近頃の国会審議をみていると、日本維新の議員たちの“おかしな言動”が目につく。
いうまでもなく、国会審議は政府(首相や閣僚)に対して質問する場だが、彼らは、むしろ野党である民進党に向かって批判を浴びせることが“恒例”になっているのである。
そうした折り、さる4月11日に安倍政権は大阪・夢洲地域での「2025年大阪万博」を開催することを閣議了解した。4月中に博覧会国際事務局(BIE:本部・パリ)に正式に立候補の届け入れを行う予定だ。
これだけでも万々歳のはずだが、日本維新の議員たちはどうも不満が残ったらしい。
世耕弘成・経済産業大臣が4月14日の衆議院・経済産業委員会で、清水忠史氏(日本共産党)の質問に対して、「今回の万博はIR(カジノを含む統合リゾート)構想を前提としないで行っていく」と答弁したことに、その原因があるようだ。
清水氏によると、「大阪ではみんな(といっても主に政財界だが)カジノIRと一緒に万博ができると思っている」からだ。というか、そうせざるを得ない事情があるのだ。
たとえば、関経連の森会長は、「インフラ整備などを限られた時間でやろうとすれば、現実的には万博とIRをセットにしてやる方法しかない」と新聞紙上で語っている。2月15日に開かれた2回目の国際博覧会検討会においても経済界の委員から、「万博費用の負担を考えると、IRとできるだけセットに」という意見がでたそうだ。またIRの国際会議場施設で万博関連のシンポジウムをやろうと、まさに「一体運用の話も出てきている」という。
万博開催の経費は会場費、運営費等のほかに、夢洲会場が無人島なので地下鉄の延伸事業540億円が必要になる。輸送量アップのために車両を増やすので、その整備に100億円、合計で640億円かかる。
では、だれが負担するのか? が地元大阪では大問題に浮上している。
ところが、自民党大阪市会議員団の最新の市政報告では、「事業費負担の話どこへ行った」と問題を提議している。「万博、IR 1300億円では済まない」 「カジノ含めた万博開催に疑問」などの批判的なフレーズが踊っている。
もともと地下鉄事業はIR事業者が負担することになっていた。大阪市の吉村市長も「地下鉄はIR事業者にやっていただく」と、議会で答弁しているし、昨年12月2日の内閣委員会でカジノ解禁法が議論された際、清水氏の質問に法案提出者の日本維新の議員が、「当然、これは民間事業者が負担する」と答弁していた。
ところが今回、世耕大臣は万博単体でやると答弁したことで、「鉄道延伸事業も自治体負担、住民負担になってくる可能性が非常に高まってくる」と、清水氏はいう。たった半年間の開催のために、万博やりました、地下鉄通しました、そのあとはどうなるんですか? だれも明確に答えることができない。
夢洲は万博のあとは、第1期でやるカジノIRの成功が大きなカギを握る。つまり、IRの誘致が前提となって、2期、3期と跡地利用の計画が進むわけで、「だれがどう見てもカジノIRと万博の誘致は一体であるというのは明白だ」という。
大阪維新の機関誌?『維新ジャーナル』には、「インフラ整備も含めてIRと万博で相乗効果を生み出していこう」と報告されており、これは既定路線になっている。
しかし世耕大臣は、BIEに提出する招致提案書にも「(カジノIRと万博誘致一体の件は)記載することはありません」と、きっぱり否定した。維新の議員たちにとってはショックとしか言い様がない。
あれほど安倍自民に媚を売り、半面で野党・民進党にケチをつけてきたのに・・・、という籠池氏にも似た感情が溢れているのではないだろうか・・・?
ちなみに、今年3月1日に朝日新聞と朝日放送が大阪府民を対象に行った世論調査によると、大阪万博には62%が賛成だったが、IRの誘致には60%が反対している。「相反するものを一緒に持ってこようとすることが、府民の盛り上がりを阻害している最大の要因だと思う」と清水氏はいう。