一昨年5月から安保法制が参議院で採決される9月27日まで約5か月間、テレビ報道の内容を緻密にレポートした冊子を、30日の参議院・総務委員会で江崎孝氏(民進党・新緑風会)が提示した。、
市民団体「放送を語る会」が作成した、「安保法案 テレビ報道はどう伝えたか」という小冊子である。江崎氏はこれをもとに、「NHK『ニュースウオッチ9』が放送しなかった事項」(『報道ステーション』『NEWS23」との比較』)という資料を作成した。当時、安保法制は国論を二分する戦後稀に見る大論議があった。それを客観的に事実を記録した「表」である。
いくつか例を挙げてみよう――、
5月20日、ポツダム宣言について、安倍総理は「詳らかに読んでいない」と発言した。NHKニュースウオッチ9と比較する民放番組は報道ステーションとNEWS23だが、NHKニュースウオッチ9は報道していない。
6月1日 「【衆院特別委】日本に対して攻撃の意思のない国に対しても攻撃する可能性を排除しない」とする中谷防衛大臣の答弁。つまり、集団的自衛権の一端を述べたわけですが、これもNHKニュースウオッチ9は報道していない。
6月1日、「【衆院特別委】イスラム国」に対し有志連合などが行動する場合後方支援は法律的に可能との中谷大臣の答弁も、NHKニュースウオッチ9は報道しなかった。
・・・といった具合に、5カ月にわたってズラリと続いている。
江崎氏が、これに関して当時の放送局長である板野NHK専務理事に質問したとき、余り質問の趣旨を捉えていない表現で回答したそうだ。「ニュースや番組で使う言葉や表現につきましては、視聴者の分かりやすさなどを考慮して、現場が適切に判断して決めているところだと思っております。」
板野氏は、放送の内容を表現にすり替えている。上田NHK会長がいった「公共放送の在り方」からすると、この「表」にある当時のNHK報道の在り方について、「少々、国民のなかに不信感を抱いていたことは事実」と語った。
その上で、率直な感想を求められた上田良一参考人(NHK=日本放送協会会長)は、おおよそ次のように語った。
「NHKの依って立つところは国民、視聴者の信頼である、これが何よりも重要だと考えております。この信頼を得るためには報道機関として自主自立、不偏不党の立場を守り、公平公正を貫く。この姿勢を堅持していく。私は決意致しております。NHKは国際番組基準におきまして、政治上の諸問題は公正に取り扱う。意見が対立している公共の問題についてはできるだけ多くの角度から論点を明らかにし、公平に取り扱う、と定めております。こうした番組基準に則ってニュース、番組の制作と報道に当たっていくとを徹底させたいと考えております。」
上田NHK会長には就任間もないという事情もあるのだろうが、できれば自分の言葉で、かつもっと力強く、熱意を込めて公正な報道への決意を語ってほしかった。また、NHKニュースウオッチ9が、なぜ偏向した報道を行ったのか、第三者を入れて検証を行う必要があろう。
NHKニュースウオッチ9以外のNHKと民放のニュース番組も、いついかなる圧力を受けたり、知らずに偏向するか知れない。絶えず、圧力と闘い、いかなる権力にも屈しない堅固な意志と大勢を整えておくもとが求められる。
参考サイト: http://www.geocities.jp/hoso_katarukai/151125fuhyo1.pdf