日本が貧しくなった理由 | ある女子大講師

日本が貧しくなった理由

日本が貧しくなった理由はなんですか?

1.まず、前提として、日本が経済発展を止めている間に他国が発展して、相対的に上級金持ち国から中級金持ち国に落ちただけです。貧しくなったと言うのは、盛りすぎです。仕事の関係で途上国によく行き、貧しい国の現実を見ているので、日本が貧しいなんて、冗談にしか聞こえません。では、中級金持ち国に落ちた理由は何でしょうか。それを語るには、それなりの理論的な枠組みを使おうと思います。仕事の関係で国の経済発展に必要な条件を調べたことがあり、いくつかの説の中で一番シンプルなものを紹介します。それは、国民の教育水準の高さ、インフラの整備状況、マクロ経済の安定度の3つです。

 

2.これに基づいて、1960年代初頭の日本を分析した論文を読みました。これによると、日本人の教育水準は高く、 政治の安定によりマクロ経済は安定している。なので、インフラが整備されれば、日本は経済発展するというものでした。実際、そのようになったので、この予測は正しかったと言えます。上記の理論を現代に当てはめれば、日本の教育水準は高いままで、インフラは悪化していません。 すると、マクロ経済政策が間違っていたと推論できます。具体的には、プライマリーバランスの黒字化を目指した緊縮財政です。

 

3.上のように書くと難しそうですが、実は簡単な論理です。損得を考えないで支出ができる政府が社会に対する投資を減らせば、日本国内の仕事が確実に減ります。そして、企業は儲かりそうなときにしか投資ができません。だから、政府が財政を引き締めれば、その分、企業も内部留保を溜め込むことになり、給料は上がらず、 消費が落ち込みます。

 

4.では、なぜ、こんな状態が作られたかと言えば、 おそらく、行き過ぎたバブル経済を止める手段として始まったのでしょう。そして、なぜ、30年も続けられたかといえば、そうすることが既得権益者にとって、都合が良いからです。給料が上がるインフレは景気が良いですが、同時に物価も上がります。すると、溜め込んだ現金資産は実際的に目減りします。それを防ぐためには、儲かりそうな事業を探して、投資をすることが必要ですが、それにはある程度のリスクが伴います。反対にデフレでは、物価が下がるので、ただ現金を持っているだけで、ノーリスクで実質的な資産価値が上がります。

 

5.以上をまとめると、緊縮財政に伴うデフレは物価が下がるので、一見、庶民に優しそうですが、そうではありません。金持ちが投資を控えるので、庶民にまわる仕事も給料も減ります。なので、庶民の味方のような顔をして、政府支出の無駄を叫ぶ人々に気を付けましょう。彼等は富を溜め込んだ金持ちの代弁者です。