楽屋のドアを開けた瞬間、空気が変わった




……え?




最初に目に入ったのは、由依の横にぴたっとくっついて座るひかるの姿
小さな肩を寄せて、由依の腕に絡むようにして笑っていた




理「ひかる〜、ちょっと近すぎない?」

森「えー?だって由依さん、寂しいって言ってたからですよ?」

由「……ひかる、言わなくていいから……!」




顔を赤くして動揺している由依
でも、それより
私の胸の奥に、ズキッとしたものが走った




なに、これ……
無意識のうちに、私の手はスマホを握りしめていた




なんでそんな顔するの
なんで私に見せない顔をひかるちゃんには見せてるの
なんで、なんで、なんで、、、




私は自分の席に何気なく座ったけど、ずっと二人を横目で見ていた
ひかるちゃんが由依の髪をいじって、由依が「やめてってば」って照れながら笑って……




は?……何それ、私といる時、そんな笑い方しないじゃん。




無意識に奥歯を噛んでいた




私の方が先に好きになったのに
ずっと誰よりも近くにいたのに
今は由依の隣にいるのが、私じゃない
どうしてだろう
胸の奥が、ぎゅって痛い




私は何も言わず、立ち上がり楽屋を後にした









帰り道
一人で歩いていると、保乃からLINEが届いた




由依さんちょっと元気でましたよ☺️
ひぃちゃん、いい仕事してくれましたね〜
あ、理佐さんも頑張ってくださいね!!




……ん?
……え?
……は?
思わず立ち止まる




もしかして、わざと……?
保乃とひかるちゃんがグルになって?
いや、でも、付き合ってるしな
ほんとに……?




かまって欲しいなら、私に言えばいいのに……。









次の日
「おはよう〜」と入ってきた由依の手を、私は思わず掴んだ




由「ちょ、なに……?」

理「……今日、帰り時間ある?」

由「え?うん、あるけど」

理「付き合って。話したいことあるから」




そう言った瞬間、由依の表情が少し変わった
驚いたような、どこかほっとしたような、そんな顔




……やっぱりわざとだったんだ
あの笑顔、私だけのものにしたい









由依視線





カフェの席について数分
理佐は何も言わず、アイスコーヒーのストローをいじっている
静かなまま時間だけが過ぎていく




由「……理佐




私が呼ぶと、理佐は顔を上げた




理「ごめん、最近ちょっとメンバーと距離近すぎたかも」

由「……え?」

理「自覚無かったけど、色んな人に構って由依のこと置いてたんだって気づいた」
    「ひかるちゃんにくっついてるの見た時、正直、頭カッとなった。」




私は少しだけ笑った
こんな余裕ない理佐を今まで見たことがなかった
ちゃんと嫉妬してくれてて嬉しくなった




由「嫉妬、してくれてたんだ」

理「当たり前じゃん。あんな顔、私には見せたことないもん」

由「え、何の顔」

理「笑った時の、あれ。……キスされたみたいな顔」

由「は?!してないから!」




私は慌てて否定する
理佐はプイッと顔を逸らしたけど、耳が赤くなっている




理「私、もっと分かってるつもりだった」
    「強がるくせに寂しがりで、独りにしちゃいけない人だって。でも……ごめん」

由「……うん」




私は、少しの間だけ黙ってそれから勇気を出して言った




由「本当はさ、ずっと言いたかったんだ」
   「"私だけ見て"って。……でも、言えなかった」




勇気がなかった
言ったら重いって思われるかも。嫌われるかもって
理佐は優しいから全部受け入れてくれるって知ってるのに




少し俯き気味に理佐を見ると、私を真っ直ぐ見つめていた




理「言って。これからはなんでも言って。そしてなんでも聞くから、由依の願いなら死んでも叶える」
   「でも、私ばかだから、言葉にしてくれなきゃわかんない」

由「ありがとう。あと、理佐はばかじゃないよ」




私は笑って、そっと手を差し出した
理佐は黙ってその手を握ってくれた




理「……好きだよ。由依だけが好き」

由「うん」



涙が出そうになるのを必死に我慢しながら、静かに笑った









帰り道
二人で並んで歩く




由「ひかると腕組んでる時、理佐どんな顔してたの?」

理「……言わなきゃだめ?」

由「うん。言って。ニヤニヤしたいから




理佐はちょっと悔しそうに目を細めたあと、ぼそっと呟いた




理「……心臓バクバクして、殴りに行こうかと思った」

由「やば、こわ」

理「……由依を奪われたくないって思った」

由「うれしい、」

理「私、ずっと独占欲とかやきもちとかないと思ってたけど、由依にだけはあるんだなって気づいた」




その言葉が胸の奥まで響いた
私は立ち止まって、理佐の服の袖を掴んだ




由「ねえ、キスしていい?」

理「ここで?誰か通るかもしれないよ?」

由「いいから。したい」

理「……もう、しょうがないな」




私たちは、夜の街灯の下でそっとキスを交わした





読んでいただいてありがとうございます

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余談なんですけど、関西の人って自分の事を"自分"って呼ぶ人多いんですかね?

リクエストや質問などどんどんください