日本が勝ち残る「方法」 | ある女子大講師

日本が勝ち残る「方法」

日本が勝ち残る「方法」

1.国立社会保障・人口問題研究所が最新の将来推計人口を発表し話題になった。50年後の2070年には総人口が約8700万人、100年後の2120年には5000万人を割る。ただ、多くの人が「人口減少日本で何が起こるのか」を本当の意味では理解していない。そして、どう変わればいいのか、明確な答えを持っていない。ベストセラー『未来の年表 業界大変化』は、製造・金融・自動車・物流・医療などの各業界で起きることを可視化し、人口減少を克服するための方策を明確に示した1冊だ。参考記事は河合雅司『未来の年表 業界大変化』から抜粋・編集したもの。

 

2.人口減少で各業界に何が起きるか。『未来の年表 業界大変化』は、累計100万部の大ベストセラーとなった河合氏の代表作『未来の年表』シリーズの最新刊だ。  発売時には2度の「発売前重版」が決まり、10万部近いベストセラーとなっている。出版不況といわれる中で、何がヒットにつながっているのか。 そこで担当編集者に尋ねてみると「一言で説明するなら、『未来の年表』のビジネス版。『業界大変化』とタイトルにある通り、人口減少で製造・金融・自動車・物流・医療など各業界に起きることを克明に予測しています」との回答が返ってきた。

 

3.人口減少問題を解決するには、表紙には「30代が減って新築が売れなくなる」、「IT人材80万人不足で銀行トラブル続出」、「運転手不足で10億トン分の荷物が運べない」など、衝撃的な見出しがいくつも並んでいる。  河合氏といえば、人口問題の第一人者であり、未来に対する分析力の高さにはファンが多い。だが、佐藤氏は、注文が殺到した理由について別の要因を挙げた。  「『未来の年表 業界大変化』は、未来予測だけにとどまった本ではありません。むしろセールスポイントは、人口減少社会を乗り切るための対応策を丁寧に説明している点です。河合さんが先日テレビ番組でお話された内容が詳しく書かれており、ネット書店の説明文を読んだ方々の予約につながっているのかもしれません」  確かに、人口問題の実態を分析する書籍は増えてきているが、現実的な解決策にまで踏み込んだものはほとんど見かけない。  

 

4.河合氏が出演したテレビ番組とは、林修氏が司会を務める人気番組「日曜日の初耳学」のことである。番組内で河合氏は、人口減少は止まらないと断言する一方、「決して日本は間に合わないわけではない。発想さえ変えれば、勝ち残ることはできる」と人口減少対策に言及していた。  その具体策として説明したのが「戦略的に縮む」ことの必要性であった。ネット書店の『未来の年表 業界大変化』の紹介文にも、「『戦略的に縮む』という成長モデルの手順を深掘りし、『未来のトリセツ』として具体的に示す」と書かれている。  

 

5.今後の日本は実人数が減るだけでなく、高齢消費者が増えるため消費量も落ち込む「ダブルでのマーケットの縮小」に見舞われるという。  こうした状況を打開するため、番組内では「日本は比較的幅広い産業がある。この先、市場が縮むのであればゼロベースで見直して、捨てるものは捨てましょう。残すものは徹底して良くしましょう」と述べ、残す産業を決めてそこに集中的に資本や人材を投下することの重要性を訴えた。  

 

6.さらに、「(人口減少で)この先、生産量は確実に減っていく。その代わり、必要とするものを必要とする人のところに満足するよう提供し、それによって高く売れる状況を作っていく」とも語り、今後の日本が目指すべき道として、大量生産の品を安価で売って利益を上げる薄利多売をやめ、ヨーロッパの高級自動車ブランドのように品質の良いものを必要数作って利益率を上げていくビジネスモデルへの転換を促した。 マーケットも労働者も激減する日本においては、量をたくさん売らなければ利益が得られない薄利多売は人口減少社会では通用しなくなるということである。

 

7.「地方分散」は意外と危うい。そのための方策として、働く一人ひとりの意識改革とスキルアップも欠かせないともしている。  河合氏はこれまでの著書でコロナ禍においてテレワークが普及し、削減できる通勤時間をスキルアップに使うべきだと主張している。番組内でも時間の有効活用を例に挙げ、「通勤時間って実にムダですよね。都市圏が大きいところは、下手すると往復3時間。本当に"死んだ時間"です。これを開放するだけで色んなことができるんです」と述べている。  

 

8.同時に「地方分散」の危うさだ。商圏人口の重要性を説き、最低10万人の商圏を維持できれば、民間事業の撤退を防ぐことができるとして、「地方集住」を求めている。河合氏はベストセラーとなった著書『未来の年表』において、人が住む地域と住まない地域を明確に分けることを提言しており、これを念頭に置いたものとみられる。  佐藤氏は、「テレビ番組の場合、時間の制約があってどうしても断片的な説明にならざるを得ないですが、『未来の年表 業界大変化』では戦略的に縮むための手順をゼロから体系的に明らかにしています」という。  

 

9.日本の人口減少は年々深刻になってきており、ビジネスの現場だけでなく、われわれの日常生活においてもさまざまな影響が出始めている。『未来の年表 業界大変化』が異例のヒットとなっている背景には、人口減少問題への「答え」を求めている人が増えてきていることがあるようだ。

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