ある本屋。かなり手広く本屋チェーン店を広げた会社がある。私が子どもの頃県内どこにでも店はあり県外にもあった。その店が市内に1店しかなくなり、店に行くと買取の岩波書店の文庫・新書・本を閉店した店から集められ古書で売っている。段ボールに無造作に置かれた本に驚き10冊くらい買った。もう出版社は、浅く軽いもの好きな読者に買ってくれそうな本を企画して食いつないでいくことを選択したようで、変な趣味だけどへぇーこういうのもありかという本を並べる店はもうない。ある意味、健全な売場になった。

 

…現在国営放送で日曜の夜、平安時代のドラマが放送されている。あれは、源氏物語を読んだことがあるものからすると「?」の連続で、平安時代を舞台設定した現代ドラマで秋山虔先生が見たら、何というのかなぁーと机の上にある三省堂詳説古語辞典が目に入り思う。段々と古典であれ予備知識はなくとも楽しめるものがテレビであるせいかスルリと制作されるようになったのだろう。せっかく秋山先生の「源氏物語 図典」小学館 1997を書棚から探し出して、どんな舞台や服、食べるもの他に工夫があるのか楽しみしていたが…。奥さんが言うにはーこの人は源氏物語など1ページも読んだことはないエッヘンの人であるー見て面白ければいいのよ!で話は終わる。ただ、源氏物語 図録は面白いらしく、日曜の昼ビスケットを作らされ美味しそうに食べながらみていた。

 

私は吉高由里子さんのことが好きなので、うすらぼんやりと「枕草子」の情事が書かれているシーンを吉高さんが演じたのを見たいと思った。それはこんなところだ。

 

 又、冬の夜いみじう寒さに、おもふ人とうづもれ伏して(恋人と同衾して)聞くに、鐘の音の、ただ、物の底なるやうに聞(きこ)ゆる、いとおかし。鳥のこゑも、はじめは羽のうちになくが、口をこめながら(口ごもって)なけば、いみじう物ふかく、とをき(遠くに聞こえる)が、明(あく)るままにちかくきこゆるも、おかし。「枕草子」渡辺校注 新日本古典文学大系25 p81 岩波書店1991

 

中古の文学は面白い。女の人が書いたものは漢文ばかり読んでいると、その柔らかさや視点の違いにええなぁーと心底思う。読んでも分からないから読まないのは食わず嫌いと一緒だろうけど、楽しめるまでは少々手間暇かけなくてはいけない。いいものは簡単に手に入らないことを知れば後悔はしないように思うのだが…。