あるはずの本がどこにもないことがある。いくら探してもない場合、奥さんに聞いてみる。「あ、それ段ボールに入れて送ったら、思ったよりも多いお金になったから売った」と答えが返ってくる。奥さんは私が最も大事にしている本はわかるようで、数ページしか読む必要のなかった本、専門誌などは、じぃーとタイミングをとり処分している。こういう人が家にいると本はかなりすっきりする。昔、立花隆さんとノーベル賞受賞者の分子生物学者利根川進さんの対談本ー「分子生物学はどこまで生命の謎を解けるか、精神と物質」(文春文庫1993)を読んだ時に、分子生物学というのはかなり荒っぽい学問なんだなと思った。だって、利根川先生は、”脳の働き、精神についても、いづれ生化学反応、遺伝子の働きで説明できる”と言い切っている。それに書中に教育学についてあれは学問ではないと断定してる。実に乾いた身も蓋もない話である。しかし、免疫の根本を解明した研究は文句なしの発見であり、そのことは利根川先生でなければ見つけられなかったかもしれないとも思う。事実を整理し新たな知見を得るためには、どんな常識であっても疑わなければ先はない。私のような散らかすことしか能がない者には処分する人が必要なのと同様である。そんなわけで、そして本は消えたが発生する。