前回に続き、こちらも少し古くなりますが、昨年12月3日の衆議院・環境委員会にて伊藤信太郎が質問に立った際の議事録を掲載致します。

 

2019年12月3日

衆議院・環境委員会 議事録

 

(伊藤信太郎)

 自由民主党の伊藤信太郎でございます。

 どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、台風十九号の災害廃棄物の処理に関する政府の対応についてお伺いしたいと思います。

 被災自治体から十二月十三日に災害報告書が環境省に提出される予定となっているわけであります。それをもとに、年明けの一月から二月に災害査定が行われるものと聞いております。

 この報告書では、災害廃棄物処理に係る諸経費の積算額と処理方法についての記載が求められておりますが、今回の台風被害では、稲わらを始めとして災害廃棄物が膨大であるために、現時点でもまだ処理先が未定であったり、処理に要する期間が見通せない部分が多分にございます。

 そのような中で、環境省は、災害査定後の補助対象経費の増額や処理方法の変更は基本的には認めないという方針のようであります。しかし、現時点では、自治体として、見込みで諸経費や処理方法を記載するしかない場合がございます。査定後に総経費や処理方法が結果的に変わってくる場合があると思うわけでありますけれども、そうした状況変化に柔軟に対応する用意があるのか、お聞きしたいと思います。

 

 

(山本昌宏政府参考人)

 お答えいたします。

 御指摘のありました環境省の災害等廃棄物処理事業費補助金による財政支援についてでございますが、当然、御指摘のように、さまざまな状況で見通せない部分もあるということでありまして、まず、事前に、災害報告書作成の段階から事前の説明会あるいは個別の相談に応じて丁寧に対応する。それから、災害査定後におきましても、事情の変更があった際には、交付要綱、実施要領に基づき変更手続を行っております。

 このように柔軟に対応することによりまして、被災地のニーズに寄り添って、しっかりきめ細かな支援を行ってまいります。

 

 

(伊藤信太郎)

 災害廃棄物の中でも特に稲わら、これは非常に膨大な量であり、各自治体が通常活用している一般廃棄物処理施設の処理量を大きく上回っております。このため、通常の処理圏域を越えて処理することが必要となっているかと思われます。そのような場合に、各自治体間で集積場所や処理施設をめぐって混乱が起きないように、国が調整し、交渉などにかかわっていくことが必要となるわけであります。その役割を国が十分に果たすようにお願いしたいと思いますが、その準備はいかがでしょうか。

 

 

(山本昌宏政府参考人)

 御指摘の点につきましては、国の役割としては大変重要だと思っています。

 具体的に、環境省では、支援自治体や関係機関と連携して、施設における受入れ可能量とか受入れ条件などの情報を整理した上で受入先のマッチングをする、こういったことで広域処理の調整、支援を行っております。

 その結果、例えば、宮城県の大崎市の災害廃棄物である被災した稲わらについては岩手県のセメント工場への搬出を実施するなどの広域処理が着実に進展しているところでございます。

 引き続き全力で取り組んでまいりたいと考えております。

 

 

(伊藤信太郎)

 今回の台風十九号では、地域によってですけれども、数時間で二カ月分の降雨量の集中豪雨ということで、河川の氾濫、堤防決壊が各所であり、甚大な被害をもたらしました。このように、最近では、気候変動、地球温暖化の影響により世界じゅうで自然災害が頻発しています。

 気象現象の激甚化、極端化が進み、強風、竜巻、熱波、猛暑、極寒、豪雪、豪雨、干ばつ、海水面の上昇が起こっています。生態系の破壊、この危機をもたらす気候変動、地球温暖化は、まさに人類に存亡の危機をもたらすと言っても過言ではないと思います。十八世紀半ばから始まった産業革命以来、増加を続けるCO2の排出量、その累積排出量と世界平均気温の上昇はほぼ正比例の関係にあることが明らかとなっています。

 また、資料一をごらんいただきたいんですけれども、世界の温室効果ガスはGDPと人口増加に伴ってふえており、化石燃料によるCO2排出量の増加が主な原因となっているとされています。

 環境省として、気候変動、地球温暖化、自然災害激甚化のメカニズムについてどのような見解をお持ちかをお伺いしたいと思います。

 

 

(小泉進次郎環境大臣)

 伊藤先生から御指摘いただきました気候変動と、また、人為的な要因等の御指摘でありますが、今、気候変動に関する知見を集積、公表している政府間組織であるIPCCによれば、将来、気温上昇に伴って、台風等の熱帯低気圧、大雨等の極端現象の強度が増大すると予測をされています。気象庁の観測データでも、大雨の発生回数増加に気候変動が影響している可能性が示唆をされています。

 気温上昇の主要因は人為起源の温室効果ガス濃度の増加でありまして、先生が御指摘のとおり、世界的に見て、経済成長及び人口増加に伴って温室効果ガス排出量も増加してきておりまして、IPCCからもそのような報告がされています。

 一方、日本では、近年、人口が減少傾向にあるものの、二〇一三年度から二〇一八年度の速報値で、GDPの増加傾向を保ちつつ、温室効果ガス排出量の五年連続減少を実現をしています。このような経済成長と気候変動対策の両立を一層世界的に進めるべく、国内のさらなる取組推進に加え、国際的に連携した削減取組が不可欠であると考えています。

 

 

(伊藤信太郎)

 日本では、二〇一五年のUNFCCCで合意されたパリ協定を批准しているわけでありますが、この協定では、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて二・〇度より低く保ち、一・五度内に抑える努力をし、できる限り早く世界の温室効果ガスの排出量をピークアウトし、二十一世紀前半には温室効果ガスの排出量と森林などによる吸収のバランスをとることが長期目標として掲げられているわけであります。

 ここで出てきた一・五度Cの根拠、二・〇度Cの根拠、これについて、IPCCの作業状況を踏まえて御説明いただきたいと思いますし、そして、この目標と、二〇一五年、国連サミットで採択されたSDGsとはどう融合し、立体的に組み合わせるのかを御説明いただきたいと存じます。

 

 

(小泉進次郎環境大臣)

 今、伊藤委員からは、気候変動の取組、一・五度、二・〇、そしてSDGs、これとの関係性というお話がありましたが、気候変動問題を、経済的、社会的課題解決へのシナジーを追求しながら取り組むことでSDGsの達成につなげていく、最近、気候変動掛けるXという形で表現をしていますが、こういったことが重要だと認識を持っています。

 パリ協定では、世界共通の長期目標として、工業化前からの平均気温の上昇を二度より十分下方に保持し、一・五度に抑える努力を追求するとしています。IPCCは、このパリ協定の長期目標を受け、一・五度と二度との影響の違いについての知見を取りまとめた一・五度特別報告書を公表しています。この報告書では、さまざまな気候変動対策が多くのSDGsとのシナジー効果やトレードオフがあり得ることも指摘しています。

 こうしたIPCCの指摘を踏まえれば、我が国の気候変動対策は、経済的、社会的課題解決とのシナジーを追求しながら取り組むことにより、SDGsの達成につなげていくことが重要だと考えています。

 まさに気候変動掛けるX、この例として三つ短く御紹介をすれば、サーキュラーエコノミー、循環型経済でありますが、サーキュラーエコノミーとのシナジーがあります。

 サーキュラーエコノミーは、スリーR、すなわちリデュース、リユース、リサイクル、サーキュラーエコノミーの実現に向けて、スリーRなど日本の政策や技術をアジア、アフリカ、そして世界と共有していきます。そして、来年六月ごろに、世界経済フォーラム、これはダボス会議を主催をしている会でありますけれども、ダボス会議の世界経済フォーラムと共催をして、循環経済ビジネスフォーラム、これは通称CE、サーキュラーエコノミーでCEダボスという形を言っております、このCEダボスを東京で開催する予定でもありますので、こういったこともしっかりと世界に取組を発信をしていきたいと思います。

 また、バイオ素材への代替の加速化などによりまして、海洋プラスチックごみ問題解決とのシナジーも追求していきます。

 日本は、G20の議長国として、大阪ブルー・オーシャン・ビジョンをまとめました。二〇五〇年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにまで削減することを目指すという大変野心的なビジョンを掲げていますので、その実施枠組みを、COP25、来週、国会が許せば私も参加する予定でありますが、この機会を活用して世界各国に呼びかけて、G20にとどまらない、G20以外の国々にも参加を呼びかけていきたいと思っております。

 そして、分散型エネルギーを公共施設や地域に導入することにより、気候行動と防災とのシナジー、気候変動掛ける防災と表現をしていますが、これも追求をしていきたいと思います。生態系を活用した防災、減災も進めて、気候行動、防災、生物多様性のシナジーを追求をしていく、実現を図ることも、気候変動とSDGs、こういった関係性もあると私は考えております。

 

 

(伊藤信太郎)

 資料二をごらんいただきながら、今一部もう大臣にお答えいただいたわけでありますけれども、この目標達成には内政と外交のリンケージが必要だと思います。今一部お答えいただきましたけれども、更に追加があればお知らせ願いたいと思います。

 日本は、国内においてどのような国内政策とロードマップを持っているのか、そしてまた、国際場裏において日本はどのようなスタンスで臨むのかをお伺いしたいと思います。内政と外交のリンケージによって目標達成を日本としてはどう進めるかを、先ほどの補足説明を含めて御回答願いたいと思います。

 

 

(小泉進次郎環境大臣)

 今、伊藤先生から、資料二を示されながら御質問をいただきました。この資料二が示しているとおり、中国が最大の排出国でもあります。私は、先週、北九州市で行われました日中韓環境大臣会合に出席をして、その場でも、中国の気候変動、そして海洋プラスチックごみ対策における前向きな取組を引き出すということの一つの成果はあったと思います。

 日本独自でやらなければいけないことは必ずやらなければいけません。それは、ことしの六月に長期ビジョンとして掲げた脱炭素社会の実現、こういったことにもあらわれておりますし、私としては、今世紀後半のできる限り早く脱炭素社会を実現をするというのは、二〇五一年も含むという表現をしておりますが、こういった意欲でこの脱炭素社会の実現をしっかりしていく。そして、G7の中でもカーボンニュートラルを長期戦略の中に入れているのは日本のみでありますので、こういったことは、しっかりと国内対策を一つ一つ進めていく形で実現をしたいと思います。

 徹底した省エネ、再エネの主力電源化、そしてさらに、イノベーションも必要ですので、CO2を回収して有効利用、貯留することのCCUSとか、こういったことも社会実装を進めていくためにさらなる支援をしていきたいと思いますし、先生がおっしゃった国際社会での内政と外交のリンケージ、こういったことでいえば、先ほどの中国など、またアメリカもそうですが、大きな排出をしている主要な国々の前向きな関与をいかに引き出すかということも大事であります。そして、私が大臣に就任して以降、炭素中立性連合への参加表明もしました。

 こういった中で、世界の中で日本が、気候変動、脱炭素化に向けた取組を一つ一つ着実に進めていって、パリ協定の長期目標の実現に国際社会とともに貢献をしていく、こういったことをしっかりと進めていきたいと思いますので、来週、パリ協定の実現に向けて残された宿題、六条という交渉課題が残っているCOP25でありますが、その場を活用しても、日本の内政での、国内での取組、そして国際社会とともに取り組んでいく取組、双方についてしっかりと発信をしてまいりたいと考えています。

 

 

(伊藤信太郎)

 ぜひ戦略的に進めていただきたいと思います。

 海洋プラスチックの問題をお伺いしたいと思います。

 この海洋のプラスチック汚染というのは大変深刻だと思います。

 資料三をごらんいただきながらお聞きいただきたいと思いますけれども、とりわけ五ミリ以下のマイクロプラスチックは、食物連鎖に取り込まれ、生態系に及ぼす影響というものが懸念されているわけでございます。

 世界経済フォーラムが二〇一六年一月に発表したレポートによると、二〇五〇年までに海洋に投棄されるプラスチックが重量ベースで海洋生物の量を超えるとしています。環境省として、この推量にどのような見解を持っていますか。そしてまた、ジョージア大学のジャムベック教授のレポートによると、最大の排出国は中国で二位がインドネシア、日本は三十位となっています。

 この海洋汚染に関して政府はどのような調査をし、どのようなデータを今持っているのか、また、それらを総括してどのような見解を持っているかを教えていただきたいと思います。

 

 

(小野洋政府参考人)

 まず、事実関係について私の方からお答えしたいと思います。

 委員御指摘ございました世界経済フォーラムの推計、それから、ジャムベック教授による海洋プラスチックごみの流出量の推計についてでございますが、国際的にまだ合意された推計がないという中で、海洋プラスチック問題のいわば地球規模の大まかな実情を理解するという上で非常に参考になる有意義な推計であると認識しております。

 海洋プラスチックごみの発生分布の実態把握についてでございますが、環境省におきましては、漂着ごみ、漂流ごみ及び海底ごみのサンプル調査を日本各地で実施しておりまして、ごみの量、それからその中に占めるプラスチックの割合などのデータを蓄積してきているところでございます。

 さらに、環境省といたしましては、海洋プラスチックごみの発生源や流出量につきましても、今後推計を取りまとめる作業を進めていく方針でございまして、こうした取組により、海洋プラスチックごみに関する科学的知見を集積してまいりたいと考えております。

 

 

(小泉進次郎環境大臣)

 今、事実関係の方は局長の方からもお話がありましたが、私、この問題は大変深刻だし、日本は、大阪ブルー・オーシャン・ビジョンを主導した国として、引き続きリードし続けていかなければならない課題だと思っています。

 私、最近いろいろな場で講演をするときに使っているのは、あのナショナルジオグラフィックの動画です。この動画は、亀が鼻の中にプラスチックストローが入ってしまっていて、それを引き抜くのに、もう本当に亀が痛そうに、ああ、こんなに亀って痛そうにするんだ、こう人が押さえて、もう泣き叫ぶようなあの映像というのは本当に胸が痛みます。

 そして、このまま放置をすれば、二〇五〇年には海の中が魚よりもプラスチックごみの方が多くなるという、ちょっと考えられないような、そういったことを受けますと、やはり行動しなければいけないし、そして、二一〇〇年に、このままいけば何と日本の九割の砂浜がなくなる、こういった予測がある中で、特に私は生まれ育ったのが海に囲まれた横須賀という町なので、来月私も子供が生まれる予定ですが、将来の自分の子供は砂浜のない横須賀を見るのか、そう考えると、そんな未来を残したくないな、本当にそういうふうに思います。

 ですので、せっかく日本が野心的な、二〇五〇年追加汚染ゼロ、こういう目標を掲げることに成功してG20を巻き込んだわけですから、引き続き、リード国として確立した存在感を示し続けるような取組が国家全体でも国民レベルでも不可欠なことだと考えています。

 

 

(伊藤信太郎)

 内閣府が提唱しているソサエティー五・〇については、環境省はどのような見解を持っているか、そして、この提唱は環境問題の解決にどのように結びつくと考えているのかをお尋ねしたいと思います。

 

 

(佐藤ゆかり環境副大臣)

 ソサエティー五・〇と環境問題の関係についてお尋ねをいただきました。

 まず、ソサエティー四・〇でございますけれども、クラウド上のデータを人間が解析をして価値を生み出すものに対して、ソサエティー五・〇では、クラウド上のビッグデータをAIが解析をし、AI、IoTが相互連携をして価値を生み出す社会であるというふうに認識をいたしております。

 第五期科学技術基本計画におきまして、我が国が目指すべき未来社会の姿として、これを閣議決定しているところでございます。

 具体的に環境分野で申しますと、温室効果ガスの排出量や吸収量の分布データをAIが解析することによって、気候変動の予見性を高め、そしてまた、適応能力を向上させることによって、人間による解析の時間的制約からも解放されるということでございます。これは、よりスピーディーな温室効果ガスの削減などの環境問題の解決にも密接にかかわってくるものと考えております。

 環境省では、具体化に向けた取組の一つといたしまして、「気候変動×デジタル」プロジェクトというものを立ち上げまして、先日、十一月二十八日、第一弾の検討の方向性を発表したところでございます。

 具体的には、ブロックチェーン技術などのデジタル技術をJクレジット制度に活用しまして、中小企業や家庭で自家消費される再エネのCO2削減によって創出されました環境価値のこの取引を通じて、環境投資のコスト回収を容易にしていく。こうしてオール・ジャパンかつリアルタイムで全員参加型のクレジット取引を促進して、さらなる削減活動への意識向上と行動促進を目指していくということにしております。

 この検討の結果につきましては、来春をめどに本プロジェクトの成果として取りまとめまして、ソサエティー五・〇の実現も視野に、来年六月に策定予定の成長戦略に反映してまいりたいと考えております。

 

 

(伊藤信太郎)

 これで質問を終わります。ありがとうございました。

 

(了)