ところで【無類十傑】だが、十傑ではなく十五傑に拡張して、あと5曲追加したい思いに駆られたことが幾度もある。その候補曲が以下だ。

<恋と涙の17歳>(レスリー・ゴーア)

<天使のらくがき>(ダニエル・ヴィダル)

<ラスト・ワルツ>(ミレイユ・マチュー)

<エリザベス一世と二世>(ニーナ&フレデリック)

<世界の果てに>(ピア・コロンボ)※<私を連れてって>のタイトルであるべき。

<幻のエリザベス>(ミッシェル・デルペッシュ)

<ワイト・イズ・ワイト>(ミッシェル・デルペッシュ)

<日陰の二人>(ケイト・ウインスレット出演、映画「ジュード」のテーマ音楽)

<夕陽の砂浜>(ジャンニ・モランディー)

 

上記のうちとりわけ<天使のらくがき>は十傑からはじき出すのが辛く、今なお諦め切れないものがある。携帯電話の着信音として、個人で音符を入れることができる機種が以前あって、耳だけを頼りに最初に作ったのがこの曲だった。フレンチポップスの最高傑作と呼びたい楽曲である。

 そのフレンチポップス。シャルル・アズナヴールもそのカテゴリーに加えるとすれば、<世界の果てに>はアズナヴール作曲なのだからフレンチポップスという理屈になる。私はしかしアズナヴールの歌ではなく、ピア・コロンボというジプシーの血を引いていると言われた女性歌手の歌唱のほうに惹かれた。

「重圧と倦怠のうちにドックで働いている。果実を満載した船が、見知らぬ国の強い香りを乗せて毎日のようにドックに入ってくる。船出するときはこれに一緒に乗って行きたい。常夏の国、浜辺で裸のまま暮らす人々。きょうまで北の空しか知らない自分を、そんな夢のような国へ連れて行ってほしい。生きる喜びを精一杯感じることができる世界で、過去と別れるんだ」。

アズナヴールの歌い方は、なるほど広大な未来が青年を待っているようにも取れるのだが、ピア・コロンボの場合は違う。結局世界のどこへ行っても報われまい、といった絶望的未来観が色濃く出ている気がするのである。私はこちらの歌唱にひどく心を奪われた。それとこの曲のタイトルは原題に則して〝私を連れてって〟とするべきだ。