新型コロナ感染症の問題で遠隔教育の重要性が高まりました。PISA(国際学習到達度テスト)の調査によると日本の学校でのICTの使用頻度はOECD諸国の中で最下位に属します。他方、数学的リテラシーは1位、読解力は11位です。1人1台端末により子供たち1人1人の反応を踏まえ教育的ニーズ・理解度に応じたきめ細かな指導が可能になります。また子供たちが情報の編集を経験しつつ多様な意見にも触れることもできるようになります。問題は今デジタル技術を使いこなし効果的に授業をおこなうことができる教員がどれくらいいるかということです。デジタル技術を活用した教授法を学ぶ教員再研修(ファカルティ・デベロップメント)が必要です。将来的には教員免許のあり方も再考する必要があります。またデジタル教科書は単に紙の教科書をデジタル化するものではなくデジタルの特性と利点を活かしたものにする必要があります。多言語化、音声出力、点字表示、動画挿入、参考資料へのリンク等々いろいろな可能性があります。遠隔教育を真に活用できるようにするにはハードとソフトの戦略的開発が不可欠です。同時に考えなければならないのはやはり対面学習の意義です。コンピュータ画面とスピーカーから出てくる音だけでは学べないものが学校という「場」における教育にあります。教育の目的は単に知識の習得や知恵の醸成や問題解決能力の向上だけではないと思います。人が人として幸せに人生を全うすることのできる人間形成を目指す全人教育が本来の目的だと考えます。

 

伊藤信太郎