退院して家に着き、わたしはシュークリームを食べた。
甘いものが、食べたくなった。

入院したんだ。
もう、二週間前の毎日過食が止められなかった時とは身も心も切り替えが出来ているはずだ。

やっぱり家は良かった。

家の食べ物も家族が隠しておいてくれた。

しかし病院の看護師さんに受け取ってもらえなかった、クッキーの詰め合わせが目についた。
そうするともう、頭から離れなくなった。
駄目だ。
駄目だ。
絶対に、我慢だ。
駄目。
わたしの入院の二週間は、何だったの…?

そして
家族が一瞬いなくなった隙に、
わたしは全てをたいらげた。
こそこそ隠れながらも、一瞬で、無我夢中で、全てを食べてしまった。

悲しかった。

自分に心底絶望した。
両親も辛く、悲しむだろう。

食べたごみを隠したが、すぐに見つかった。

見つけた母は驚いた。
そしてやっぱり、とても悲しんだ。

もう、わたしはどうしようもない。
もう、痩せられない。
痩せられないから、学校に行けない。
卒業まであと1ヶ月ほどだ。
やり残したことが沢山だ。
高校生活に向けてやりたいことも沢山だ。
そういえば、もうすぐ高校受験だ。


友達に、会いたいな。
退院したら絶対に行くって言ったのにな。
夢みて、楽しみな気持ちが先走って友達と遊ぶ約束までしちゃったのにな
こんなにも学校に行けないなんて思わなかった。
というか、こんなにも食べるのが止められなくなるなんて思わなかった。
頑張って痩せたのに、食欲なんて細い体のためなら簡単に抑えられたのに。

その時はもう65キロ程。
太っていた。
現実から目を背けていたが、見た目は大分別人になってしまっていただろう。

友達は相変わらず連絡をくれた。

食べるのが止められないから、太ってしまって学校に行けない。
過食をしてしまうのが辛い。
なんて言えないが、摂食障害ということだけは特に仲良しな友達に伝えた。
わたしが急激に細くなったのを友達は知っていたし、そのあと太ったのもわかっただろう。
薬を大量に飲んで学校を遅刻したり、休んだりしたことも知っているため、精神がおかしくなっていることも知っているはずだ。

誰一人、こんなわたしを否定する人はいなかった。
甘えとか、頑張れとか、そんなこと言う人なんていない。
みんな、ただただ、待ってると言って優しくしてくれた。


わたしは、そんな友達を裏切った。
いつになったら学校行くから、バレンタインは絶対チョコあげるから、何日はここに遊びに行こう……
いくつもの、数えきれないほどついた嘘は積み重なって人への裏切りになる。


もうわたしは、消えてしまいたい。

スマホの電源を切った。

友達からの連絡が、ただただ辛かった。