東野圭吾『魔女と過ごした七日間』(角川書店) | ある女子大講師

東野圭吾『魔女と過ごした七日間』(角川書店)

東野圭吾『魔女と過ごした七日間』(角川書店)

1.著者は、日本でもっとも人気あるミステリ作家の1人。作品は「ラプラスの魔女」シリーズの長編ミステリであり、『ラプラスの魔女』の続編。従って、シリーズ作品を時系列的に順に並べると、『魔女の胎動』、『ラプラスの魔女』、そして本作品『魔女と過ごした七日間』。本作は『ラプラスの魔女』から数年を経て、このシリーズを通じて時代設定は近未来。AIが広範に活用されていたりる。

 

2.主人公はシリーズに共通して羽原円華だが、この作品では中学3年生の月沢陸真ともいえる。そして、羽原円華の「ラプラスの魔所」としての特殊な能力については特に本作品では解説なしで始まる。すなわち、羽原円華が糸のないけん玉を操るのを月沢陸真が目撃したりする。羽原円華は独立行政法人数理学研究所で働いており、そこには特殊な能力を持ったエクスチェッドの解明を試みている。といったプロローグに続いてストーリーが本格的に始まる。

 

3.月沢陸真の母親は早くに亡くなっていて、その上、本書冒頭で父親の月沢克司が他殺死体となって多摩川で発見される。父親を亡くした月沢陸真を気づかい、中学校の友人の宮前純也が家に誘い、自動車修理工場を経営する宮前純也の親も優しく接してくれたりする。月沢陸真の父親の月沢克司は警備会社に勤務していたが、その前には見当たり捜査員として町中を流しては指名手配犯を見つけ出す、という刑事をしていた。その月沢克司が他殺死体となって発見されたのだから、当然、警察の捜査が始まる。

 

4.そして、羽原円華が「ラプラスの魔女」としてその特殊な能力を活かして闇カジノにルーレットのディーラーとして潜入したりする。まあ、ミステリなのであらすじはここまでとする。本書で大きな焦点を当てられているのがDNAを活用した警察の捜査、あるいは、DNAのデータベース。この作者の作品で『プラチナデータ』と同じ。小説そのものは10年以上も前の作品ですが、時代設定は本作品と同じ近未来となる。

 

5.ただ重複するというか、同じ登場人物はいない。最後に、DNAの活用に加えて、AIに対しても作者はかなり明確に否定的な態度を示している。例えば、AIによる顔認証や顔貌の識別よりも人間のプロである見当たり捜査員の優秀生を持ち上げたりしている。そのあたりは読者によっては好みが分かれる。