日鐵、USSを買収 | ある女子大講師

日鐵、USSを買収

日鐵、USSを買収

1.日本製鉄、2兆円で米社買収 鉄鋼の世界再編が加速。日鉄は18日、米鉄鋼大手USスチールを約141億ドル(約2兆円)で買収すると発表しました。米国3位の名門企業の買収で、日本製鉄グループの粗鋼生産量は世界3位に浮上する見込みです。本日は、同社の世界戦略に関連する記事をまとめました。

 

2.国内需要の縮小を受け、日本製鉄は海外の成長市場への進出を加速してきました(「日本製鉄、成長は海外M&Aで実現する」)。インドでは世界2位の欧州アルセロール・ミタルとの合弁会社を通じ製鉄ラインの新設に7300億円を投じる計画です。タイでは子会社から自動車メーカーなど向けに供給してきた高級鋼に加え、昨年買収した現地企業2社を通じて汎用鋼市場にも進出しました(「日本製鉄のグローバルな適“鋼”適所 海外生産が日本を上回る日」)。

 

3.いずれも、需要地に一貫生産拠点を構えて需要拡大を取り込む同社の「インサイダー戦略」に沿ったもので、その背景には「市場の分断、地産地消、保護主義が進む」(橋本英二社長)との読みがありました。一方、世界の粗鋼生産量の5割超を占める中国でも、製鉄企業の再編圧力が高まっています。企業が乱立し供給過剰なのに加え、需要をけん引してきた建材市場の低迷で市況が悪化しているためです。中国政府の産業政策次第ですが、世界1位の中国宝武鋼鉄集団(上海市)に続く、世界シェア上位の大企業が今後誕生する可能性もあるでしょう。

 

4.世界的再編の波は国内2位、3位のJFEホールディングス、神戸製鋼所の鉄鋼部門の統合にも及ぶのではないか、という見方もあります(「JFE・神戸製鋼の鉄鋼再編に現実味 化学は「脱・石油化学」へ」)。再編を繰り返してきた鉄鋼業界ですが、その流れは止まらないようです。

 

5.過去最大の最終赤字を計上してから約5年。厳しいリストラや激しい価格交渉、グローバル戦略の進化で生まれ変わった日本製鉄。重厚長大企業が見せた劇的な変化を丹念に追いかけた日経ビジネスの新刊『日本製鉄の転生 巨艦はいかに甦ったか』を2024年1月に発売。

6.日本製鉄が大勝負に打って出た。18日、米鉄鋼大手USスチールを約141億ドル(約2兆円)で買収すると発表した。米国は成長市場で経済安全保障にもかなうとあって、お互いに願ったりかなったりの買収とも見える。だが、USスチールは収益が安定しないという弱さを抱える半面、労働組合は無類の強さで知られる。日鉄の橋本英二社長がリスクを百も承知で巨額買収に動いた狙いは、電炉などの脱炭素技術だ。