リーマンショック以上の危機 | ある女子大講師

リーマンショック以上の危機

リーマンショック以上の危機

1.中国メディアがノンバンク系金融機関の経営不振を伝えなかったことと、日経が専ら恒大集団や碧桂園という不動産会社の経営危機のみを報じたことを合わせ鏡のように取り上げた。双方に共通するのは中国が直面する恐ろしいまでの危機に対して故意に目をつぶっていることだ。日経の報道については「不動産バブル崩壊の皮相をなぞらえているのに過ぎない」と手厳しい。

 

2.バブル崩壊は金融に波及したときに初めて経済危機に発展する。不動産開発業者の負債が膨らんだだけで中国経済が根底から揺らぐことはない。習政権もそれくらいは分かっているから、不動産会社2社の債務支払いに猶予を与えた。そして2社は、その後しばらく何事もなかったかのように業務を続けた。しかしそんな騙しは金融には通用しない。銀行であれノンバンクであれ、債務超過に陥れば信用を失い経営破綻する。1社の破綻は直ちに他社に連鎖し、中国全体が金融危機に陥る。リーマンショック以上の危機が中国で起きかねない。

 

3.前述したように中植企業集団を筆頭に中国のノンバンク系の資産総額は2700兆円で、中国のGDP2886兆円に並ぶ規模だが、その多くが巨額の損失を抱える。中植企業集団などの経営破綻は間違いなく中国全土を揺るがす。バイデン大統領が23年8月10日に、中国経済は「チクタクと時が刻まれている時限爆弾」と語ったのはそういう恐ろしい意味なのだ。

 

4.習主席はこの状況にどう対処するのか。これまで習氏がやってきた唯一のことは徹底した情報隠しだ。報道禁止は無論のこと、中植企業集団や中融国際信託の、主要都市におけるオフィスには投資家、主婦、中小企業経営者らが詰めかけたが、各地の公安警察部隊が直ちに排除する。公安は全国で15万人に上る投資家の個人情報を駆使して、深夜早朝を問わず、投資家宅に押し入って黙らせた。

 

5.習はこの10年間、同じ手法で不動産市況の急落と金融危機の発生を阻止してきた。だが今回ばかりはその手は通用しないだろう。住宅の供給過剰とデフレ圧力の下、不動産相場に再浮揚の気配がないからだ。平成の時代、橋本龍太郎、大蔵省、日銀の失政でわが国ではバブルが崩壊し、長く苦しいデフレの時代に入った。日本の失敗を反面教師とした米国のバーナンキFRB議長は前代未聞の大規模な量的緩和でデフレを回避した。