対面
アポを取った社長と対面。まずは軽く挨拶。穏やかな表情と、柔らかな物腰。それでいて伝わってくるのは……熱気?年齢は近いんだけれど、圧倒的な差を感じる。ニートと若社長、当然と言えば当然か。雑談を切り上げたのは社長、いよいよ本題に入る。完璧に主導権を握られている。十分な準備をせずに旅行を楽しんだ自分を後悔しても後の祭り。とてもじゃないけど、有利な条件に持ち込める雰囲気じゃない。既に敗色濃厚、後は上手く事後処理をしなければいけない。断り文句をあれこれ考えながら、教科書の中身を見せてもらう。教科書に非を見つけようとしたけれども、見当たらない。本格的な素晴らしい教科書。出来る事なら借りたいと思ったところで、社長の「いかがですか?」の声。咄嗟に「素晴らしいです」と言ってしまった…。これはいけない。完全に駆け引きに負けた。商品を褒めてその商品を買わないのは、アパレルショップではありがちでも、一対一の商談では厳しい。すかさず社長が値段を提示してくる。「10冊まで無料、以後1冊ごと1,500円」との事。破格…!本屋で買うよりも安い。聞けば、自分が起業したての頃は苦労したからと見ず知らずの私を応援してくれるという僥倖。帰り際、関東から一人で商談に来るなんて大したものだみたいな事を言われて、きっと将来成功するよと、まぁ社交辞令なんだけれども声をかけられた。無事商談が成立した安堵感と、好意に応えなければいけないというプレッシャー。心地よい充実感に浸りながら帰りの新幹線でブログを書き込む。