スーパー店舗で床に落ちていた天ぷらを踏んで転倒 | 弁護士伊藤友哉のブログ

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報道によると,スーパーマーケットの店舗で,買い物客が,床に落ちていた総菜の天ぷらを踏み,転倒しケガをしたケースで,
東京地裁は,12月8日,店側に安全管理の義務違反があったとして賠償責任があるとする判決を下したようです。
もっとも,転倒した客にも過失があったとして,一部を過失相殺したようです。

この判決をネットニュースで見たところ,コメント欄には店舗側の責任を認めた判決への批判が数多くみられました。
店側が天ぷらを落としたわけではないのに,店側の責任を認めた裁判所の判断への疑問を感じたのでしょう。

ところで,ショッピングセンター内のアイスクリームショップ(判決内容からは,注文に応じてショーケースからコーン等にアイスを乗せる店舗形態と思われる。)付近で,客の誰かが落としたアイスクリームを他の客が踏んで転倒したケースで,
店側の責任を肯定し,また,転倒した客側にも過失があったとして,店側と客側の責任を8対2とした岡山地裁平成25年3月14日判決があります。
今回12月8日の東京地裁の判決も,この岡山地裁の判決と似たような事実認定,同じような法的枠組みをとったものと推察します。


今回の東京地裁の事例では,
産経新聞オンライン版(2020.12.8)によると,
『店側は「例外的なケースで,対策の義務はない」と主張したが,裁判官は,客が総菜をパックに詰める販売方法は,運ぶ途中に落とすことも十分想定されると指摘。「従業員による安全確認を徹底する義務があったのに,落ちたままの状態にして事故を生じさせた」と退けた。』
とあります(店舗名などは伏せます)。

また,時事通信のJIJI.COMの記事の見出しでは
『天ぷら床放置、安全義務違反 店に賠償命令―東京地裁』
となっています(店舗名は伏せます。)。

これら記事からすると,店側は過失を争ったのに対し,裁判所は総菜が落ちたままである(一定程度の時間,床に落ちたまま放置されていた)という事実認定をし,この「落ちたまま放置」という事実を重要視して店側の過失を肯定したものと思われます。

このような「落ちたまま放置」と裁判所が認定したケースで店側が争ったということは,店側にもそれなりの言い分があるのでは?と思いますので,今回の裁判例全文が判例集に掲載されたら検討します。
(例えば,店側は,頻回に巡回をしており,総菜が落ちてから転倒までの時間が短く回避できなかったと事実を争ったが,裁判所がそれと異なる事実認定をした,など)


さて,前掲の岡山地裁平成25年3月14日判決から伺える教訓です。

(1)店側が注意すること
   店舗を運営する側としては,以下のようにして本件売場付近の通路の床面にアイスクリームが落下した状況が生じないようにすべき。
   ①アイスクリーム売場で購入したアイスを飲食するスペースを設けて購入客を誘導し,他の客の動線と分ける,
   ②清掃をこまめにおこなう,
   ③従業員による売場周辺の巡回を強化する。
  

(2)客側が注意すること
   足元への注意を払う。