連載小説ネトウヨ疝気 第10回 | 夏炉冬扇の長袖者の尉のブログ 

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 「絶対にここから出るな、腹黒7連敗のようになるぞ。」

茂賀左衛門はそう言い残して組長屋から奉行所に出勤した。俺様は茂賀左衛門が置いておいてくれた日の丸弁当を食べたが、警察でのカスどんと同じくコメが臭くてまずかった。しかし日の丸弁当でコメを食わなかったら食べるものがないので、仕方がなく食べた。こんなに不味いコメは、学校給食以来だ。

 

 夕方に茂賀左衛門は嬉しそうな顔をして帰って来た。

「佐倉衣、今日、警察にお前の手配書が回って来たぞ、在郷軍人会と国防婦人会が相手では逃げようがない。ここから一歩でも出たら絶対に逮捕される、逮捕されたら死罪になる。警察の組長屋に指名手配犯が隠れているとは誰も思わないから安心していて良い」

「済まんな、迷惑をかけて」

 

 茂賀左衛門は冷酷な笑いを片頬に浮かべて言った。不気味な顔であった。

「匿ってもらって、済まんなで済むわけがないよな。こっちは危ない橋を渡っている上に、お前がいればコメ代もかかる、タダということはないよな」

 

 「幾らか食費を払えと言うのか、月10万円くらいならば払うが」

「舐めているのか。コメの配給は1人当たり2分搗きで1日2合3勺しかない、お前の分はハルピン街まで行って闇コメを買って来なければならん。闇コメは高い」

「では幾らならば」

「1日5万円だ、お前は500万円持っているな」

 

 「どうしてそれを」

「お前が逮捕されたときに調べた。お前が百叩きで命を落としたら持ち物は警察が没収する、生きていれば本人に返され、俺がゆっくりと巻き上げることができる、だから死なれては困ると言ったのだ」

 

 茂賀左衛門の生きているな、死なれては困るは、俺様の持っている金を巻き上げるためのもであったのだ。なんて奴かと思ったが、それがネトウヨというものであるとも思った。所詮はこういう人間の集まりなのだ。

 

 「俺は3両1人扶持の薄給なので、金がない、しっかりと有る処から取る」

「3両1人扶持はいくらなんだ、小判でくれるのか」

「小判ではくれん。1両20万円換算して、1人扶持は1年で玄米1石8斗なので、81000円、年間681000円だ。これでは結婚どころか1人でも食えん、だから内職で提灯を貼っている」

 

 この部屋にある大量の竹と紙の正体が分かったが、警察の小者のあまりの給料の安さに俺様は驚いた。

 

 「匿い料は1日5万円、それが嫌ならばここから出て行け、死罪になりたいか、この指名手配犯が」

「そんな言い方をするのか、昨日の言葉はなんだったのか」

「手配書が届くまではお前は出入り自由だ、名古屋の大先生のところへ逃げ込まれたら、500万円を巻き上げる計画がパーになるから、甘い言葉をかけてここに引き留めた。そんなことも分からんのか」

茂賀左衛門は勝ち誇ったような感じで俺様を見下して言った。

 

  明日に続きます