- 中場 利一
- シックスポケッツ・チルドレン
さぬき市立志度図書館で借りてきました。
「シックスポケッツ・チルドレン」なんて言うから、てっきり今時の、「両親と両方の祖父母、6人分のポケットをあてにできるひとりっこが増えた、現代の子育てについての、社会学的な論文」か何かだと思って借りたのですが……。
全然違っていました。
「たけしくん、ハイ!」の流れをくんで出された「がばいばあちゃん」の流れに続いて出された、貧乏少年物語。
オヤジが酒飲みで喧嘩っ早くて、仕事をしない人で、貧乏なんだけれど、愛情だけはあふれていて、ちゃんとまっとうに育っていく少年の物語。
少年だけでなく、まわりの家の子も貧しく、学校の先生もセンセイのくせに教養のかけらもない。
特に少年の父親がひどい、ほとんど働かず、毎日飲んだくれて、気に入らないことがあるとすぐ切れて、相手をぼこぼこに、血まみれにするまで殴る。
こんな男は嫌いだ。自分は酒を飲んで遊んで、妻子に働かせ、とにかく喧嘩っ早い。気に入らないやつは片っ端から殴る。恐喝まがいのこともする。
こんな人間が身内にいたらたまらない。絶対、絶対、関わりたくない。
そんな少年の父親 ……… 一夫だが、読み進めていくうちに、だんだん憎めなくなる。時々拍手喝さいしたくなる。
子供のクラスで陰湿なイジメが起きていた。学校側は調べて、いじめをしている男の子に事情を聞いたが、いじめをしている方の親が、学校に怒鳴り込んでくる。何度も。執拗に。いじめられている方の親は何も言ってこないから、先生もだんだん見て見ぬフリをし始める。エスカレートする陰湿ないじめについて、一夫の息子・ヤンチらが話しているのを耳にした一夫は、いじめっ子の親と子を、闇に紛れて、まとめてぼこぼこに殴ってくる。「弱いもんいじめするな!」と。
また、ある教師が、子供の描いた山が紫色だったのを見て、「きみは色盲やな」と決めつけた。生徒はショックで、本当に赤緑色弱になった。早朝の山が紫に輝くさまを、自分が見たことないからと、平気で生徒を「色盲」と決めつけ、傷つける教師は、親が抗議をしても、馬鹿にしたような顔で笑うだけだ。反省なんてしない。
こんなひどい教師がいるのか、と地団太を踏む想いだが、こんな無知・無教養な、鈍感教師はたくさんいて、いたいけな子供の心は毎日傷つけられている。それをどうしようもないと諦めるのが現実社会だが、このお話の中では違う。
正義の味方(?)一夫が、この教師のもとに行き、またまたぼこぼこに殴る。無神経なことが二度と言えないように、徹底的に痛めつける。
本当は暴力に訴えるのは嫌いだ。
でも、口で言ってもわからないやつは世の中にたくさんいる。私には無理だし、現実社会においても無理だけれど、でも、二度と悪いことをしようなどと思わなくなるくらい、相手のことを「ぼっこぼこ」に殴りつけてくれる一夫のような存在が身近にひとりくらいいてもいいのに……。 と思う。
以前、福岡で、学校の先生に「偽善者」だとか「安いいちご」だとか言われて傷つけられて、いじめられて自殺した子供がいたが、もし、この子のまわりに一夫のような大人がいたら、死ななくても済んだんじゃないかと思う。
自分の子が、無神経な教師に傷つけられたり、いじめられたりしていたら、一夫なら、話を聞いたその足で、学校に怒鳴り込む。いじめた子どもたちは、二度といじめないように、痛めつけるだろう。
今の時代、端から見たら、とんでもない暴力親なんだろうけれど、でも、今の時代こそ、このくらいの気合をもって、子供を守っていかなければいけないものなのかもしれない。
むかーしの、人々のつきあいが濃厚で、うわさ話がはんぱなく行きかう、猟師町の、心温まる親子の物語なのでした。