DVDオーディオ/ビデオ、SACDマルチチャンネルとサラウンド環境の高音質が求められた時代

 

ちょうど2000年前後の一時期は、DVDビデオに始まりデジタルサラウンド環境による高音質が達成できるようになったので

空前のホームシアターブームが、おおよそ15年は続くことになります。

(今はひっそりとしていますが)

そんな中、SACD(スーパーオーディオCD)という、次世代の音楽CDメディアが登場し続いてDVDオーディオというこれまた

次世代を担うであろうことを期待された、今でいうハイレゾ(音楽CDを超える高解像度)音源の発売が開始されます。

そして、AVサラウンドアンプ(AVアンプ)にはそれまでのサラウンド効果だけでなく、ステレオ機器のような高音質が求められるようになっていき、「サラウンド」という呼び名はいつしか「マルチチャンネル」と呼ばれるようになりました。

 

メーカーが標榜する、音を極めたAVアンプとはどのようなものか?

 

おおよそまとめて箇条書きしてみると

・ステレオ再生時に余分な回路を通過、また回路への電源供給をOFFにするダイレクトモードを搭載

・パワーアンプのフロント2チャンネル部分にはステレオ再生への配慮から高音質回路を装備

・音質に配慮した部品の数々を贅沢に装備(大型電源トランス、カスタムされた電解コンデンサ、補強されたボディシャーシ構造)

 

そもそもサラウンド再生環境の構築のためのAVアンプで、ステレオ再生環境のクオリティはいかほどか?

 

今回テストした機材は、ヤマハのDSP-AX2400という機種です。

この時代のヤマハは、映像を引き立てる性格が非常に強く音が目立たないように音質調整されているようです。

そのため、ステレオアンプのようなリスナーに対してグイグイと押しの強いサウンドではなく、解像度は高いまま滑らかさと

絹ごしのような上品なサウンドを作り出しています。

テストしたのが比較的大きいサイズのスピーカー(コーラル DX-THREEⅡ、ソニーSA-MD9)でしたので、元々スケール感は大きく余裕のあるものでしたが、それが一回り以上小さいスピーカーに感じられてしまいました。

これはサラウンド再生環境のための装置であることから、仕方が無いものと割り切って使うものだと思います。

またあくまでもスピーカーは古くて能率の高いモデルですので、能率の低い小型ブックシェルフ型スピーカーではサウンドが変化します。

ですので、現在新品で販売されている3万円以下のローコストスピーカーとの相性が気になるところです。

 

DSP-AX2400とはどのような位置づけの製品だったのか?

 

20年も前の機種ですので、現在の製品に当てはめるのは難しいですが個人的にはAventage(アベンタージュ)のRX-A6A相当ではないかと考えます。

最上位機種の1ランク下に位置しており(上位機種はDSP-Z9)、新品価格15万円という設定でした。

このころのヤマハのラインナップとしてはマニア層向けの製品群と認識しており、ステレオ再生とサラウンド環境の両立を図りたいユーザーへ向けた製品として、力を入れて開発されたものと推測されます。

 

激貧ジャンク品愛好者の強い味方、激安AVアンプが売られている理由

 

国内の中古市場には、大量のAVアンプが流通していましたが消費電力(ワット数)の高いモデルに関しては輸出業者がメーカーや型式関係なく、ただワット数の記載とデカさ、重さだけで買取していました。

ところがAVアンプをステレオアンプとして使用すると、正直音質は良くないと捉えられてしまいます。

そうすると輸出先での需要が落ち込み、ホームシアター用途で使われることもあるのでしょうが「デジタル(AVサラウンド)アンプは音が悪いから要らない」と露骨に買取を拒否する業者も少なくないそうです。

今は古くてボロボロのステレオアンプのほうが、使い勝手も機能も優れたAVアンプよりも価値が高く、数が減っているためそちらを優先するのです。

これがDSP-AX2400のような中上位機種ならいざ知らず、数がたくさん売れた10万円以下の機種はワット数も低いことから見向きもされません。

これは何を意味するかというと、中古製品として価値のないゴミ(産業廃棄物)という認識をされて、売り場の場所を取るだけの存在であるという、限りある売り場面積を有効に活用したい販売店にとって、いつまでも売れていかない悩みの種となるのです。

そこで500円、1000円といった激安価格をもって廃棄処分したくない一心で売り切ろうとします。

袋に入れれば無料で自治体が処分してくれる粗大ごみと違い、産業廃棄物には莫大なコストが発生しますから。

最終的には使用したいユーザーが買わなくても、解体し電源トランスやヒートシンク、回路基板といった資源になる部材として、輸出業者の買取に並ぶので、形は変われど結果は同じなのですが。

 

安物買いの銭失いは今も昔も変わらないという事実

 

学生さんなら限られたお小遣い、アルバイト代、社会人なら少ない手取りからやりくりして音楽を高音質で楽しみたいと努力されることは大いに結構なことです。

スマートフォンとイヤホンと、YouTubeやSpotifyがあれば事足りてしまうことに、労力とお金と場所を確保することは素晴らしいことです。

しかし、残念ながら、型落ちの低グレードのAVアンプとローコストスピーカーはスマートフォンとイヤホンで聞く音質に負けてしまいます。

それだけ空間を隔てて、音楽を再生するという行為は非常に難しいのです。

意図的に腰掛けとして、ほんの繋ぎとして使用されるなら問題ありませんが、そこで終わってほしくないと思います。

せめて定価10万円を超える高グレードのAVアンプを使って頂きたいと思います。

 

現状、転売屋と輸出業者によって、中古オーディオ機器が高騰し購買競争は苛烈を極めています。

だからこそ無駄遣いを無くし、時間がかかってでもステレオアンプを1台選ぶべきですがそこまでのめり込むつもりで楽しんでいる方はごく少数かと思いますし、音楽と映像を同時に楽しむのが当たり前の時代にただ音像が浮かび上がるだけのステレオ再生は、甚だ時代遅れです。

これから取り組むには遅すぎるので、お勧めはしません。

 

ですが、あえて映像は無いけれども情景描写を創造してくれるステレオ再生の世界に、一人でも飛び込んでいただきレベルの高い精神世界を体験して頂きたいものです。

そのための入口として、妥協点としては、ヤマハのDSP-AX2400は実に多くの事を教えてくれるでしょう。

安物買いの銭失いは今も昔も変わりません、しかし頭を使って他人を陰で罵倒し精神的に鬱屈し腐っていくことよりも、安価でモノを手に入れる競争をして価値のないものに囲まれるよりも、足で稼いで知恵を絞り僅かなお金でいかにして費用対効果を高めていくのかを、追及して安物買いをして銭を失わないようにしましょう。

 

ということでもう1台買ってみましたので、そちらもレビューしていきたいと思います。