートアーム専用ヘッドシェルは、実はADC規格というもの

 

先に説明した、ストレートアームはヘッドシェルが専用設計のため理想的な造りにできますが、反面メーカーや機種を乗り換えると互換性はありません。

ただ手本としたのが、アメリカのADCというメーカーのトーンアームと専用ヘッドシェルでしたので「ADC規格」とも呼ばれて、互換性がある程度担保された専用ヘッドシェルが、ちらほらネット通販で見かけることがあります。

 

・しかし各メーカーがトーンアーム設計に合わせてアレンジしているので、互換性は100%ではない

 

具体的な例については、一部の方が調べているようですが今のところ何の互換性もないのはマイクロのとあるレコードプレイヤーでした。

専用ヘッドシェルのピン配列こそADC規格ですが、差し込む向きが全く違うため装着できても再生することができません。

またNECのとあるレコードプレイヤーのように、専用ヘッドシェル以外を使うと奥までしっかり装着できなかったりと実質設計したメーカーがやりたい放題やっていた可能性があります。

足並みをそろえていたらいまだに生き残っていたかもしれませんね。

 

・レコードプレイヤー本体が売りに出ると、専用ヘッドシェルが欠品状態がほとんど

 

フォノカートリッジが金になるという情報が素人、せどり屋(転売屋)の果てまで情報が出回ったため安価なレコードプレイヤーのほとんどが、リサイクルショップへ専用ヘッドシェルをフォノカートリッジが装着された状態で引っこ抜いて捨てていきます。

買取に出しているためか、新たにフォノカートリッジを取り付けることができません。

これは困ったことです、年式が比較的新しいのですが使い道を絶たれてしまいゴミにするしかありません。

 

・ヤフオク等で根気よく探すことで手に入る

 

アナログレコード関係は、ハードもソフトも金になるのが誰にでも理解できるようになったおかげで、これまでなら廃棄されていたような細かな部品も、売買されるようになってきました。

S字型ユニバーサルアーム用ほど潤沢ではありませんが、根気よく探せば手に入るようです。

 

・複数のフォノカートリッジを取り換えて使うのに向いていないが、工夫すれば手軽に使える

 

専用ヘッドシェルの入手が困難なので、複数のフォノカートリッジを使うためにいちいち取り外して装着するのは大変なことですが、専用ヘッドシェル(互換品含む)を数個用意してお気に入りのフォノカートリッジを予め調整したうえで用意しておけば、トーンアームのゼロバランスと針圧調整、インサイドフォース調整だけで済むため気軽に使うことができると思います。

 

・シンプルにレコードプレイヤーで音楽を高い質で楽しむには、競争相手がおらず穴場

 

アナログレコードを再生する装置として、ほぼ進化しきった最終形態とも言えるのでCDやハイレゾ音源、ストリーミング再生がメインのユーザーにとっては、あえてこのタイプのレコードプレイヤーをわざわざ探して買うメリットは専用ヘッドシェルが装着されていることが前提ですが、競争相手がいないため安価に手に入れることができます。

必要なのはフォノカートリッジとフォノイコライザーの質の高さなので、レコードプレイヤーそのものに求められるのは使いやすさと見た目、そしてコストです。

アナログ音源の再生は、このコストが音質に直結しますので重要な部分です。

 

イトケン的結論:

トリオのKP-7Xを使っています、またNECの珍しいタイプも保有していますが修理が必要な状態です。

またマイクロ精機のこれまた珍しいタイプはこれから試そうという段階です(ずいぶん前に買いましたが)。

ひとまずトリオのレコードプレイヤーは、フルオートタイプかつ回転数制御にクオーツロックを用いているため見た目は無機質で頼りなく見えますが(主観)、音質はすっきり聞きやすくて好感が持てます。音色はあまり良くありませんが。

ADC規格の専用ヘッドシェルを数個所有しているため、いくつかフォノカートリッジを装着し使い分けができるようにしていますし、見た目がすっきりしてかっこいいので個人的に気に入っています。

売値が数百円とか1000円前後とか、ひどいとそんな扱いでリサイクルショップで投げ売りされているため手軽にアナログレコードを再生してみたい(中国製フォノイコライザーとの組み合わせ実験にも使える)用途にうってつけです。

 

ちなみに使いこなしにはそれなりの知識を身に着けなければなりません。以上。