好みというのはまさに人それぞれで、おそらく私の好みに共感する人は少ないだろうと思う。昭和20年代前半に生まれた同輩にも難しかろう。ブレッド&バターという兄弟デュオが歌った<愛すべきボクたち>も、そんな曲のひとつではないかと考えている。私にとって、この曲はかなり上位に置かれるが、当の兄弟自体がさほど重きを置いていないふうに感じられて仕方ないのだ。この兄弟の最高傑作と私は崇めており、11月以外の時期では聴く気にならないデリケートなイメージ曲。曲中の「あまりに君は美しく、離れていると心配さ」とのフレイズが異様に心に残る。

 

 非常に限られた時期でしか聴きたくない曲の数の多さは我ながら呆れるけれども、この11月の〝メンバー〟の大半がその手なのだ。<アナスタシア>と<誓いのフーガ>は特にそのイメージが強固である。前者の歌詞の冒頭に「あなたは一体誰なのだ、あなたはこの世界のひとなのか」とあるのだが、〈フロム・アナザ・スタア〉との英語表現に心酔し、もし私が競走馬を持つようなことがあったらという夢の夢の夢で、牝馬に付ける名を〈フロムアナザスタア〉と、二十代の頃から決めていた。但し、別の星からやってきた馬、連戦連勝の宿命を担うことになる…。  

後者はバッハのフーガを基調にした楽曲である。「スリー・アンド・フォーティー・イヤーズ・アウェイ」。ここの訳し方が何とも難解だった。つまり43年後なのか、340年後と解釈するべきなのか。曲の原題は「トウェンティー・テン」、西暦2010年だ。これが発表されたのが1967年だから、2010年はちょうど43年後となる。けれどもレコードのジャケットに載っていた訳詩では340年後。断然こちらを支持する私である。顔見知りのシンガポール人によれば「340年後という解釈は難しい」そうだが…。