紙幣 | 夏炉冬扇の長袖者の尉のブログ 

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 紙幣は肖像画を止めるべきです。

 

 1万円札の福沢諭吉が、その脱亜論で韓国人と付き合うなと言っているから韓国とは断交するべきだといった議論をよく目にしました。諭吉は慶應義塾大学を創設した教育者ですが、痩我慢の説とか、楠木正成権助論(赤穂浪士に触れたもので楠木正成の名は出ていないが世間的にそうなってしまった)とか、世間の常識を大胆に否定してみせる著作もあって、自分が経営していた新聞に書く時の主張の振幅が大きい人でした。

 

 脱亜論も、当時の韓国政府の対応が日本の思惑と違っていたことに腹を立てて、感情的になって書いたものであり、韓国と付き合わない場合にどんな将来があるかを冷静に考察したものではなく、諭吉の著作の中ではレベルの低いものです。

 

 それが近年になって、学問のすすめを上回る諭吉の代表的論説のように評価され、1万円札の諭吉が韓国人と付き合うなと言っているのだから、韓国とは断交しかないとの主張が目につくようになってきました。1万円札の肖像という権威がなかったら、脱亜論がこれほどの扱いになっていたかどうか。
 

 今度は5千円札になる津田梅子が、下記のようなことを手紙に書いているから、朝鮮人を差別するのは正当な根拠があるという議論になっています。

 

 【父が帰ってきました。二、三日前に、思ったより早く着いたのです。朝鮮についてとても興味深くおもしろい話をしてくれました。いくつかの点では、動物の方がこのような汚い朝鮮人よりましだと思いますし、あるところには本当に野蛮な人びとがいるのです。彼らの衣服や食料はとてもよいのですが、粗末に不潔につくられているのです。家は掘っ立て小屋のようだし、妻たちは完全に奴隷か囚人のようです。寝食や労働のために一つの部屋からでることもせず、下層階級の人びとだけが日中、日光にあたるくらいのものです。彼女たちは家の外で人に会うことをしないのです。何世代かの女性たちは、隣接した小屋に住んでいるのに、互いの顔を見ることをしません。彼らの習慣は下劣で、何もかもが汚くそして粗野なのです。……父が私に朝鮮について多くのことを話してくれました。あなたの記事のために、聞いたことを書いてまとめたいと思います。きっと、とても関心をもたれると思いますので、書いたら送ります。ある意味で、世界で最悪の国のように思われます。】

 

 朝鮮の人たちに対する差別と偏見に固まった内容であり、父が語ったことを鵜呑みにして、ランマン家(アメリカ留学時代のホストファミリー)宛ての手紙に書いています。父親からの又聞きで朝鮮人への中傷を述べ立てているわけで、自分で調べようともしなかった不見識さはお粗末の極みで、ふつうなら今どき相手にされる文章ではないのですが、5千円札の肖像になるという権威で、この酷い内容のこの手紙が持ち上げられて、朝鮮人差別は間違っていない証拠とされてしまうのです。

 

 昔の人は外国に対して偏見を持っている場合が少なくないので、探せばこういう文書も出て来ます、たまたま紙幣の肖像になる人が書いていると、紙幣の権威で正しい議論であり差別の根拠とされてしまうのです。

 

 人間の肖像をなくして、裏面の建物や花や波のデザインで紙幣は良いと思います