アイプラ二次創作
原作崩壊注意
微グロ注意
-----どれだけこうしていただろう。
立ち込めるのは血の匂いか。
BIG4最後の1人。
長きに渡り頂点に立つ、アイドル界の頂点とも呼べる存在にようやく手が届いたのはほんの数時間前だろうか。
遥か前に思える。
いつからかサニーピースや月のテンペストの背中を追うようになっていたLizNoir。
だからといってそこで立ち止まることは無かった。
らしくない、と思うかもしれない。ただ泥水を啜ってでも、足掻き続ける事が私たちには必要だった。
そうして遂に辿り着いた、掴み取ったチャンス。
Last Chanceだった。
でも私たちは手にした、BIG4との直接対決を。
この数年間、彼女は頂点に経ってからただの一度も敗北しなかった。
紛れもない頂点。
たった一人で戦い続け、勝ち続け、それと同時に数多のアイドルに挫折を、絶望を味合わせ続けた「彼女」。
全てをぶつけた。
LizNoirとして、そして神崎莉央として、今までの人生で積み上げてきたものを全てぶつけて、そして勝った。
最後に舞台の上で微笑んでいたのは、私たちだった。
ここで勝つ事で、止まっていた針が前に進む。
それだけを信じて戦った。全てを出し尽くした。
だから気付かなかった。
彼女が、このアイドルの世界で。
何故勝ち続けていたのか。
そう。
彼女は既に人では無かった。
眼下に広がる光景。
とても現実とは思えない。
「この世の終わりだね。」
傍らの葵が呟く。
その言葉に肯定も否定もしない。
肯定しないのはそれを認めたくないから。
でも否定もしないのは同じ感想を抱いているからだ。
メンバーの中でも一番付き合いの長い相方だから、というだけではないだろう。
誰が見ても同じ感想を抱くはずだ。
BIG4を賭けた戦いに熱狂していた会場の空気は今はどこにもない。
今目の前にあるのは屍、そして屍だったもの。
ライブバトルが終わった時、正確にはバトルの結果が、私たちの勝利が発表された時、訪れたのは私たちの想像していたものとは真逆の反応だった。
静寂
もちろん、予想はしていなかった。
いくら相手がBIG4とはいえ、会場は決してアウェーでは無かった。
私達を応援してくれているファンも沢山居て、だからその勝利がもし多数に歓迎されていないとしても、それでもきっと、何かしらの大きな波が生まれると思っていた。
しかし、静寂。
始めは何が起きたか分からなかった。
今にして思えばそれは皆同じだったんだろう。
葵も、こころも、愛も、そして、会場に詰め掛けた満員のファンも。
そして解き放たれた。
「彼女」の内から「何か」が。
その何かが会場を席巻するのに時間は掛からなかった。
ステージが高くて助かった。もし舞台があと1m低ければ私たちもああなっていただろう。
「彼女」の姿はもうここには無い。
気付いた時には忽然と消えていた。それが彼女自身の意志なのかは分からない。
こころと愛もここには居ない。
本当に世話が掛かる。結局手綱を握る事は出来なかった。
だからこそ私たちには必要な存在なのだけれど。
マネージャーはさっきからどこかに連絡をしている。
この惨状がどれほど広がっているのか、閉ざされた会場に居る私たちには分からない。
ここだけで収まっているのか、世界中がこうなのか。
一つだけ分かるのは私たちが地獄に立っているという事だけ。
「…聞こえるか!」
マネージャーのスマートフォンから聞こえる声。
なんだか懐かしい気持ちすら覚える。
「三枝さん!」
マネージャーの声は必至だが、どこが安堵が混じっているように聞こえる。
無理もない、むしろよく持ち応えている方だ。
そう感じている私は、何故こんなに冷静でいられるのだろうか、と半ば自虐的に笑う。
「時間が無いから一度しか言わない。西側の駐車場にヘリを降ろす。どうにかしてそこまで辿り着け。恐らくチャンスは一度きりだ。」
遠くの電話越しの話なのに何故か鮮明に聞こえた。
マネージャーの今にも泣き出しそうな顔もこの後の人生で忘れる事は無いだろう。
もちろん、生きてここを出る事が出来れば、だけれど。
二言三言交わして通話は切れたようだ。
何が起こっているのかは分からないけれど、どうやら三枝さんも切羽詰まった状況に置かれているようだ。
ところで、そんな捨てられた犬みたいな顔でこっちを見ても私には何も出来ないわよ。
「話は聞こえてた。西側の駐車場に向かえばいいんだね。」
こういう時の葵はなんて頼もしいんだろう。
「会場を出て300mってとこかな、遠くは無いけど…なかなか骨が折れそうだ。」
でも分かってる。葵の事は世界中で誰よりも理解している自信がある。
今の葵は折れそうな心を保とうと必死だ。
それでいてマネージャー、そして私にそれを悟られまいとしている。
だからこそ私がやるべき事は一つしかない。
「行きましょう。せっかく最強の敵を倒したんだもの。こんなところで雑魚にかまけている時間は無いわ。」
私たちは、LizNoirだ。
響き渡るのはチェーンソーの甲高い音、そして声にすらならない断末魔。
ただ前に進む。
今切り飛ばした首に見覚えがある。
見慣れた顔だ。
私たちが駆け出しの頃から欠かさずライブに顔を出してくれていた、ファンだったもの。
見渡せばそんな顔が沢山ある。
後ろでククリナイフを振り回している葵も同じ事を感じているだろう。
いや、あの子の事だからそんなこと覚えていないのかもしれないけど。
私たちは舞台を飛び降りて会場の出口に向かっている。
バックヤードの方が手薄かと思ったけどあちらも既に惨禍は広がっていたし何より目的地と正反対だ。
「最短ルートで行こう。」
葵の言葉が頼もしかった。
会場を出さえすれば駐車場はすぐだ。
外に出れば袋小路とも言えるこの会場よりは多少マシだろう。何よりも今は日の光が恋しく感じる。外に出たらまずは思いっきり深呼吸をしよう。
ホールの重い扉を一気に蹴り開く。
目の前には長髪の「人だったもの」
10分前の私だったら躊躇していたのかもしれない。でももう色んなものを失った。
感じるより早くチェーンソーを振り下ろす。
刹那---------
巌ッッと
刃はその腕で留まる。
「ッッッッ!!!!」
後ずさるも0.0001秒
すぐに目の前の「バケモノ」の腸に、正に「必ず殺すため」刃を突き立てる。
そうして、
その腹筋で、
弾かれた刃に映る、
その相貌
その言葉は私の口から洩れたのか、葵か、マネージャーか、
あるいは全員だったのかもしれない
「愛」
目の前に立つ「バケモノ」は紛れもなく、「小美山愛」だ。
だったものと表現するべきなのか。私には分からない。
「どうやらこいつらは生前の性質を引き継ぐみたいだね。これは役に立ちそうなデータだ。」
本気なのか、強がりなのか。葵の本心を判断する余裕は今の私には無い。
ただ、生前という言葉はどこか寂しく聞こえた。
「どうする?避けて通るって手もあるけど。」
その言葉はきっと私の気持ちを理解っている。きっと葵も同じ気持ちだ。
愛はこんな事を望んでいない。
決して長い間一緒に居たわけではない。
でもその期間以上に濃密な時間を過ごした。
だからこそ分かる。
愛が今望んでいる事が。
「葵、力を貸してくれる?」
「わざわざ聞く必要ある?」
我ながら愚問だったな、と苦笑する。
いつだって背中を任せられる相棒が私には居る。
愛、本当に大切で本当に可愛い、私達の仲間。
だからこそ、せめて、苦しむ事なく------一撃で。
ステージの上で見せる研ぎ澄まされたパフォーマンス、それを彷彿とさせるような、神速神撃は大切な存在、欠かす事の出来ない、私たちの身体の一部を貫く。
ただ前に進むために。
「えっ
ずっと一緒に居る半身の、聞いた事もないような声。
眼前に広がる光景。
何故失念していたんだろう。
奴等は。
「生前の性質を引き継ぐ」
葵の体に凶刃を突き立てる、揺れるピンクの髪。