国力を高める決意 | ある女子大講師

国力を高める決意

国力を高める決意

1.政界有数の保守政治家である高市早苗経済安全保障担当相が、夕刊フジ新春特別号のインタビューに応じた。2023年は、覇権主義を強め、理不尽な挑発を繰り返す中国に対し、国内外で毅然とした姿勢を示して支持を集めた。日本の「技術」という強みをアピールし、世界の「投資」を呼び込むチャレンジだったとも振り返った。わが国が難局に直面するなか、「日本有事」に備えた安全保障の強化、さらには経済活性化により、「国力」を高める決意を語った。

 

2.23年はどんな年だったか。「とにかく目まぐるしい日々だった。政策の構想を練って、具体化することに全力を尽くした。経済安全保障上の機微な情報の取り扱い資格を認定する『セキュリティー・クリアランス(SC)』も正念場だ。早期の法制度化に向けて、年末年始も取り組みを加速していく」――中国による福島第1原発処理水への非科学的な批判や、沖縄県・尖閣諸島近くの日本の排他的経済水域(EEZ)内に、中国が無断で「海上ブイ」を設置した問題で、国内外で決然と発信して注目された。

 

3.「中国、ロシア、北朝鮮という核兵器を保有する国と地域に三方を囲まれ、『世界有数の核兵器の最前線』に国土を構えているという現実から目を背けてはならない。今年は、中国、ロシア、北朝鮮の接近も顕著だった。外交や国防は、国民の理解や世論の後押しなしに進展しない。状況の深刻さを、ぜひ、多くの皆さまに理解していただきたい。こうした脅威から日本国民を守るため『国家安全保障戦略』も決定された。具体的な取り組みが重要になる」

 

4.さまざまな分野で危機が拡大している。「各国は、宇宙空間でも活発に活動している。日本も情報収集衛星を運用しているが、これが破壊されたり、捕獲されたりしたら深刻な事態だ。一方、日本の衛星の能力は優秀だ。そこで得た情報をどう活用するか。リスクの兆候をキャッチしたとき、どう対応するのか」。

5.「国家の危機における最終的な判断、指示は最高司令官の総理が行う。同時に、防衛相などといかに早く情報共有し、指示するのか。極限まで切迫した状況では、現場の自衛隊幹部が判断し、対処を迫られる可能性もある。さまざまな事態を綿密に想定し、幾度もトレーニングする必要があるのではないか。日米韓、台湾との協力関係も重要となってくるだろう」

6.わが国への攻撃も多様化している。「迎撃困難とされるHGV(滑空型ハイパーソニック兵器)が関心を集めているが、ミサイルと大量の無人機(ドローン)による飽和攻撃の脅威も指摘されている。迎撃や国民保護など、複数の省庁が一体になって対応策を練ることが必要だ。こうした連携は、さまざまな安保上の脅威に共通した課題だ。さらに『サイバー攻撃』や『認知戦』の脅威もある。偽情報の拡散阻止、国民に正確な情報を迅速に発信する体制構築など、備えるべきことは多い。閣僚は所管事項以外への発言は控えるべきだが、政府内の会議では、サイバーセキュリティ対策に必要な法整備について主張を続けてきた」

6.経済安保相に加え、知的財産戦略、科学技術政策、宇宙政策など幅広い担当がある。「23年は、担当分野でいくつかの『一里塚』を築けたことが成果だと思う。4月には、新エネルギーとして注目される『核融合』に関する日本初の国家戦略となる『フュージョンエネルギー・イノベーション戦略』を策定した。核融合は、豊富なエネルギーの確保、安全性、環境保全などさまざまな長所がある。日本企業は核融合技術で先んじているが、一歩進んで、国際市場の『勝ち筋』をつかまねばならない。その具体的な道筋を示したのが、今回の国家戦略だ。戦略の焦点は『イノベーション』、価値の創造だ。日本企業の技術という強みを、スピーディーに世の中に送り出し、富を呼び込みたい」。

7.――核融合の可能性は、21年の自民党総裁選でも強調していた

「米国や英国や中国など世界各国が強い関心を示している。核融合発電そのものは長期的目標だ。一方で関連技術は製品化により、数年で利益を生む。例えば、核融合炉では、巨大な力を閉じ込めるために磁場をつくる。リニアモーターカーに代表される日本の超電導技術は、医療用MRI(磁気共鳴断層撮影装置)の高度化にも活用できる。超電導コイル技術は、海洋調査船や宇宙船の外壁に使える。リチウム分離技術も、リチウムのリサイクルに活用できる。核融合関連で優れた技術を持つ日本企業には、国内外から関心が集まっている」

――国力の強化につながる

「核融合では、出力方法の研究も急がれている。今年は『レーザー核融合』が注目されたが、レーザー技術はがん治療や製造業にも活用できる。さらに、攻撃型ドローンへの反撃や宇宙デブリ(ごみ)の処理、落雷位置のコントロールなど、国防や防災にも活かせる可能性がある」「『フュージョンエネルギー・イノベーション戦略』には、すでに国内外から強い関心が寄せられている。4月に戦略を発表して以降、核融合関連スタートアップの資金調達は好調だ。説得力のある魅力的な技術には、税金を投入する以前に『投資対象』として資金が集まる。技術への国際社会の感覚は鋭い。国が方向性を明確に示せば、開発は加速度的に進む」

8.――ビジネスの可能性も広がる

「23年6月には、日本初の『宇宙安全保障構想』も取りまとめた。次は、24年3月までに、『宇宙技術戦略』を策定する。日本が開発に取り組むべき技術を戦略的に見極め、開発に向けたタイムラインを示す。民間の予見可能性を高めることにもなる。日本は、高精度の衛星測位、天候の影響を受けない合成開口レーダー『SAR衛星』、宇宙デブリ除去などの技術で、世界トップレベルを誇る」

「わが国に富を呼び込む分野を切り出し、国としての支援を力強く進めたい。民力が高まれば、自然と国力も高まる。実は、担当分野には認知症の治療薬開発に関わるものもある。〝種〟を見つけたら決して逃さない。地味な取り組みだが、一生懸命やっていきたい」

――自民党にとって深刻な問題もある。政治資金パーティー収入不記載事件によって、国民の派閥や「政治とカネ」に対する視線は厳しい

「政治活動の自由の観点から、『政治資金規正法』を改正する場合には各党各会派が議論して議員立法で対応するのが通例だ。閣僚の立場で、改正内容に関する発言はできない。まずは、現行法を順守することが大事だ。当事者は問題点を理解しているはずだ。岸田総理は、党総裁の立場で指示を出された。問題点を整理して、再発防止策を講じるのだと思う」

9.――国難ともされる局面で「保守の真価」が問われる。安倍晋三元首相なき今、高市氏に期待する声も多い。

「閣僚の一員として、与えられた役割に全力で取り組む。もし、必要とされるときが来たら、国家経営の全体にも携わりたいと思っている。今、一生懸命やっているのは、『技術で勝ち、ビジネスでも勝つ』ということだ。富を日本に呼び込めば、税率を上げずとも税収は増える。幅広い世代が安心感を持てる状況をつくりたい」

10.――「負のスパイラル」をいかに断ち切るのか

「内閣は全力で子育て世代を応援しようとしており、これは重要な取り組みだ。一方、懸命に働いてこられた年金世代が不幸に見えたら、若い世代も将来に不安を感じてお金を使わなくなる。経済が収縮してしまう。稼いで、経済のパイを大きくする。その『ポテンシャル』が、日本にはある。国が未来を拓く大胆な構想を示し、必要な投資を行い、税収を増やす。シニア世代になっても、生活に困らず、安心して健康に暮らせる姿を『成果』として示さないと、若い世代が本当に絶望してしまう。全世代の安心感を創るためには、資金が必要。そのために、国が成長に資する投資をすべき時だ」

11.――主宰する自民党内の勉強会「『日本のチカラ』研究会」が注目されている

「日本のチカラ研究会は、なかなか優れモノだと思っている。テーマは『国力』。それを構成する要素を1つずつ、深く学んでいる。非公開にすることで、忌憚のない講話をいただき、質疑応答をしている。まずは『情報力』を学んだ。年明けから『外交力』『国防力』『経済力』『技術力』を学んでいく。話を聞きたいスペシャリストはたくさんいる。日本の政策を次のステージに高める勉強を、メンバーの皆さんと一緒にやっていきたい」

――23年は、38年ぶりに阪神タイガースが日本一となった。熱心な「虎党」として、X(旧ツイッター)に歓喜の書き込みもあった。「38年前は観戦の機会がなかったが、今回はテレビで観戦し、元気と勇気をもらった。でも、周囲はG党が多数派で話題にもならん! 超少数の虎党と静かに『アレ』を祝った」

12.時代は江戸幕末以来の西欧・米(狩猟遊牧民・ユダヤ、キリスト、ムスリム)の富国強兵文化から日本(農耕民)の多種多様・多用の「和」文化の時代へと変わりつつある。彼らに彼らと同様に対抗するのもいいが、この文化の違いと変わりつつある時代を考えねばならない。一つ、大谷翔平の投手も、打者もという二刀流は日本文化に因る。米国の文化は投手か、打者かの二者択一文化。大谷翔平の二刀流は「投手も、打者も」から 2024 には「個人タイトルも、ワールドチャンピオンも」と二幕目が開く。日本食、日本教育など日本文化が世界へと展開していくのが次世代。そこでは日本文化が標準となる。それでも米欧では、中国がというか。

13.資源開発をもっと積極的に行わないとだめだよ。

日本の海底には油田や多くの鉱物が眠っている。それを取り出せれば外国に頼る事が少なくなって経済活動が可能になる。日本が抱く資源国への道だよ。

多くの資源を採取できればシーレーン防衛の重要性も低くなるだろうし、海外からの圧力も減少する。