藤井由紀子教授が語る「源氏物語」&大河ドラマ「光る君へ」の魅力 | ある女子大講師

藤井由紀子教授が語る「源氏物語」&大河ドラマ「光る君へ」の魅力

藤井由紀子教授が語る「源氏物語」&大河ドラマ「光る君へ」の魅力

1.清泉女子大学文学部・藤井由紀子教授の講義と原文で読み解く「源氏物語」をベースとして、テレビ向きに分かりやすくアレンジ。初回は光源氏が初めて愛した藤壺の宮に焦点を当て、ゲストの峯岸みなみさん、松田ゆう姫さん、おぎやはぎ・矢作兼さんと学生とともに学んでいく。その際、物語を分かりやすく教えてくれるのが、講談師の神田蘭さん。心地よいテンポで光源氏と藤壺の宮のエピソードが語られるので、物語にグイグイ引き込まれ、続きが気になること間違いなし。また、藤井教授による、時代背景や藤壺の宮の人物像、光源氏との関係などの解説。

 

2.紫式部の人物像と「源氏物語」の魅力 ――史実の紫式部は、どういうことが伝わっているのか。 「紫式部は生まれた年も亡くなった年もはっきりしていない。お父さんが藤原為時で中流貴族の娘として生まれ、一条天皇の中宮である彰子の元に出仕していが、細かいことは全く分からない。当時の女性は、中宮レベルにならないと歴史的な事実として記録に残らないので、『紫式部日記』や『紫式部集』という歌集の言葉書きから読み取り、伝記を推測するしかない。だから、『源氏物語』もいつから書き始められたのか、いつ頃、今と同じような形になったのかは謎」。

 

3.――紫式部はどんな人柄や性格だったと思われますか? 「『紫式部日記』を読む限りは、どんな華やかな行事を描いていても、必ず最後に『そこになじめない私って…』と内省的なところに落ちていくので根暗なんですけど、それが彼女の本心だったのか、本当の性格だったのかはよく分からない。紫式部が仕えていた彰子がすごくおとなしい人で、『人が何かを言うと過ちが起こるから、それなら言わない方がいい』というくらい引っ込み思案。だから、女主人に合わせて紫式部は控えめにはしているが、彰子と同じく一条天皇に寵愛されていた定子と比較されて、彰子が劣っていると思われることに対して、非常に忸怩たる思いもつづっている。本当におとなしいだけの人なら『源氏物語』は書けないし、本当に控えめな人なら『私は一という漢字も書けないふりをしている』と書かない(笑)。書いたら残ることが分かっていて書いているわけだから、相当気は強い人だと思います」。

 

4.――紫式部は書くことが好きだったのでしょうか。『紫式部日記』で、夫の宣孝が亡くなった時に心を慰めてくれたのは物語だったと言っている。共感し合える仲間たちと物語のことを話して、ちょっと遠い人でも『あの人、物語が好きらしいよ』と聞いたら、つてをたどって手紙を送って、情報交換をしていた。宮仕えをしてからは、そういう人たちとの交流が絶えてしまったが、『宮仕えをした私のことを向こうもばかにしているかもしれないから、恥ずかしい』というようなことを書いている。それは物語オタクが皆で同人サークルをやっていたのに、自分1人がプロになり、疎遠になってしまった感じに近いのかなと思える。昔から日本文化を動かしてるのはオタクなんだ(笑)」。

 

5.――先生は「『源氏物語』は源氏を主人公にした、平安時代当時のパラレルワールドみたいな存在だ」といわれているそうですね。 「『源氏物語』の中には、ひと昔前、平安時代前期に実在した在原行平や紀貫之という名前が出てくる。例えば、紀貫之や女流歌人・伊勢が詠んだ歌が描かれた屏風を登場人物の帝が見ているとか、在原行平が須磨に行った時に住んでいた家のすぐ近くに光源氏も住んでいたという書き方をしている。つまり、ひと昔前の歴史と連結する時間軸で『源氏物語』は書かれていて、実際に紫式部が生きていた時代とパラレルな、もう一つの歴史を書こうとしている。そこが面白いところです」

――主役は光源氏ではないといわれているとも伺いました。 「光源氏はもちろん面白いんですけども、狂言回し的な役割を背負っている人物だと思っています。彼を中心に話は進んでいくが、魅力があるのは彼を取り巻く女性たち。女性の書いた作品であるが故だと思うが、一人一人ものすごく個性的に書き分けがなされていて、それぞれの人生に平安時代を生きる女性たちの苦しみや悲しみが込められている。女性の生き方に選択肢がない時代に、どういうふうに生きていくのか、いろんなケースとして書き分けられているのが何より面白い」以下、

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