在原業平と小野小町のやりとりから見る<平安時代の恋愛ルール | ある女子大講師

在原業平と小野小町のやりとりから見る<平安時代の恋愛ルール

在原業平と小野小町のやりとりから見る<平安時代の恋愛ルール

1.平安時代の恋愛ルール すでに男女を巡るやり取りがちらほらと展開、過激な演出も加わり、お茶の間をザワつかせている『光る君へ』ですが、メインキャラクターである紫式部と藤原道長が大人になっていくこれから、その周囲も含めて、より恋愛模様がしっかりと描かれていくことになる。 その意味でカギとなるのが「和歌」の存在。 この時代の恋愛の実際は和歌のやりとり。 「すてきな女性がいるらしいぞ」という評判を聞きつけたら、まめな男はとりあえず和歌を送る。

 

2.和歌を通じて女性の心を動かす その和歌を見て、まあなんて才能にあふれた方、とか、センスのある方ですこと、と女性の心が動けばしめたもの。 女性から素敵な返事の和歌が送られてきて、恋愛成就。あとは男が女性のもとに忍んで行くだけ。それが手順です。 「光る君へ」の第二話では紫式部が和歌の代筆や代返を仕事にしていましたが、和歌を通じて恋愛がうまくいった、うまくいかなかった、といったやりとりがちゃんと描かれていました。 因みに忍んで会いにいって何をするか…。それを聞くのはヤボってもの。

 

3.絶世の美男・在原業平と美女・小野小町のやりとり 一方、平安時代を代表する絶世の美男と美女と言えば、在原業平と小野小町。 ふたりの間に恋の花が咲かぬはずがなく、業平は「秋の野に笹分けし朝の袖よりもあはでこし夜ぞひちまさりける」(あなたに逢わずに帰って来た夜の方が、いっそう涙で濡れたのでしたよ)との歌を贈った。 すると小町は「みるめなきわが身を浦と知らねばやかれなで海士の足たゆく来る」(いくら言い寄られても、逢うつもりのない私だと知らないで、あの人は足がだるくなるまで通って来るのか)と返した。 つまり業平の求愛を,小町はあっさりと拒絶したんですね。

4.ステキな大人の恋 とまあ、これは『伊勢物語』25段に見える、有名な逸話です。 ただ、史実かというと、そうではないらしい。 わが国で最も古い勅撰和歌集(天皇の命で作られた和歌集)である『古今和歌集』に、この二つの歌は隣同士に配置されているんです(「巻第13・恋歌三」)。 そこに着想を得た『伊勢物語』の作者(具体的に誰であるか、いまだ定説はない)が恋の駆け引きの話に仕立てたといわれています。 でも、こんな風に断固として、かつ優雅にふられるなら、男冥利に尽きるというもの。とてもステキな大人の恋ではありませんか。 ※本稿は、『応天の門』(新潮社)に掲載されたコラムの一部を再編集

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