道長の父・兼家、権勢欲丸出し | ある女子大講師

道長の父・兼家、権勢欲丸出し

道長の父・兼家、権勢欲丸出し

1.大河ドラマ「光る君へ」の序盤、ドラマを大きく動かすのが藤原道長(柄本佑)の父、藤原兼家(段田安則)だ。大納言である兼家の年収は今でいえば、1億円ほどだが、「上を目指すことは、わが一族の宿命」と公言する兼家は、それで満足する男ではない。そのためには天皇家と近くなることが不可欠。第1話では、兼家の娘の詮子(吉田羊)の円融天皇への入内が決まり、長男の道隆(井浦新)一家をはじめ、一族が集まって豪華な食事会が開かれた。その秋、詮子は入内したが、その当夜、安倍晴明(ユースケ・サンタマリア)の館が落雷で炎上、詮子の入内が不吉だと噂が広まる。

 

2.それでも兼家は「慶事の折の雨風は吉兆」と噂を流せばよいとあくまで強気だ。やがて詮子は、天皇の唯一の皇子である懐仁(やすひと)親王を出産。しかし、帝の寵愛は関白・藤原頼忠の娘、遵子に移る。詮子を差し置いて、遵子が皇后と同等の地位である中宮とされ、円融天皇が自分の力が増すことを警戒しているのだと悟った兼家は、次男の道兼(玉置玲央)を使って、天皇の食事に薬をもる。

 

3.権勢欲丸出しのすごい父だが、直接武力を使わないため、親分とかゴッドファーザーとは印象が違う。だが陰謀はまだまだ続く。史実では「寛和の変」と呼ばれる花山天皇の突然の出家と譲位による政変も、兼家が自分の外孫の懐仁親王を天皇にするため画策したとも言われる。なお兼家の妾のひとりである藤原道綱の母(ドラマでは藤原寧子=財前直見)は「蜻蛉日記」の作者で、日記の中では他の女に子供ができて嫉妬したり、いさかいをしたりと兼家との日々が赤裸々に書かれている。

 

4.権力に固執しつつ、私生活では妾にむっとされている兼家。想像すると面白い。演じる段田安則はシリアスからコメディーまで幅広く演じる俳優で、大石静作品では、朝ドラ「ふたりっ子」「オードリー」でどこかとぼけた味の父親を好演しているだけに、どんな兼家になるのか楽しみだ。そして兼家が、のちに頂点に立つ道長にどう影響を与えるのか。藤原家がヒロインまひろ(のちの紫式部=吉高由里子)の運命を変えるだけに、兼家率いる藤原家の動きに注目だ。