時計の秒針がカチカチと部屋の中に淡々と響いている

暗闇に目を慣らそうとしても視界は何も変わらない




横になっているのに心と体が全然休まらない

今日のリハでの自分の動き。メンバーが笑顔の中で、自分だけ余裕がなく固かった瞬間

しかも今、寝室のドアの向こう。リビングのソファで由依さんが寝ている




相談聞いてほしかっただけなのに泊めてもらっちゃって、ベッドまで貸していただいて




色々考えすぎて訳が分からなくなってくる

あの場面を頭から消そうとしてもどんどん鮮明になっていく




その時部屋にノックの音が響いた




由「ひかる?」




ドア越しに聞こえたその声は少し低くて掠れていた




森「ゆいさん?」


由「起きてる?」


森「、、はい」




ドアがゆっくり開き、薄暗い部屋に由依さんのシルエットが浮かんだ

視線が合った瞬間、眉が少しだけ和らぐ




由「寝れない?」


森「はい、ちょっと眠れなくて」


由「そっか。寝れない日あるよね」




そう言ってベッドに腰を下ろしどこか遠くを見ている

多分これも由依さんなりの優しさだと思う




森「由依さんは?」


由「私は夜型だからさ」


森「そうなんですね」


由「寒くない?」


森「寒くはないです」


由「じゃあいいね」


森「えっ、ちょ」




布団がめくられ由依さんが中に入ってきた




由「大丈夫、寝相いいから」


森「いや、そういう問題じゃ、ない、と思います」

   「私、全然ソファで寝ますよ」




ベッドを出ようとしたら手を引っ張られ隣に寝転ぶ




由「いいから、こっち向いて?」




肩を軽く押され、視線が近づく

そのまま由依さんの腕が私の背中に回り、由依さんの胸に顔が押し付けられた

由依さんの体温と柔らかな香りに包まれる




由「こうしてたら落ち着く?」


森「…はい」


由「そっか、よかった」

   「ひかるはさ、自分の事好き?」




落ち着いた声で聞いてくる由依さん

由依さんの全てが温かくて、自然と口が開いていた




森「わからないです」


由「私もわからない」

   「でもね回りと違うからって自分を責めなくていいよ」

   「ひかるはひかるの良さがいっぱいあるし私も私の良さがいっぱいあると思う。グループで活動してるとやっぱ回りに合わせなきゃとか思っちゃうけど、そんな事考えなくていいよ」

    「意外とステージでは合うものだよ?だから無理しなくていいし、自分を責める必要もないよ」


森「…ありがとうございます」




気づけば目の水分量が増えていて今にも零れ落ちそうだった

由依さんの背中に手を回し抱きつく

由依さんは微笑んで頭を撫でてくれた




私はそのまま由依さんの心音を聴きながら少しずつ意識を手放していった





読んでいただいてありがとうございます

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