(三)
【遠すぎる浜辺】
※私の中で、「貝殻」とか「小舟の板切れ」とか「波打ち際」というのは冬の季語と言ってよい。準じて「浜辺」は冬を印象させるものであり、そこへ遠すぎる、と前置きすることで一層の寒々しさを表そうとしている。
<霧の中のロンリーシティ>(ジョン・レイトン)
<サレンダー>(エルヴィス・プレスリー)※原曲「帰れソレントへ」
<恋と涙の17歳>(レスリー・ゴーア)
<さらばベルリンの灯>(映画音楽、ジョン・バリー楽団)
<朝日のあたる家>(アニマルズ)
<ジェラルディン>(ブーツ・ウォーカー)
<アイ・アム・ア・ロック>(サイモンとガーファンクル)
<キリマンジャロ>(パスカル・ダネル)
<恋の片道切符>(ニール・セダカ)
<ボクサー>(サイモン&ガーファンクル)
<忘れじのグローリア>(ミッシェル・ポルナレフ)。
<霧の中の二人>(マッシュ・マッカーン)
<思い出のカテリーナ>(橋幸夫)
<襟裳岬>(島倉千代子)
<海を見るなら>(北原ミレイ)
<石狩挽歌>(北原ミレイ)
<雪の降る町を>(ダークダックス)
<知床旅情>(加藤登紀子)
<アラスカ魂>(ジョニー・ホートン)
<脆い午後>(中森明菜)
<君の瞳は10000ボルト>(堀内孝雄)
<哀しみのオーシャン>(葛城ユキ)※外国曲
ある情景や事柄を思い起こさずには聴くことができない楽曲というのがあって、おそらく誰の胸にもそれぞれ何かしらの旋律は息づいていることだろう。話が少し長くなる。
1968年1月4日(木)。俄かに思い立って午後から菱田、小山両君と箱根方面へドライヴに出た。車は小山君の友人に借りたもの。菱田君と私はこのわずか一週間前、つまり暮れの12月27日付けで普通自動車運転免許証を取得したばかりだった。小山君は残念ながら落ちて無免許。
箱根方面とは言っても芦ノ湖止まりだったが、まず三浦半島を廻ってから西へ向かうルートを取っている。素晴らしい天気に恵まれた日だった。その三浦で私たちは二つの富士山を見た。「富士山が二つあるゾ!」と3人とも驚きを隠せなかったが、どうやらそのひとつは〈三浦富士〉と呼ばれるものらしかった。ところが奇妙なことに、その後今日に至るまで一度もそれを見たことがない。まさに幻のような風景だった。このときカーラジオで流れていた曲が半永久的に私の胸に刻み込まれることになるのである。