今世紀になってから「脳科学」という言葉が認知されだした。

脳科学の源流は神経学(Neurology)で精神神経学と紛らわしいので、

日本では神経内科学、そして現在の脳神経内科学という名前も使われるようになった。

 

神経学が発見した、脳についての一番大きなことは、

脳の機能には局在性があること

 

一次感覚野は後頭葉の内側にあるとか、聴覚は側頭葉のウエルニッケ野にあるとか、

感覚情報を統処理するのは大脳の頭頂連合野にあり、左右の脳に機能差があること。

その他、運動機能、言語、意欲、情動、記憶の形成に関する脳の機能の局在性の事項

は膨大な量に及ぶ。

それらの局在性の知識は、主に、神経症状をかかえた患者の病理解剖から得られていた。

 

その後、脳外科医も関与して、

ペンフィールドによる「脳のホムンクルス」の偉大な発見もあった。

 

そして、1972年にCTスキャン、その後、SPECT、PET、MRI、赤外線トポグラフィー、

さらには脳波や脳磁図のスペクトル解析などの研究開発などにより、

大雑把な情動・行動なども含めての、脳機能の局在性の「知見」は増えていった。

 

20世紀が終わるころに開発された、機能的MRI( fMRI)多大な影響をもたらした。

脳(こころ)の様々な現象の、比較的空間的解像力の高い計測が可能となった。

そして、情報処理工学、実験心理学、生化学的な発見と分析手法の進歩、

それらが統合化されて、現在の脳科学は確立した。

 

脳機能を計測するには二つの要素が重要になる。

ひとつは「時間的解像力」

これは、電気生理学的な手法がすぐれている。

もうひとつは「空間的解像力」

これは、様々な画像診断学の手法が優れている。

 

そして、情報工学のもたらしたものは、脳機能のモデル化。

その最先端にあるのがAI。

 

 

脳科学についての概略はこんなもの。

ネットでも書店にでも、脳科学、そして脳科学を基にしたという「How To」本も溢れている。

 

 

このような「脳科学」の現状に、次第にギモンが沸いてきた。

脳科学で計測しているのは、結局は脳機能の「影」であって本態ではない。

AIの進歩は人間のこころの能力を真似しているだけ。

AIは情やら追求心やら苦しみとか、さらには意識は獲得できるのか?

 

脳科学は「影」と情報工学理論的仮説に振りまさせれてはいないのではないか。

 

もっと真のこころの働きを、自身での方法(多分に直感的)で思考してみた。

行けるところまで行ったら「壁」があり、その向こうを探るのは自身の皮を剥ぐようなもの。

 

それが「こころのマトリックス」