前回の続きです。

数日後、セカンドオピニオンを受けた病院から電話がありました。

私たちが希望していた治験について、

「治験の枠が空きました。2番目でお待ちいただく形となります。」

という連絡でした。

2番目というと期待が持てそうな気がする順番ですが、実際には1番目の患者さんがスクリーニングという治験に参加するための事前検査で対象外になった場合に順番が回ってくるという立場でした。

担当医の方がスクリーニングを実施するということは、治験に参加できる可能性が高いと見ているわけで、参加できる可能性はあるものの、大きな期待はできないというのが正直なところでした。

それでも、可能性がゼロではないのなら待ってみようということで、


「引き続きお願いします。」


そう伝えて電話を終わりました。

その頃も妻のオニバイド治療は続いていました。オニバイド開始から約2か月が経ち、4回の治療を終えていました。

幸い、副作用は倦怠感くらいで、日常生活を大きく崩すことはありませんでした。

しかし、肝心の薬が効いているという兆候は見られず、腫瘍マーカーは下がることなく、上昇を続けていました。

この時点で、保留にしていた肝転移に対する局所治療という選択肢は断念しました。

それから約1か月が経ち、隔週で通っている外来の日を迎えました。

この日は腫瘍マーカーの採血と画像検査の日でした。

オニバイドとしては6回目の投与日です。

腫瘍マーカーはというと、CA19-9は1,500から1,900まで上昇していました。

ついに、アブゲム開始前の値を超えてしまいました。

この数字を見た瞬間、

「時間がない。」

そう感じたことを今でも覚えています。

セカンドオピニオンの内容は主治医にも共有しました。

主治医は、

「遺伝子変異があり、参加できる治験があるなら、そちらを優先された方がいいと思います。」

と背中を押してくれました。

今にして思えば、主治医は標準治療の中で、常に妻にとって最善を尽くしてくれていました。

もちろん、標準治療以外を勧める立場ではありません。

それでも紹介状はすぐに用意してくれたり、他院で治療を受けることになっても快く送り出してくれました。

また、私一人で相談したいことがあるとお願いした際にも時間を作ってくれ、標準治療とは直接関係のない質問にも真摯に答えてくれました。

この頃には、本当に信頼できる主治医だと思うようになっていました。

診察が終わると、私はすぐに治験実施施設へ電話をかけました。

返ってきた答えは、

「今回の治験の枠は流れました。」

でした。

正直、かなり絶望したことを覚えています。

標準治療の選択肢をできるだけ残した状態で治験へ参加できれば、と考えていたからです。

でも、ここで諦めるわけにはいきませんでした。

時間は待ってくれません。

それに、私たちが参加を希望する治験を実施している病院は1箇所だけではありません。

私はすぐに別の実施施設へ電話しました。

事情を説明すると、担当医へ取り次いでもらい、

「患者さんのデータをFAXで送ってください。」

と言ってくれました。

すぐにかかりつけの病院へ連絡し、その日のうちに紹介状や必要書類をFAXしてもらいました。

FAXを送った翌週、改めて電話をすると、

「おそらく参加条件は満たしています。」

との返事をいただきました。

さらに、治験の枠が空いた際にすぐ動けるよう、事前に受診しておいて問題ないか確認したところ、日程を調整していただき、受診日まで決めることができました。

一方で、オニバイドが効いていた場合に備え、STNM01という治験についても準備を進めていました。

STNM01は、膵臓の線維化部分へ直接投与し、線維化を和らげることで抗がん剤を届きやすくすることを目的とした治験薬です。

もしオニバイドが効いていれば、この治験も十分に選択肢になると考えていました。

そのため、実施病院への紹介状や予約だけは済ませ、いつでも受診できるよう準備していました。

治療が効いたときに、すぐ次の一手を打てるようにしておきたかったからです。

それから数日後、前回撮影した画像検査の結果説明がありました。

結果は、原発巣・肝転移ともに増大。主治医からは、オニバイドも効いていないだろうという説明がありました。

ただ、私たちが治験参加に向けて動いていることを理解してくれていたため、次回もオニバイドで予約を入れてくれました。

標準治療であれば、三次治療としての選択肢はFOLFOXになります。

しかし私としては、可能な限り標準治療の選択肢を残した状態で治験へ参加したいと考えていました。

私たちは、その可能性を信じ、新しい病院へ向かいました。

そして、この受診が私たちにとって大きな転機となりました。