【前回までのあらすじ】
結婚し、二か月前に子供を産んだばかりの女性に
夫の浮気調査を依頼された私は
すぐに夫の不倫をつかんだ。
そして夫には3人の愛人と合計5人の子供がいることが明らかになった。
すべての報告を終え
この案件について忘れかけていたころに
知り合いの探偵から紹介されて
一人の男性がうちの事務所を訪ねてきた。
その男性は例の夫だった。
男性の依頼を簡単に説明すると
子供を残して失踪した妻を探してほしいとのことだった。
なぜ妻がいなくなったかについて、男性は一言も触れなかった。
失踪時の状況はまるで神隠し。
夕方に夫が帰宅すると、たたみ途中の洗濯物のそばのベビーベッドで
赤ん坊が泣いていた。おむつは替えられてなかったが
新しいおむつがそばにおいてあった。
その夜から妻が見つからないと言った。
警察に失踪届を出して2か月、妻が失踪してからは2か月半と言った。
事務所から女性を見送ったのがちょうど3か月前。
女性は夫の浮気と不倫を知ってから2週間たって蒸発したことになる。
僕はまずこの2週間に注目した。
探偵が行方不明者を探すときは、ある程度決まった方法があるのだが
その方法は既に知り合いの探偵があれこれとやりつくした後だったので、
僕は2週間の彼女の動向をすべて明らかにすることにした。
近所への聞き込みを行っていくにあたって
いろいろとあきらかになってきた。
まず、彼女の失踪したこととその原因については
近所では周知の事実として広く知られていること。
彼女が失踪する前から、夫についての悪い噂は広まっていたこと。
肝心の2週間についても、普段どおりに買い物をしたり
新米ママ仲間と集まってお茶会をしていたこと。
なにか変った行動は一切つかめなかった。
彼女は夫の不倫を知ってからも、知る前と全く同じ生活を
2週間おくっていた。
調査は暗礁に乗り上げた。
事件は考えにくい。
どこかに身を隠しているということもなさそうだ。
大体身を隠しても意味がない。
こうなれば探偵は手も足もでない。
つまり自殺の可能性が高いということだ。
調査の続行が難しいことを男性に伝え、調査を打ち切った。
彼女の両親からは、お金は出し続けるので調査を続けてほしいと言われたが
お金をどぶに捨てるようなものなのでということで断った。
この案件が結末を迎えたのはそれからさらに9か月後。
とある夕刊の記事だった。
「自殺か。x月x日午後x時頃、首つり用とみられるビニール紐のそばで、身元不明の白骨女性見つかる。所持品なし。」
その記事の中に
「未使用のおむつが数枚とサンダルが片方のみ見つかった」
という部分を見て、いやな胸騒ぎがした。場所をみると
遺体が発見されたのは彼女の自宅から2kmのところにある竹林の中だった。
所轄の警察署に連絡をして事情を話した。
警察から夫に連絡がいき、遺体の衣服と失踪当時の女性の衣服が一致し
そばにおちていたおむつも、家にあるおむつと同じものであることがわかった。
そして、歯型から遺体がその女性であることが確認された。
死因は自殺。高いところから一気に首つりをしたらしく、首の骨が折れていたとのことだった。
箱入り娘として育てられ、美人と評判だった女性。
信じていたはずの夫の裏切り、それもすさまじい裏切りを知ってから2週間
いつものように生活をしていた女性。どのような気分だったのだろうか。
何も知らなかったことにしようとしたのか。
それとも
すべてを受け入れて我慢しようとしたのか。
おむつを替えてくれと、せがんで泣くわが子をみて
袋からおむつを取り出し、いざ替えようとしたその時
女性の中で何かが限界を迎えたのか。
彼女はなにもかも残して
死ぬことを選択した。
新しいおむつを手に持ったまま
部屋を出て、ビニール紐を取り出し、玄関をでて、サンダルで2km歩いた。
ガードレールを越えて竹林の中を200mも歩いた。
そして、首をつって、死んだ。
探偵は一体何ができるのだろうか。
ただ真実を知りたい、その人の心に付け込んで
お金を巻き上げるだけなのか。
真実は時に人を殺す。
探偵に必要なのは覚悟だ。
この一件があったあとの僕は、
なんというか、探偵という職業への幻想が消えたかわりに
なにか執着のようなものが生まれた。
あの女性の事を思い出すたびに、もう戻れないと痛感する。
とまぁ、この話はここで終わります。
探偵には守秘義務がありますので、ある程度設定等は
変えています。
しかし、とある依頼人が死んだのは事実で、
今日もぼくが探偵をやっているのも相変わらず事実です。
結婚し、二か月前に子供を産んだばかりの女性に
夫の浮気調査を依頼された私は
すぐに夫の不倫をつかんだ。
そして夫には3人の愛人と合計5人の子供がいることが明らかになった。
すべての報告を終え
この案件について忘れかけていたころに
知り合いの探偵から紹介されて
一人の男性がうちの事務所を訪ねてきた。
その男性は例の夫だった。
男性の依頼を簡単に説明すると
子供を残して失踪した妻を探してほしいとのことだった。
なぜ妻がいなくなったかについて、男性は一言も触れなかった。
失踪時の状況はまるで神隠し。
夕方に夫が帰宅すると、たたみ途中の洗濯物のそばのベビーベッドで
赤ん坊が泣いていた。おむつは替えられてなかったが
新しいおむつがそばにおいてあった。
その夜から妻が見つからないと言った。
警察に失踪届を出して2か月、妻が失踪してからは2か月半と言った。
事務所から女性を見送ったのがちょうど3か月前。
女性は夫の浮気と不倫を知ってから2週間たって蒸発したことになる。
僕はまずこの2週間に注目した。
探偵が行方不明者を探すときは、ある程度決まった方法があるのだが
その方法は既に知り合いの探偵があれこれとやりつくした後だったので、
僕は2週間の彼女の動向をすべて明らかにすることにした。
近所への聞き込みを行っていくにあたって
いろいろとあきらかになってきた。
まず、彼女の失踪したこととその原因については
近所では周知の事実として広く知られていること。
彼女が失踪する前から、夫についての悪い噂は広まっていたこと。
肝心の2週間についても、普段どおりに買い物をしたり
新米ママ仲間と集まってお茶会をしていたこと。
なにか変った行動は一切つかめなかった。
彼女は夫の不倫を知ってからも、知る前と全く同じ生活を
2週間おくっていた。
調査は暗礁に乗り上げた。
事件は考えにくい。
どこかに身を隠しているということもなさそうだ。
大体身を隠しても意味がない。
こうなれば探偵は手も足もでない。
つまり自殺の可能性が高いということだ。
調査の続行が難しいことを男性に伝え、調査を打ち切った。
彼女の両親からは、お金は出し続けるので調査を続けてほしいと言われたが
お金をどぶに捨てるようなものなのでということで断った。
この案件が結末を迎えたのはそれからさらに9か月後。
とある夕刊の記事だった。
「自殺か。x月x日午後x時頃、首つり用とみられるビニール紐のそばで、身元不明の白骨女性見つかる。所持品なし。」
その記事の中に
「未使用のおむつが数枚とサンダルが片方のみ見つかった」
という部分を見て、いやな胸騒ぎがした。場所をみると
遺体が発見されたのは彼女の自宅から2kmのところにある竹林の中だった。
所轄の警察署に連絡をして事情を話した。
警察から夫に連絡がいき、遺体の衣服と失踪当時の女性の衣服が一致し
そばにおちていたおむつも、家にあるおむつと同じものであることがわかった。
そして、歯型から遺体がその女性であることが確認された。
死因は自殺。高いところから一気に首つりをしたらしく、首の骨が折れていたとのことだった。
箱入り娘として育てられ、美人と評判だった女性。
信じていたはずの夫の裏切り、それもすさまじい裏切りを知ってから2週間
いつものように生活をしていた女性。どのような気分だったのだろうか。
何も知らなかったことにしようとしたのか。
それとも
すべてを受け入れて我慢しようとしたのか。
おむつを替えてくれと、せがんで泣くわが子をみて
袋からおむつを取り出し、いざ替えようとしたその時
女性の中で何かが限界を迎えたのか。
彼女はなにもかも残して
死ぬことを選択した。
新しいおむつを手に持ったまま
部屋を出て、ビニール紐を取り出し、玄関をでて、サンダルで2km歩いた。
ガードレールを越えて竹林の中を200mも歩いた。
そして、首をつって、死んだ。
探偵は一体何ができるのだろうか。
ただ真実を知りたい、その人の心に付け込んで
お金を巻き上げるだけなのか。
真実は時に人を殺す。
探偵に必要なのは覚悟だ。
この一件があったあとの僕は、
なんというか、探偵という職業への幻想が消えたかわりに
なにか執着のようなものが生まれた。
あの女性の事を思い出すたびに、もう戻れないと痛感する。
とまぁ、この話はここで終わります。
探偵には守秘義務がありますので、ある程度設定等は
変えています。
しかし、とある依頼人が死んだのは事実で、
今日もぼくが探偵をやっているのも相変わらず事実です。

