実力の源

 

先日、とある書道の会の理事以上のみが出品する書展に行って来ました。「理事」と言うからにはきっと上手な人達ばかりだと想定しつつ、一つ一つの作品を観て回りました。

 

私程度が言うと怒られるかもしれませんが…。残念ながら残念な作品がちらほらと見受けられました。スピードに任せて機微の無い作品や、線質の悪い作品などがあって、ちょっとがっかり。もちろんそうでない作品もたくさんありましたが。

 

これから自分がどうありたいのか、考えさせられながら足を進めて、いよいよ会長さんクラスの作品の前へ。

 

いい作品とはどういうものかを一言で表すなら、足をわざわざ止めてじっと眺めようと思わせるものだと私は思っています。もしも会長さんクラスの作品に作者名が書かれてなかったとしても、自動的に立ち止まってしまいます。それはあたかも、歌唱力のある歌手が街角で変装して歌っていても、歌声に聞きほれて人が集まって来るようなものです。でもそんな人は稀。技術だけある人はたくさんいますので、きっとそれだけじゃない何かがあるはず。

 

そんな風に思いながら眺めているとき、出品者の一人と話す機会がありました。その方は会長の大ファンなので、いつもべた褒めをします。

 

彼女:「見てあの二行目の優しい字。会長はいつも優しい字を書けとおっしゃるのよ。見事に成功されているわ。」

私:「きっとお強い方なんですね。強くないと優しくなれませんから。」

 

こんな風に私が返すと、なぜか数秒の沈黙がありました。そしてその後、

 

彼女:「あなたはどうなの?」

私:「え?私ですか。どうでしょうね。」

彼女:「強くないわね。」

私:「強くないですかね。」

彼女:「強くないわ。ほほほ。」

 

私のことをろくに知らない人にこんな風に言われる事は心外で驚きました。私が実際に強いか強くないかはさておき、きっと私を蔑まないと自分を保つことができないのかなと思ってスルーしました。もちろんこんな会話は普段はあまりなんの役にも立たないのですが、ずっと考えていた自分はどんな字を書く人間になりたいのか、人が勝手に立ち止まって見入る作品に必要なものは何か、という問いに対して答えが見つかりました。

 

私は温かい字を書きたい。そのために慈悲深い人になりたい。

 

技術面はもちろんですが、常に自身の内面に目を向け続けようと思います。

 

 

 

 

 

 

思ってたのと違ったこと

 

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