連載小説ネトウヨ疝気 第7回 | 夏炉冬扇の長袖者の尉のブログ 

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 神竹は現実になにごとか指示した。

指示を受けた現実は俺様の耳元で人の名と思われるものを口にした。

「さ●こ●じ」

昔にどこかで聞いたことがあるような気もしたが、分からないので何の反応もしなかった。

 

 「新潟のアゴナガハゲであれば、この名を聞いたら狂乱状態になって暴れ出すはずでございます、人違いで間違いないかと存じます」

「さ●こ●じ、に反応しなければ別人であろう」

若宮丸も漸く人違いであることを認めた。

「ならば放免にいたしましょう」

神竹がそう言ってくれたので俺様はほっとした。

 

 若宮丸は冷たい笑いを浮かべ、

「この者は先ほど、儂のことをあいつはバカかと申した、聞き逃してはおらぬぞ。上役人を怖れぬ雑言は許しがたい、市中引き回しの上、斬首、梟首」

と言い放った。何としても死罪にしたいようである。

 

 「それは余りにも重いかと」

神竹が異論を唱えてくれた。

「では、山流し」

「もう一声」

「百叩き、これ以上は量刑を下げられぬ」

「良きお裁きと存じます」

鼻を垂らしている若宮丸は、良きお裁きと言われて、子どものように喜んでふんぞり返って奥へと入っていった。

 

 「お上の格別のお慈悲で百叩きと相成った、有難くお受けせよ」

神竹は重々しく俺様に向って言った。

人違いで逮捕されて百叩きは酷いと思ったが、あれこれ言って指名手配犯の佐倉衣装であることが露見するといけないので、栃木県№1ホストの無力田岡として処罰を受けて解放してもらうことにした。

 

 警察署の櫓で半鐘が鳴らされた。火事のときのような乱打ではなく、一定の間隔で打たれている。

「半鐘がなるのか」

と俺様が尋ねると、神竹は、

「客寄せだ、これから百叩きがあることを触れているのだ」

と答えた。若宮丸が連呼していた市中引き回しといい、岐阜では刑罰が見世物になっているようであった。

 

 民衆が集って来るまで待たされたあと、百叩きは始まった。叩き役は現実で、青竹で力一杯俺様の背中を叩く、10発も叩いて青竹が割れて来ると、新しいものに取り換えて叩いた。最後まで現実は力を緩めることなく、数え役の神竹も数をまけてくれることはなく、俺様は血みどろになり半死半生になって召し放ちになった。

 

 明日に続きます