戦略物質のルート確保 | ある女子大講師

戦略物質のルート確保

戦略物質のルート確保

1.米英軍がイエメンを爆撃し、フーシ派が反撃として紅海近海のタンカーを攻撃する。最重要な「戦略物資」であるエネルギーのロジスティックが揺らぎ続けている。少なくとも、原油等の戦略物資が「安定的」「確実」に日本に入る時代は、もう終わったようだ。1月15日、イエメンの港湾都市アデンから南東に95カイリの沖合を航行中の船舶(マーシャル諸島船籍の米国のばら積み貨物船)に、ミサイルが命中。テロリストが陸上から「ミサイル」を撃ってくる時代だ。フーシ派と呼ばれてはいても事実上の「イエメン政府」。なぜ「フーシ派」と呼ばれているのかといえば、単に国際的に承認されていないためだ。

 

2.実質的に米英軍は「イエメン政府」の主権下にある地域を爆撃しているわけで、これは普通に戦争行為。戦争行為として認識されないためにも、「フーシ派」と呼称している。 イエメンの親イラン武装組織フーシ派の報道官は、攻撃対象を米国の船舶にまで拡大すると述べた。標的とする船舶は必ずしもイスラエルに向かう船舶である必要はない。米国の船舶であれば十分だと指摘。米国は海洋安全保障を失う瀬戸際にあるとした。米英が先週イエメンで実施した攻撃により、米英の船舶が「正当な標的」になったとした。

 

3.日本の原油に関する中東依存度は92.5%(2021年度)。騒乱がホルムズ海峡近辺に拡大すると、我が国は「エネルギー危機」に陥ることになる。日本には官民合わせて原油の備蓄が220日分ありますが。露・ウ戦争勃発以降、日本は対ロ経済制裁に参加することで「ダメージ」を受けた。日本のダメージは、EUと比べると軽かった。天然ガスについては調達先の多様化が進んでいたためだ。それに対し、欧州諸国のガス・原油・石炭のロシア依存度は高かった。天然ガス(LNG)については、事前の多様化が功を奏し、ダメージを緩和した。それに対し、原油は調達先の多様化が必要で、具体的には、アメリカなどからの調達を増やす必要がある。

 

4.アメリカの産油地帯はロッキー山脈の東側に偏っており、日本が米国産原油を調達するとなると、カリブ海でタンカーに積み込み、パナマ運河から太平洋に出る必要がある。そのパナマ運河が、旱魃で通行が困難になっている。ホルムズ海峡や、パナマ運河、スエズ運河は、まさに「チョークポイント」。ホルムズ海峡の危機に対応しようとしたところ、さらなるチョークポイント(パナマ運河)の問題が顕在化してしまう。日本のエネルギー安全保障の強化、具体的には原油調達先の多様化を推進しなければならない。