技術の流れを読む | ある女子大講師

技術の流れを読む

技術の流れを読む

1.テクノロジーには10~15年ごとに大きな波がある。つまり、1980年代から90年代半ばはパーソナルコンピューター時代、90年代半ばから2000年代半ばまでがインターネット時代、2000年代半ばから20年までがスマートフォン時代、そして20年代からはAI時代と大別。それらの時代の前半でまずハード(半導体/ネットワーク/デバイス)が成長し、ハードの普及に伴ってソフト(OS/アプリケーション/サービス/コンテンツ)が発展する。このハードとソフトの組み合わせでその時代のデファクト・スタンダード、独占的なポジションが決まる――これがテクノロジー・ウェーブの概要だ。

 

2.パソコン時代にデファクト・スタンダードとなったのが、米国の半導体大手IntelとOSであるWindowsを擁するマイクロソフト。「Wintel」と言われるまでの強力なパートナーシップを誇っていた。20年9月に、エヌビディアとソフトバンクグループは、エヌビディアがソフトバンクグループからアームを買収することで合意した。それは、アームを傘下に収めたエヌビディアの大株主としてソフトバンクグループが君臨する構図だ。狙いは、AI時代におけるデファクト・スタンダード作りで、いわば、パソコン時代における「Wintel」の、AI時代版。しかし、複数の政府による反対で実現しなかった。ハード面の半導体を設計するアーム+半導体企業+ソフト面のAI企業といった連合を組む必要がある。この3つが互いに最適化することでAI時代のデファクト・スタンダードが決まる。

 

3.この3つが互いに最適化することでAI時代のデファクト・スタンダードが決まるのかは、消費電力という一大課題があるからだ。半導体とその上で動くOSなどのソフトウエアが互いに最適化されれば、その分消費電力を抑えることができる。 というのも、生成AIの性能を引き上げようと、世界中でデータセンター需要が急増。国際エネルギー機関は、データセンターでのAI学習強化により、26年の電力消費量が22年の2.3倍程度に増える予想。世界の電力供給能力には限りがある。折しも異常気象で冷暖房の需要が増え、脱炭素でEVにシフトすることも電力需要を押し上げる。つまり、世界中で電力不足が懸念されている。 消費電力を抑えられれば、スマートフォンなら、その分一度の充電で長く使えるようになり、データセンターでもそのコストの多くを占める電気代を下げることが可能。社会課題を解決し、ユーザーメリットを高めることは、デファクト・スタンダードとなるのに欠かせない。 そこで、次にソフトが打った手が、米オープンAIとの連携でした。 AI時代のデファクト・スタンダードの行方にますます目が離せない。