国立劇場のバックステージツアーに参加してきました。(7月27日)
東京三宅坂にある国立劇場で、役者さんや関係者しか入れない舞台や楽屋

を見て回る2時間ぐらいの見学会に参加してきました。
 ここの劇場は名称通り国立の劇場で日本の伝統芸能を保存・育成していて「あぜくら会」という会員サークルがあり、今回は会員のための催しで、抽選なぞ当たったことのない小生が運よく当たったので参加してきました。
 (最近国立競技場とか中を見せることが流行っていて且つ人気があるのですね)


 歌舞伎をご覧になったことがりますか。
是非一度ご覧になってください。いきなりお金のことを言ってはナンですが、歌舞伎座などは高くイチバン安い所でも3千円もしますが、ここは1500円です。この値段で4時間も楽しめる娯楽はそん所そこらにはありません。


 一期一会流歌舞伎の魅力を語ります。
歌舞伎「劇」にはいろいろな種類、いわゆる荒事・和事などありますが、
①まず第一に舞台が綺麗!あでやか!楽しい!です。

  舞台が大きく、派手なしかけ(舞台装置)に派手な色彩。それに全体の配色や役柄を考慮した役者の着物のあでやかな事。1枚ウン千万する着物だそうですが。

 「京鹿子娘道成寺」という踊りではお姫さまから町娘に変っていくとき舞台上で且つ踊りながら衣装が7回ぐらい変わっていく(引き抜き)演出など見事です。
②筋がムチャクチャで複雑怪奇。それでいて「深刻」

 江戸庶民が純粋に楽しめるように、アッチの楽しい筋、コッチの面白い事、アレもコレも折込み、くっつけて、とにかく楽しめればいいという芝居もあれば(こういう芝居は主人公始めみんな役柄が実は○○、実は○○と変わっていって筋はハチャメチャで最後はめでたし、めでたしで終わる)

 そんなお芝居もあれば一方で深刻な、主従関係と親子関係の間で悩み自分の子供を殺めるとか、親が自殺する話とか市井の人が浮気と義理のはざまで心中するとか(近松など)ドロドロした人間世界での生き方、死に方の問題を扱ったシェークスピアに劣らぬ劇があります。

 もちろん、親子の情、恋人同士の情を扱い、もう一歩で会えないことが重なリ続ける菊田一夫バリの物語もあります。

 「忠臣蔵」も忠臣からの仇討物語というだけではなく、その中の「お軽勘平」のところなどは、浅野家断絶のために貧しさから起因する親殺しや人情話が展開します。

 私は鶴屋南北が好きなのですが、社会派劇とでもいうのか、彼の作品には当時の社会情勢を折込み、人と人の関係や彼なりのメッセージを込めた作品が多いからです。そうそう、彼の書いたお岩さんの「四谷怪談」というのがありますよね。客を怖がらせるためにどうやってやるんだろうなと思わせる舞台の仕掛けもスゴイですが、この筋、忠臣蔵がその背景になっているんですよ。(ちゃんと時代背景とか、他の事とないまぜにしているわけです)民谷伊右衛門がお岩さんを殺めることになったのは、彼は浅野内匠頭(たくみのかみ)の筋の人でそのため浪人になり、貧しくなった事。そして持ち込まれた縁談がなんと吉良関係の娘さんという話になっています。吉良家への再就職を狙ったわけです。そのためお岩さんが邪魔になり・・・・
③男ばかりで演じられていることはご存知でしょうが、これが女以上に「女」なのです。「女」の極致デス。

 「藤娘」という舞台いっぱいに紫の藤の花をあしらった中での踊りがありますが、踊り半ばで気品の高いお嬢様から、藤の花の間から町娘の衣装に変ってあらわれ、しゃなりしゃなりとまず舞台の上手(かみて、観客からみて舞台右)へすすみ、観客に挨拶のお辞儀して、続いて下手(しもて、左手)でお辞儀、最後に舞台中央でお辞儀するのですが、3回のお辞儀をするシーンなど・・・・・一旦、観客をじーっと流し目で見つめた「間(ま)」のあと、しなしなとした身のこなしでお辞儀するそのタイミングと、所作(しょさ、動作)なぞおもわず私はゾクゾクして、うっとりして、骨がとろけてしまいそうです。!!
しかもコレ、80歳の中村芝翫(しかん、亡くなりましたが)が18歳ぐらいの町娘を演じ、踊っているのですよ。


 セリフや筋がむつかしいところもありますが、大丈夫。同時解説イヤホンがあります。私も使っています。


私の歌舞伎の観劇のウンチク、
 『大向」おおむこうというのをご存知でしょうか。
芝居を盛り上げるために、役者が演じている時「屋号」を3階席から大声で声をかける(叫ぶというか)のです。
私もその一員です。「音羽屋ァ!」「成田屋ァ!」「山城屋!!」・・・・・楽しいですヨ。(ちなみにこれらの屋号の代表的な役者は尾上菊五郎、市川団十郎、坂田藤十郎です)
 この掛け声がなければ芝居は淡々と進み、全然盛り上がらないし気合が入りません。味気ない歌舞伎になります。

 しかし近頃やたらと声をかける人が多くなって且つ花形役者が登場した

時と引っ込んだ時だけの掛け声が多くて、まるで出欠をとっているみたいで・・・・ダメなわけではないのですがセリフとセリフの間に間(ま)をとって声をかける人が少なくなって、七五調(とも限りませんが)の累々としたセリフの間、間に声を掛ける。これが醍醐味なんですね。うまくいったときは役者と一体になった感がします。ちょっとキザですが。
弁天小僧で「知らざーぁいって・(おとわやぁー)聞かせやしょう」という具合です。此の「・」の「間(ま)」で舞台が盛り上がり、気持ちよくまた難しいのです。この掛け声はなかなか勇気が要るし(1500人ぐらい観ていますから)センスが必要です。「間」が悪いとセリフも雰囲気も舞台も台無しになるのです。
 私もこの時の大向うは緊張します。特にテレビの録画中継撮りなどの時は一段と張り切って・・・・・
○×△÷□


 解説が長くなりましたが

 私は国立劇場で歌舞伎公演(6回/年)は必ず観に行きますが、いつも一番後ろの上手端っこ(3階11,12列席60番)が定席です。
 此の端っこ(写真)から声をかけるわけですが、それは舞台側からみたらどんな
になっているのだろう、そして、死ぬまでに一度は歌舞伎役者の踊りのバックで三味線を演奏してみたいというバカげた夢を見て舞台に立ったつもりでバックステージツアーに参加し見て回りました。


三宅坂の国立劇場です。(あぜくら造り風の外観です)












着到板(ちゃくとうばん)といって出勤簿みたいなものです。
役者が出勤すると自分の名前がj書かれ所へピンを刺します。





 ずらーっと楽屋が並んでいます。どーってことはありませんが、戸はありません。暖簾です。
 勿論幹部は一人一部屋(12畳でした)でその他大勢は大部屋、





楽屋通路、両側に部屋が並んでいます。    幹部(名題)が使う楽屋です   

                  




大部屋です


 長唄連中と書いてあります。右奥が長唄三味線方の楽屋です。私も

いつかこの部屋で緊張しながら出番を待っていることでしょう!
(この世では間に合いそうにもありませんが・・・・・・・)










驚いたのは、幹部の部屋でも大きくない事と化粧するための鏡台とか机とか関連する所帯道具一式は役者個人で芝居の度毎に持ち込むということです。

 




 花道からみた舞台です。歌舞伎の舞台は大きく、20×7mぐらいあります。普段見えているのは奥行10Mぐらいでしょうが、奥行きは27メートルあります。日本独自の廻り舞台にもまわりながら乗せてもらいました。勿論、奈落(ならく)の底へも・・・・・落ち?ました。




   



こちらの下が奈落の底








 観客席からみて舞台下手(左)に黒御簾(くろみす)といって鳴り物を演奏しバックミュージックを演奏する所(オーケストラボックスみたいなところです)があります。その内部です。簾がかかっていて客から内部はみえませんが、ここ内部からは舞台がよく見えます。芝居に合わせてバックミュージクを演奏します。私も長椅子に座ってみました。一度演奏してみたいなぁ!と思いながら





↓ここ 私の定席


 舞台からみた観客席です。左側の一番奥(11,12列60番)が私の定席、あそこに座って声をかけるのです。こうしてみると観客席からみると遠い舞台ですが、舞台側からみるとそんなに遠くないですね。役者からはうっすらと私が見えますね。坂東三津五郎さんは「あっ、いつもの白髪老人が来てるな」とわかってくれてるかもしれません。


 歌舞伎セリフ調で

              ブログご高覧ありがとう

              おいらもいつかは三味線で

              国立舞台に立ちてぇな

              それまでみなさまご機嫌よう

                   

                     ・・・・・・・(見得、みえ)



   拆(拍子木)チャ~ン!  ツアーのブログは  これにて幕!
        

          本日はお読みくださりありがとうございました